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29年前、日本中が心を重ねた“革命のバラード” 「永遠のアイドル」を進化に導いた売上110万枚の名曲

  • 2025.6.2

「29年前、誰のことを想いながらこの曲を聴いていたか覚えてる?」

1996年にリリースされた『あなたに逢いたくて〜Missing You〜』は、それまでの松田聖子のキャリアの中でも特別な意味を持つ一曲だ。

それまで“アイドルの女王”として多くの楽曲を歌い上げてきた彼女が、自ら作詞・作曲を手がけたこのバラードは、まさにシンガーソングライターの松田聖子としての確かな一歩だった。華やかだった80年代とは異なる、静かで深い輝きがここにはあった。

当時34歳。多くの女性が大人の階段を上る頃、松田聖子もまた、ひとりの女性として、母として、そしてアーティストとしての葛藤や想いをこの楽曲に込めた。ステージの上だけでなく、日常を生きる一人の人間としての心の揺れが、そっと歌に映し出されているようだった。

切なさと希望が同居するメロディ

イントロのピアノが流れ出した瞬間から、聴き手の心をやさしく包み込む。繰り返しのフレーズは、恋愛の普遍的な痛みと願いをストレートに表現している。

歌詞に込められたのは、ただの失恋ではない。“再び逢えることのない人”への想い、もしくは“今はそばにいないけれど、心の中で生き続ける誰か”への祈り。

聴く人によって情景が変わり、年齢や経験によって受け取り方が変わる“深み”がある。聴きながら自分自身の過去と対話するような、不思議な静けさがある。“自分の言葉”で綴られたからこそ、そこに宿る感情はリアルで、聴く人の胸に静かに沁みわたっていった。

女性たちの共感を呼んだ“等身大の強さ”

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(C)SANKEI

“恋しくて泣く”ことも“前を向いて生きる”こともまるごと肯定してくれるようなこの曲は、多くの女性たちにとって、自分の気持ちを素直に受け止めるきっかけとなった。

決して強がらない。でも弱さだけでは終わらない。松田聖子がこの曲で見せたのは、“儚さ”ではなく“静かな芯の強さ”だった。

感情をさらけ出すことで、人はこんなにも美しくなれるのだと、そっと教えてくれるような強さだった。

“永遠のアイドル”から“心に寄り添う歌い手”へ

『あなたに逢いたくて〜Missing You〜』が累計売上枚数110万枚を超える記録的な大ヒットをしたことによって、松田聖子は新たなフェーズに進んだ。

80年代の“アイドル”という枠を超え、90年代以降は“大人の女性の心を歌うシンガー”として進化し、確固たる地位を築いていく。この楽曲は、NHK紅白歌合戦でも披露された。まさに、松田聖子というアーティストの“再誕”を象徴する一曲だった。

人生のさまざまな局面に寄り添うように、何度も繰り返し聴かれてきた曲。“聖子の代表曲”という枠を超えて、多くの人の思い出の中で生きている。

29年経った今も、テレビやカラオケで歌われ続け、聴くたびに“あの頃の自分”や“大切な誰か”を思い出させてくれるーー。それが、この曲が“時代を超えて生き続ける名曲”である理由なのだ。


※この記事は執筆時点の情報です。