1. トップ
  2. エンタメ
  3. 相方未満 特別編:ロングコートダディ・兎 × マユリカ・阪本

相方未満 特別編:ロングコートダディ・兎 × マユリカ・阪本

  • 2026.11.6

先輩後輩なのに、遠慮はほとんどなし。好きなネタや創作の裏側、芸人としての素顔まで、高速の掛け合いで縦横無尽に語り合った2人。互いをよく知る関係だからこそ飛び出す、容赦ない悪口と最大級の賛辞の数々。両者のコンビのネタの中に、お互いが“人間”として共有している感覚が見えてきた。

photo: Masanori Ikeda / text: Tsuyachan

ロングコートダディ・兎 × マユリカ・阪本
BRUTUS

profile

兎(お笑い芸人)

うさぎ/1988年岡山県生まれ。2009年、相方の堂前透と〈ロングコートダディ〉結成。1度の解散を経て、13年に再結成。25年『キングオブコント』優勝。阪本と同様、新しく車を買ったばかり。「9月に新車が来るので楽しみです。それまでと思って、最近またバイクによく乗ってます」


profile

阪本(お笑い芸人)

さかもと/1990年兵庫県生まれ。2011年、相方の中谷と〈マユリカ〉結成。23・24年『M−1グランプリ』決勝進出。7、8ヵ月ほどかけて人生初の自動車免許を取得し、念願の車を購入したばかり。「家族と出かけたくて買いました。でもまだ慣れなくて、ヒヤヒヤしながら運転してます」

頑張るのは苦手。だから素のまま、演じるように

兎

最初に阪本を認識したタイミングって全く覚えてないんよね。いつからかわからないけど、ほんまに挨拶してこなくなったよな。

阪本

いい意味でな。

兎

いい意味でって何やねん。

阪本

兎さんみたいな関係性の先輩ってあんまりいないかも。自分から誘える先輩って、実は少ないやん。やっぱり気を使うし。

兎

ちょっとは気を使ってくれていいんやで。でも阪本って、ほんまに変なやつよな。たぶん子供の頃からずっとそうやろ?中谷から聞くエピソードもそうやし、ずっとまともじゃないというか、キモい寄りで生きてきてるやん。それがお笑いにつながってるからすごい。

阪本

それ褒めてるん?

兎

ずっとコントしてる感じというか。コントって、設定を作ってキャラクターを演じるやん。でも阪本は、「阪本さん」というキャラの人生をずっと過ごしてるように思う。だから何言っても面白いし、それを本心でやれてるから強い。

阪本

あなたもだいぶキモく育った人ですけどね。

兎

キモくは育ってないわ(笑)。

阪本

自分のこと言ってるんかなと思いましたよ。でも俺ら、似てるところもありますよね。お互い頑張るのが苦手で、楽するのが好きやし。

兎

「天下取るぞ」とは思わない。

阪本

仕事場でも「今日の兎さん、めっちゃ気合入ってるな」って姿見たことない。常に「楽しかったらいいかな」というスタンスに見える。

兎

そうそう。そもそも楽しそうやから入った世界なんでね。大事。

阪本

思うんですけど、兎さんは台本以上の働きをする人やなって。80点の本があったら、それを100点に持っていけるというか。たぶん、本質的に人間としての揺るぎないキモさがあるから、それができるんやと思う。どのネタでも、兎さんは自分の一部を演じてるように見える。無意識でマウントを取る役も、過剰に驚く役も、本人の中にある部分でやってる。キモいキャラの引き出しがむっちゃ多い。

兎

キモいキモい言いながらめっちゃ褒めてくるやん。

阪本

例えば『旅人』とかは、すごく素が出てる感じがする。

兎

素は出てるね。ただ、あれはわざとへたにしゃべってるんで。

阪本

ふーん、普通にしゃべってるように見えるなあ。セリフは初めから決まってたんですか?

兎

大体の流れは。でも堂前からは「自分のところは適当に話してくれていいよ」って言われてた。

阪本

やっぱり素や。あのネタは寄席でもウケそうですね。

兎

実はあんまりできてない。普段、俺らの出番って5分やろ?当初あのネタができた時は8分やったんよ。やっていくうちに話す内容が定まってきて、今のベストは14分。

阪本

14分なんや(笑)。

兎

でも大阪時代、『ABCお笑いグランプリ』の決勝でもやった。その時は4分まで短くして。ここ一番の時にやった思い出があるな。

ロングコートダディ・兎 × マユリカ・阪本
(左)阪本、(右)兎。

譬えが常に100点満点。同世代で一目置く存在

兎

俺な、正直言って、阪本は同世代では1位やと思う。

阪本

それ褒めすぎや(笑)。

兎

周りも言ってるやん。俺個人の意見としても、大喜利とか平場も含めて1番やと思ってるよ。歌がうまいのもあるけど、声の出し方や強弱、高さとか含めて完璧。何をどういうふうに、どれぐらい強く言えばおもろいかを、全部肌感覚でわかってる感じ。もう、笑いの権化。

阪本

言いすぎですよ。権化って。

兎

ネタはどうやって作ってるん?

阪本

会議室で、中谷と2人で「どんな設定にしよう?」ってところから始めてます。アイデア出しは俺やけど、その場には中谷にもいてもらう。一人で書くのができないから。

兎

マユリカのネタって、特に新ネタは顕著やけど、ちょっと生っぽい作りになってるよな。まず設定を考えて、そこに阪本が思いついたボケを足していった感じがすごくする。「この日までに作らなあかんかったんかな」とすら思うというか。

阪本

ほんまにそうです(笑)。

兎

それでも大爆笑とるからすごい。しかも、一回できたネタは一文字もセリフを変えないんやろ?

阪本

基本的にはね。兎さんたちはどんな感じで作ってはるんすか?

兎

俺は一言もネタ書かないので、ある時から堂前に「その場におらんといてくれ」と言われてる。ネタ合わせをしに喫茶店に行っても、「ごめん、まだできてないからあと2時間どっか行っといて」って(笑)。

阪本

俺は、相方が書かなくてもその場にいてほしいんですよね。

兎

あと、阪本はワードセンスもすごい。『嫁姑(よめしゅうとめ)』って漫才も好き。

阪本

だいぶ変なネタですけど。嫁姑問題がテーマのやつね。

兎

中谷が何かするたびに、阪本が「まるで何々みたいですね」って挟むやん?そのワードセンスが素晴らしいのよ。譬(たと)えが全部100点。皆言うてるけど、そういう意味で阪本は次の松ちゃんやなって。阪本の真骨頂。

阪本

やめてや。そんなん一人も言ってないでしょ。

兎

だって尼崎出身なわけでしょ?

阪本

適当すぎるやろ。神戸やわ!

ロングコートダディ・兎 × マユリカ・阪本
2026年7月、新宿にて。〈ルミネtheよしもと〉の出番の合間にチーズホットクを食べながら。

2人が選ぶ互いの名作ネタ

選者:阪本(マユリカ)

『旅人』

2020年のライブ『ロングコートダディのとんぷう〜ザ・ギース編〜』でも披露されたコント。「初めて観た時、“賞レースの決勝、余裕で行けるんちゃう?”と思ったくらい完璧やった。兎さん演じる旅人が話べたという設定だけど、そこに兎さんらしさがある。無理がなくてリアルだし、“この人は本当にこうなるやろうな”と思い浮かぶ」

『石像』

2024年『キングオブコント』決勝で披露されたネタ。堂前演じる一人の男が、兎扮する石像の元へ辿り着くが……。謎の言語をしゃべり続ける謎の存在との対話劇。「大胆にモニターを使うことも含めて、あまり賞レース向きではないと思う。それなのに、堂々と決勝2本目に持ってきたことがすごい。自分たちが面白いと思うからやる、というロングコートダディらしさがある」。U−NEXTで視聴可。

選者:兎(ロングコートダディ)

『倦怠期』

2023年『M−1グランプリ』決勝で披露された漫才。阪本演じる無神経な夫の発言が連発され、妻役・中谷の怒りのボルテージがだんだん上昇していく。「よくある夫婦喧嘩の生々しさとバカバカしさとのバランスが絶妙だった。ずっと笑って笑い続けて、最後に何も覚えてない、みたいなすごみがある。確実に面白いんだけど、笑いすぎて何を話していたか思い出せない」。U−NEXT、Prime Video等で視聴可。

『ドライブデート』

2021年『M−1グランプリ』敗者復活戦で披露された漫才。ドライブデートでのカップルのやりとりが描かれる。「これこそが「ザ・阪本」です。“変でしつこい”という阪本のキャラクターが存分に発揮されてる。特にびっくりしたのが、あるアクションが繰り出されるくだり。その動き自体もうまいけど、発動するタイミングがすごくて、意外性がありましたね。初見はめっちゃ笑ったなあ」。『M-1』公式DVDで視聴可。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ