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食べ物からうんちまで――。「食べ物と人」をテーマに描くイラストユニット。夢眠ねむさんが、はらぺこめがねさんと対談。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・2】

  • 2025.5.7

「これからの本好きを育てる書店」を営む夢眠ねむさんが、憧れの絵本作家さんを訪ねる連載第2回。
今回はkodomoe付録絵本の『おにぎり ばく!』が単行本化されたばかりの、はらぺこめがねさんが登場です。
長年のお付き合いという3人ならではのにぎやかなトークを、本誌に続けてweb版で特別に公開します。

◆「おいしそう」と思えれば、なんでも描ける

――はらぺこめがねさんと言えば数々のおいしそうな絵本を描かれていますが、食べ物を描くときのこだわりはありますか?

原田しんや(以下原田) まあ、実物を見て描く。料理やったら、写真を撮って描く。
自分で作るか食べに行ってモデルを探すかは、絶対やるかな。

関かおり(以下関) 最初は「目の前に置かないと描かない」みたいに、ちょっとこだわってたりしたけど。
お料理を描くようになってからは、置いておくとどんどんカピカピになっていくから、すぐ割り切って写真にして。

夢眠ねむ(以下夢眠) 食べ物に失礼だもんね。

そう。おいしく食べたいやんな(笑)。

夢眠 おいしくないものは描いてないもんね。

原田 うん。自分で食べたものを描いてるかな、基本。
でも俺、たとえばスイカは、あんま好きちゃうねん。
でもなんか、スイカというものにすごく魅力は感じてて。

憧れがある。

原田 そう。なんかおいしそうやん、スイカって。単純に見た目が。
だから自分はあんま好きじゃなくても、おいしそうに描ける。憧れがあるから。

自分でなく、誰かがおいしく食べているってものでも、いいってことだね。

原田 うんうん、別にいける。「おいしそう」と思えたら。

食べ物以外は、描くのが大変そうやったね。最初の頃、やっぱ食べ物以外の仕事も来て。「どうしよう?」って言って。

夢眠 プラスチックとかは描けない。

原田 描けないことはないけど、プラスチック描くとしたら、そのときは「おいしそうやな」と思って描く。

夢眠 でも、前にレンガもおいしそうに描いてたから(笑)。

食べ物からうんちまで――。「食べ物と人」をテーマに描くイラストユニット。夢眠ねむさんが、はらぺこめがねさんと対談。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・2】の画像1

『レンガおとこ』
はらぺこめがね/作 えほんやるすばんばんするかいしゃ 現在品切

原田 そうそう。レンガは元々レンガが「おいしそうやな」と思ってたから描けるし。
あれはもう食べ物として捉えてるから。

夢眠 アハハハハ。急にモンスター発言で、怖い(笑)。レンガを食べる。

いろんなものを食べてるかもしれない。

原田 『山のフルコース』も、ま、山を食べる話なんやけど、あれは山がおいしそうやなって思っているから描けるし。

食べ物からうんちまで――。「食べ物と人」をテーマに描くイラストユニット。夢眠ねむさんが、はらぺこめがねさんと対談。【夢眠ねむの絵本作家に会いたい!・2】の画像2

『山のフルコース』
はらぺこめがね/作 小学館

あ、そうそうそう。「電球がおいしそう」って言ってなかった?

原田 電球もおいしそうやし。ま、石鹸とか。

それはちょっと共感が得られないかなあと思って(笑)。

原田 まあでもあるやん、なんか食べ物じゃないものを「おいしそう」と思うとか。

ああ~、確かにね。

夢眠 それはわかる。だからキャンディみたいに思って、口に入れちゃう(笑)。
大人だから食べないで、かわりに絵の中で実現してるだけで。

原田 そうそうそう。それと同じで。

そうだそうだ(笑)。

夢眠 すべてのものがおいしいと思えるかもね、しんやさんだったら。

原田 そう。思えるから、たとえば車とかは全然興味ないんやけど、もし「車を描け」って言われたら、多分、どうおいしく食べるかって。それをアングルとかも含めて、探すと思う。

どこから食べるか、とか(笑)。

原田 うん。想像しながら描いたら描けると思う。

夢眠 自分にとっての「魅力」が「おいしそうだから」っていう。

原田 そうそう、都合よく解釈してね。

◆小さな絵も大きな絵も、描く感覚は一緒

夢眠 今回はアトリエで絵本の原画も見せてもらいましたが、おふたりはライブペインティングで描くような大きな絵も、同じ感覚で描いているんですか。
もちろん画材は違うと思うけど。

原田 画材はね、一緒。でかかろうが小さかろうが、全部アクリル絵具。

夢眠 えっ!?

筆を変えるぐらい(笑)。

原田 そうそう。筆が刷毛になったりはするけど、ま、気持ちは一緒。
まあ、おっきい方がおもろいかな、描くのは。

おもろいね。

夢眠 ライブペインティングでは、みんながめっちゃ見に来ても平気?

原田 平気やけど。

焦りはしてるかな。時間が決められているものは。

原田 その場所で完成させなあかんから、もう、一所懸命やってるから。観に来てもらった人とコミュニケーションはとるけど、もう、なんか俺は結構、気が気じゃない。

そうそうそう。最初は来てくれた人といろいろお話ししながら描いてて、そのうちに時間ヤバなって、みたいな(笑)。
でも楽しいよね。そういう場所で、決められた時間の中で描くのも。

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◆輝きは、なんでもない日常の中にある

――デビュー当時にくらべて、絵は変わりましたか?

変わってると思います。

原田 変えてる。多分各々のタッチも、変わってる気はするし。

私、変わってるかな、大丈夫かな(笑)。

原田 うん、わからん(笑)。
まあ、根本は多分変わってないけど、作風っていうか、最初は、頭に何かをのせてる絵が多かったんやけど、最近あんま描かへんね。

そう、描くのは食べ物が多くなった。

原田 より日常を描くように。

あ、そうそう。そこが一番変わったかもしれない。

原田 コロナ禍以降は、そうかも。

夢眠 昔の方がもうちょっと、デザイン的だった。

そうそう、そうかも。

原田 とか、ちょっとポップやったような。アート寄りというか。

そう。なんか、食べ物をきれいにかっこよく描こう、みたいにちょっとしてたのかもしれない。
でも多分、自分たちがそういう性格じゃなかったというか(笑)。
自分たちの生活とつながってるっていうのが、頭でわかっていたようでわかってなかった、みたいな感じだね。

夢眠 でも確かに、より本当に食べられそうなものになってきてるかも。

原田 なんかその方が、描くのが楽しくなってきた。

そう。ハレとケだったらハレじゃない方、日常のなんでもない方に、めっちゃめちゃキラキラした何かがあるんだなって。
だからそんな背伸びしていろんなものを見に行かんでも、ここにあったなあみたいな感じ。
多分コロナ禍で、それに気づいた。

◆大人は感動、子どもは笑える「うんち」

夢眠 それまでもすごいおいしそうなもの描いてたけど、『たべて うんこして ねる』(岩崎書店)はすごく大きな契機でしたか。

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『たべて うんこして ねる』
はらぺこめがね/作 岩崎書店

原田 そう。あれを作ろうと思ったきっかけは、コロナ禍なんです。

夢眠 あれが結構「ごはん」フューチャーっていうよりは「暮らし」フューチャーのイメージですよね、軸が。

原田 そうそう。本当にその通りでございます(笑)。あのときぐらいから。

夢眠 ごはんを描く作家さんとしては、結構革命的っていうか。
だって、うんこだよ!?

原田 そうそうそう。

アハハハ。

夢眠 食べたものがちゃんと体を通って出てるっていうことが暮らしだよ、みたいな。健康そのもの。
だって、子どものうんちのチェックしますもんね、親になると。

そう。子どもが生まれたのも大きいね。
もう、うんちが愛おしくて愛おしくて。

夢眠 わかる!

原田 子どものね。そうそう、本当にそう。

一日の気分がもう、そのうんちで決まるって言っても過言ではない。
いまだにそうだもん。「すごいの出たよ、いいの出たー!」って言ってくれるし。

夢眠 うんちを「いいの出た」って言える家が、一番いいよね。
「こんな!」みたいなね。

原田 うん。「めっちゃいいの出てるよ」って。

「やったー!」みたいな。
それまでもずうっと昔から、いつか「うんち」はやりたいと思ってたんや、絵本として。
私、『みんなうんち』(福音館書店)がめっちゃ大好きで。
「こんな絵本作りたい」って思ったけど、なんか全然うまく考えられなくて。
子どもが生まれて、コロナ禍になって、生活がなんかこう、より自分で実感としてわかるようになって。

夢眠 でも、「子どもって『うんち』って言ったら笑うでしょ」っていうタイプの本じゃなくて、本当に必要なうんちとしての描かれ方。ギャグじゃないうんち。

だから大人からは、「めっちゃ感動した!」って言われる。

夢眠 感動のうんち。

でも子どもは笑うんですね。

夢眠 うんちで泣ける歳になった大人と、うんちで笑ってる子どもたちの対比かもしれないねえ。

そう。そうだねえ。本当、どの年代でもうんちっていうのは、なんかこう、フックになってる(笑)。

夢眠 めっちゃいい話だ。

めっちゃいい話だね(笑)。

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夢眠ねむ
ゆめみねむ/2019年、下北沢に予約制の書店「夢眠書店」をオープン。U-NEXTkids「ねむるま えほん」の企画監修・選書を担当。著書に『本の本』(新潮社)『夢眠書店の本棚』(ソウ・スウィート・パブリッシング)など。一児の母。

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はらぺこめがね
はらぺこめがね/原田しんやと関かおりによる夫婦イラストユニット。「食べ物と人」をテーマに、絵本や挿絵、ワークショップなど幅広く活動。kodomoe付録絵本発の絵本に『ごはん山』『おにぎり ばく!』(白泉社)がある。

撮影/大森忠明 ヘアメイク/光野ひとみ 編集協力/原陽子

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