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「韓国文化通信」Vol.48 映画監督・Ra Hee-Chan

  • 2026.11.6

今、最も“要注意”すべき韓国カルチャーを牽引するキーパーソンにインタビューし、その変化を定点観測していく本連載。第48回は、韓国国内で公開した際、クチコミで広がり驚異の244万人動員の大ヒットとなった映画『BOSS/ボス』の監督ラ・ヒチャン。ギャングのボスの後継者を争う、のではなく「譲り合う」という異色のクライムコメディを手がけた監督、実はもともとコメディよりもドラマ映画を撮りたかったそうで……。

text: Keiko Kamijo

「韓国文化通信」Vol.48 映画監督・Ra Hee-Chan
BRUTUS

相反する仁侠×コメディに挑戦する

──映画の世界を目指すようになったきっかけを教えてください。

何か一本の映画に影響を受けてこの業界を目指したわけではありません。でも、子供の頃から映画が好きで、たくさんの映画を観てこういう世界に行けたらいいなと思ったのがきっかけです。幼い頃に観た映画の多くは、日本でヒットしてから韓国に入ってきています。例えば、ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』やジュゼッペ・トルナトーレ監督の『ニュー・シネマ・パラダイス』などです。そういった数々の映画、そして映画に心血を注いできた製作者たちの仕事すべてから影響を受けています。

──映画を学ばれていた学生時代に特によく観た映画、もしくはお好きな映画監督はいますか?

私はずーっと映画を観続けてきたタイプです。日本の漫画や小説にもたくさん触れてきました。好きな映画監督という意味では、今村昌平さん、三谷幸喜さん、北野武さんの作品からは特に大きな影響を受けたと思います。

──『BOSS/ボス』は、ジャッキー・チェンに代表される古き良き香港映画のようなアクションと笑いが融合した、エンターテインメント性が高く、笑って泣ける作品でした。監督はもともとコメディがお好きだったのでしょうか?

いいえ(笑)。実は、私は岩井俊二作品のようなドラマやロマンスが好きで、コメディにはあまり興味がなかったんです。修業時代は、『トンマッコルへようこそ』などの作品で知られるチャン・ジン監督の下で助監督をしていて、撮影中にもよく話をしていました。監督は、私が言うジョークをすごく面白がってくださり。監督が私をコメディの世界に引き込んでくれました。

──映画の企画が立ち上がった経緯についてお聞かせください。

懇意にしている制作会社の方から、斬新な作品を作りたいという話がありました。ノワールジャンルの発想を転換して、これまでのノワールものを裏切る作品を作ってみようという話になりました。そこで出たアイデアが「誰もがボスになりたくない」という発想です。もともと私は人間のアイロニーについて関心を持っていて、コロナ前から脚本を書いていました。

──脚本を書くうえで意識した点について教えてください。

今回の映画はたくさんの役柄が登場します。一つの組に属していた人たちがそれぞれの道を歩んでいくのですが、ボスの後継者を選ぶ段階でまた一つになっていきます。後継者役のスンテ(チョ・ウジン)は料理人、ガンピョ(チョン・ギョンホ)はタンゴダンサー、そしてパノ(パク・ジファン)はボスになる気満々なのに人望はゼロ。そして、ボス(イ・ソンミン)や潜入捜査官のテギュ(イ・ギュヒョン)と人間味溢れるキャラクターがたくさん登場しますが、誰かは応援したくなる、そんな役柄にするよう心がけました。

──映画を観ていて、俳優の皆さんが非常に楽しそうに演じられているように見えました。撮影中、現場での演出はどのような感じで行われていたのでしょうか?

そうですね。コメディというのは本当に難しいと感じています。この映画の登場人物は観客を常に笑わせようとしているわけではありません。自分の夢や自分の生活を守るために、命を懸けて闘う人でもあるのです。まずは、彼らそれぞれが抱えている切迫感を描きたいと思いました。その中で、キャラクターを際立たせるためにコメディの要素を付け加えています。また、この映画は本当にいい俳優に恵まれました。いい俳優というのはシナリオを尊重してくれます。アクションが多いので、段取りが決まっているシーンは多くありましたが、振る舞いやディテールに関しては、彼らの才能に委ねています。

──ありがとうございます。最後に読者におすすめしたい韓国のカルチャーがありましたら教えてください。

そうですね。私はソウルの街を散歩するのが好きなのですが、観光地で有名
な光化門から少し外れた北村(プクチョン)と西村(ソチョン)の周辺が好きでよく歩いています。そこは、伝統的な建物、自然、近代的なビルが混在する独特な風景が広がります。あとは気の赴くままに、路地に入って、様々なソウルの表情を見つけていただけたらと。

Ra Hee-Chanが選ぶ、今の韓国を知る映画。

『BOSS/ボス』  ギャング組織の後継者争いという、『新しき世界』など韓国犯罪ノワール映画でお馴染みのモチーフを大逆転。一人のボスの座をめぐる譲り合い合戦が始まる。監督・脚本:ラ・ヒチャン/出演:チョ・ウジン、チョン・ギョンホ、パク・ジファン/10月23日、全国公開。公式X:@bossmovie_jp/Instagram:@bossmovie_jp

profile

ラ・ヒチャン

1977年生まれ。2008年、映画『正しく生きよう』で監督デビュー。韓国の音楽業界を舞台に、4人の若者がトップアイドルに駆け上がる姿を描いた『Mr.アイドル』(12年)などコメディや群像劇を中心としたユーモア溢れる演出に定評。韓国映画界で長く活躍する。

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