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36年前、日本中が息をのんだ“永遠の名作アニメ” 小さな魔女が描いた“不器用な思春期”のリアル

  • 2025.4.14
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(C)SANKEI

1989年、あのホウキに、誰もが“未来への不安”を重ねた

「36年前の今頃、どんなアニメに勇気をもらっていたか覚えてる?」

1989年といえば、平成が始まり、時代が新しく動き出した年。音楽ではプリンセス プリンセスの『Diamonds』や光GENJIが人気を集め、映画では『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』が話題に。バブル絶頂期でありながら、どこか“未来への希望と不安”が交錯する空気が流れていた。

そんな中で、多くの人の心に寄り添い、今なお愛され続けるアニメ映画が公開された。

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© 1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

『魔女の宅急便』——1989年7月29日公開。
スタジオジブリ作品としては5作目にあたり、“宮崎駿監督作品のひとつの転機”とも言われるこの名作が、なぜこれほど長く愛され続けているのか。その理由を改めてひも解いてみよう。

“魔法”が主役じゃない、少女のリアルな成長物語

主人公は、13歳の魔女キキ。
魔女のしきたりに従い、独り立ちのために見知らぬ街でひとり暮らしを始める。
黒猫ジジと一緒に「魔女の宅急便」を始めながら、街の人々と関わり、自分の居場所を少しずつ見つけていく。

一見すると「魔女のファンタジー」だが、実は描かれているのはとてもリアルな“自立”と“葛藤”の物語。

・誰かに頼らずに生きていくことの難しさ
・自分の特技がうまく活かせなくなったときの焦り
・大人とのすれ違い、同世代との距離感

そんな「13歳の揺れ動く心」が繊細に描かれているからこそ、大人になってから観ると、より深く心に刺さるのだ。

“飛べなくなる”という喪失が、物語の核心

『魔女の宅急便』の中盤、キキは突然魔法が使えなくなってしまう。
ホウキで空を飛ぶことも、ジジと言葉を交わすこともできなくなる。

この“魔力の喪失”は、ただのトラブルではない。
それは、キキ自身の心の迷い、思春期特有の自信喪失、周囲との距離感に揺れる“内面の葛藤”の象徴だ。

そしてこの映画が素晴らしいのは、キキがそれを「魔法の力」ではなく、自分の足で立ち直ろうとする姿を描いているところ。

飛ぶことを取り戻すのは、“自信”や“勇気”を取り戻したその先にある。
そこにこそ、この作品が何十年も語り継がれる理由があるのだ。

キキの姿に、自分を重ねた世代を超えるファンたち

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© 1989 Eiko Kadono/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, N

『魔女の宅急便』は、公開当時から子どもだけでなく大人の心もつかんできた。
それは、誰もが一度は経験する「環境の変化」と「自分探し」の苦しさを、キキというキャラクターを通じて見せてくれたから。

・就職や進学で知らない土地に行ったとき
・自分の武器だと思っていたものが通用しなくなったとき
・“頑張っているはずなのにうまくいかない”時期にいるとき

そんなときにこの作品を観ると、キキの小さな成長が、自分の気持ちと重なる。

そして誰もが思うのだ。
「自分も、あのホウキに乗って、もう一度どこかへ飛び立てるかもしれない」と。

36年経っても、キキは空を飛び続けている

1989年に生まれた『魔女の宅急便』は、今もなおテレビ放送されるたびに多くの人に観られ、語られている。

魔法や空飛ぶ演出以上に、観る人の“心の景色”に触れるからこそ、
この物語は世代を超えて支持され続けている。

失敗しても、不器用でも、怖くても——
それでも“飛び続ける”キキの姿は、これからも誰かの背中をそっと押してくれるだろう。


※この記事は執筆時点の情報です。