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ミュウミュウ×ニューバランス×ココ・ガウフ。ファッションとテニス界のトップが打ち出す、ダイナミックなコラボレーション

  • 2025.4.30

フロリダ州ボイントンビーチを走る州間高速道路95号線からすぐのスタジオ。現女子テニス世界ランキング4位、2023年全米オープン覇者、2023年と2024年の女性アスリート世界長者番付1位に輝いたプロテニス選手のコリ・“ココ”・ガウフは、その忙しないスタジオを後にし、屋外に出る。そこでスナップ写真数枚の撮影と、取材に応じる。

デルレイビーチの近くで育ったガウフにとって、このあたりは地元だ。そして長年住んできたせいか、湿気の多さには慣れているようで、トラックスーツを身に纏っていても涼しい顔をしている。だが、ほかの服を着るわけにもいかない。なんせ、このトラックスーツは今回の撮影の主役でもある。左胸と太ももの上には、ニューバランスNEW BALANCE)の「NB」アイコンと、ミュウミュウMIU MIU)の丸みを帯びたフォントのロゴがプリントされているそれは、両ブランドのコラボレーションによる、パフォーマンスウェア、アウターウェアとアクセサリーから構成されるカプセルコレクション「New Balance x Miu Miu with Coco Gauff」のものだ。ほかアイテムは、5月7日(現地時間)からローマで開催されるイタリア国際の期間中に、ガウフによってコート内外でお披露目される。今年後半に行われるベルリンとシンシナティでの大会でも、ガウフはコラボレーションアイテムを着用する予定で、世界が全米オープンの余韻に浸っているであろう9月10日より期間限定で、一部のミュウミュウストアとmiumiu.comで発売予定だ。

3月下旬のこの日、「サンシャイン・ステート」という愛称でも親しまれているここフロリダ州で行われていたのが、このコラボコレクション関連のコンテンツ撮影だ。今回撮り溜めた素材は、来る数カ月にわたって公開される。それに先駆けて、現場でコレクションの全貌を見ることができた。

「今までにないこと、見たことないようなことをやりたい」

今回のコラボレーションにはコンサルタントとして携わったガウフは、その出来栄えに満足げだ。襟の立て方や袖のまくり方など、トラックスーツのスタイリングはミュウミュウの2025年春夏コレクションを彷彿とさせ、足もとを彩るニューバランスの「Coco CG2」カスタムシューズには、ガウフ直筆のサインが書かれており、味わいが出ている。

「全部で3つのトーナメントルックを作りました」と彼女は言う。「私が好きなシルエットをブランド側に見せて、それを出発点として制作を進めました。テニス絡みはテニス絡みでも、今までにないこと、見たことがないようなことをやってみたかったんです。(たとえば)ブランドが手がけたウェアを誰かがオンコートで着たのは、セリーナ(ウィリアムズ)オフホワイトOFF-WHITE)とのコラボウェアを着たときくらいしかない思いつきません。フェデラー選手はナイキNIKE)が手がけた『ジョーダン』シューズを履いていましたが、全身ナイキではなかったですし、ヤニック・シナー選手はグッチGUCCI)のバッグをコートで愛用していますが、コラボではないですしね」

スポーツファッションがかつてないほどに絡み合う現代において、今回のコラボレーションはファッション界にとって大きな転換点となる。なぜなら、イタリア発のメゾンブランドが、女子テニス協会(WTA)が運営する大会で正式なトーナメントウェアとして着用されるのは、来るイタリア国際が初めてだ。そしてガウフ自身にとっても、本業のテニス以外での活動の幅を広げる機会となった。「フェミニンな要素とマスキュリンな要素、両方を楽しむスタイル」を日頃から実践し、その独自のコーデを紹介する「GRWM」動画で、TikTokで人気を博すガウフは、ファッションを趣味にしている。だが、ファッションショーにはまだ行ったことがないという。「一度もないです!10代の頃は、ああいった場所で自分がスポットライトを浴びるのは、ちょっと違う気がして。でも今は、もっと活動範囲を広げたいと思っています」

より広い視野を持とうと思うようになったのは、最近大きな節目を迎えたからだろう。3月13日、取材のわずか1週間前に、ガウフは21歳になった。年齢よりも遥かに落ち着いて見えるためか、その若さに驚くファンやフォロワーもいるはずだ。ガウフ自身も、心の中では、10代の自分と“大人の自分”が常に綱引きをしており、大人の自分の方がわずかばかり優位に立っていると明かす。彼女の知名度と稼ぎを考えれば、自分が実年齢よりも上に感じるのは無理もないが、“ごく普通の”Z世代に生まれた21歳だともいう。

「プロテニス選手として成長すると、自分では実年齢よりずっと上だと感じることがあります。ですが、テニスをしていないときは、色々な意味でほかの同年代の人と変わりません。なので、リクエストがあれば、TikTokくらいはすぐにあげますし、撮るのも好きですね。自分の(本当の)年齢に戻れる感じがするんです。なので、断ることはありません」

必然から生まれた、スポーツとファッションのコラボレーション

スタジオの搬入口から芝生へ場所を移し、取材を続ける。そばに植っているヤシの葉の間から、南フロリダの午後の陽の光りが柔くこぼれおちる。21歳の誕生日は、ささやかにお祝いしたと話すガウフ。いとこたちとディナーに行き、翌日は父のコーリーがバーベーキューを行ってくれたそうだ。ガウフの中核をなすもの。それは、家族と信仰。あとは、ユーモアだ。

「弟のコーディーとキャメロンは、間違いなく私の一番の心の支えで、いつも応援してくれます。そして、謙虚な心を取り戻させてくれます」とガウフは言う。「良いプレーをしても私をからかい、調子が悪いときも私をからかいます。試合をしていると、自分の人生のすべてを賭けているような気持ちになって、死活問題に思えてくることがあるんです。言うまでもなく、負けても死ぬことはないですが。でも、弟たちのような人が周りにいると、プレッシャーが和らぐんです」

自身が信仰するキリスト教の教えも、気持ちを和らげてくれるとガウフは語る。「ときどき、試合や大会の成績が、自分のアイデンティティのすべてだと感じてしまうことがあります。ですが、信仰をもって生きれば生きるほど、スポーツが私を形作るすべてではないことに気づくんです。もう二度と試合で勝つことができなくても、私にはテニス以外の楽しみがたくさんあるのだと思うと、幸せです」。幼い頃から教会に通っているガウフは、今でも毎日ワーシップソングを聴き、時間があれば聖書を読む。

そしてガウフの成績は、まさに最近、話題にあげられている。グランドスラム大会の優勝経験があり、テニス界で最も有名な選手のひとりともなれば、タイトル獲得も優勝も、常に期待される。ガウフは今年1月の全豪オープンで準々決勝に進出した。BNPパリバ・オープンとマイアミ・オープンでは16強入りを果たし、今月開催されたシュトゥットガルト・オープンでは準々決勝に進んだ。そしてユナイテッド・カップでは無敗という、特筆すべき成績を残した。2024年後半には、リヤドで開催されたWTAファイナルズで、パリ2024オリンピック テニス女子シングルスの金メダリスト、ジェン・チンウェンと対戦し、優勝。とはいえ、2025年に入ってからは敗戦もしている。本人曰く、敗因はおそらく、プレースタイルを少し変えていることだ。しかし、彼女はくじけるどころか、ここでも21歳とは思えぬ達観ぶりを見せる。

「何かを変えても、結果がすぐに出るとは限りません。今はサーブもリターンも、もっと上手く打てるように試行錯誤している最中です。新しいプレースタイルを試すタイミングを見極めるのは難しいですけれど、最初は上手くいかなくて当然です。いずれ、すべてのコツを掴む瞬間がきますから」

スタジオ内の準備が完了し、出番を迎えたガウフが呼ばれる。「なるべくしてなった。それくらい、自然に進みました」と、最後に彼女は今回のコラボレーションについて言い、撮影に向かった。彼女のいち選手として、いち人間としての生きる姿勢を聞けた気がした。

Styling: Lotta Volkova Text: Nick Remsen Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.COM

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