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相方未満 特別編:ニッポンの社長・辻クラシック × ロングコートダディ・堂前透

  • 2026.11.6

2025年、それぞれ『キングオブコント』と『ダブルインパクト』で優勝。辻が芸歴1年目の頃からの付き合いで、現在はまるで家族のような関係性だと公言している。漫才が主流の関西出身でありながら、コント師として腕を磨き続けてきた両名が、改めておのおののネタ作りの共通点やルーツを振り返る。

photo: Kaho Okazaki / text: Seitaro Nagai

ニッポンの社長・辻クラシック × ロングコートダディ・堂前透
BRUTUS

profile

辻クラシック(お笑い芸人)

つじ・クラシック/1986年京都府生まれ。2013年、相方のケツと〈ニッポンの社長〉を結成。25年『ダブルインパクト』初代王者に。最近、辛いものが苦手な堂前に、ワサビ料理専門の居酒屋に連れていかれた。「堂前さん、めっちゃしんどそうに食べてました。旨かったけど、辛かった」


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堂前透(お笑い芸人)

どうまえ・とおる/1990年福井県生まれ。2009年、相方の兎と〈ロングコートダディ〉を結成。25年『キングオブコント』優勝。毎年恒例の節分の豆まきを、辻、ママタルト檜原洋平らと自宅で行った。「途中からロジャー(沖縄)がおらんくなって、そしたら鬼が来て、みんなで退治しました」

共通点は“普通じゃない”相方。その人間性を生かす

辻クラシック

ロングコートダディさんのネタは品がありますよね。面白いのに、関西の妙な下品感がない。昔からそれがなかった。東京でやってたと言われても信じるくらいのコント師感があるというか。関西で一緒にやってた頃、僕らの周りではその感じは唯一でした。

堂前透

僕らは割と広い範囲にウケようとしてるところがあるけど、ニッ社はそうじゃない。ほんまにコアな感じ、一見伝わりにくそうなもの、バイオレンスすぎるものなんかをやりながら、普段あまりそっちが好きじゃない人をも笑かしちゃう。で、結局全員笑かしてる。それぐらいのパワーを定期的に出すのがすごいね。

辻

ネタの内容に関しては、お互い相方が“普通じゃない”ので、それを生かさざるを得ない、みたいなところはありますよね。贅沢な悩みだと言われるかもしれないですけど、キャラがない方ができるネタってあるじゃないですか。

堂前

うん、ある。

辻

「邪魔やな、こいつのキャラ」って。キャラがあるというか、普通のことができないというか。

堂前

シンプルに“デブい”とかね。

辻

今の兎さんは、おじさんかおばさんしかできないですもんね(笑)。昔は男子高校生とかもできてたはずやのに、今の体重ではできない。

堂前

それが良さでもあり、“かせ”でもある。それは共通してるかも。

辻

“重たい武器”みたいな感じ。

堂前

だから相方の人間性をネタに乗せられるといい、みたいなところはある。

辻

ロングさんのコント『旅人』なんかは、明確に兎さんを生かしたネタですよね。兎さん演じる旅人が話がへたというコントですけど、たぶん兎さんが何やったらおもろいかで作ってる。そのプロデュース力はさすがだなと思います。

堂前

兎ありきで考えたわけでもないんだけどね。実際にやらせてみたら、すごく兎の人間が乗ったという感じ。人間が乗るとウケやすくなるんだなと、その時に思った。

辻

そうですよね。だから僕もそういうことを意識してネタ書いてるんですけど、「ケツさんは演技うまいっすね」みたいに褒められたりする。めっちゃムカつくんです。こっちがそれに合わせて書いとんねん、と。

堂前

ほんまにそう。

辻

できることがめっちゃ少ないんですよ。だから“うまい”というのは違うよっていう。それは僕もなんですけど……。

ニッポンの社長・辻クラシック × ロングコートダディ・堂前透
写真は2025年10月、東京・赤坂にて。思い出の場所、赤坂TBS付近を歩いた。2人が所属するバンド・ジュースごくごく倶楽部(現:たこやき野球連盟)の単独ライブが9月に開催された。

面白すぎたら、格好いい。影響を受けた芸人たち

堂前

コントも漫才もやるけど、基本的にはコントがメイン、というところも同じかもしれない。

辻

そうですね。僕がコントに興味を持ったきっかけは、『オールザッツ漫才』(毎日放送が毎年年末に放送しているネタ番組。漫才もコントも披露される)で観たジャルジャルさんでした。それまで格好いいのは漫才やと思ってたんです。コントはただただ笑えるという感じで。でもジャルジャルさんがTシャツとチノパンでコントやってるのを観て、「格好ええな」って。新しい好きなバンド見つけた、みたいな感じでした。天竺鼠さんもそうです。面白すぎたら格好いい、みたいな。それまで自分の中では、トガってるものと言えば千鳥さんの漫才とかやったんです。でもジャルジャルさんや天竺さんを観て、コントでもトガれるんやと思った。僕はラーメンズさんとかを通ってなかったので、“この笑いについてこい”みたいなコントを、あまり知らなかったんですよね。

堂前

僕はそれこそ、ラーメンズさんとバナナマンさん。辻と一緒で、ジャルジャルさんや天竺さんにも、もちろん影響を受けた。だから、芸人になろうと思った時もコントをするもんやという気持ちが当然あった。逆に漫才の方は、最初の頃は無理やり作っていた感覚があったかもな。昔は『ytv漫才新人賞』の予選に勝手にエントリーされてたから(笑)。

辻

あの大会はでかかったですよね。予選からテレビに出られますから。優勝したいというより、予選で何ヵ月かに1回テレビに出られる、というモチベーションでネタ作ってた。でも今回選んだネタも、お互いコントばかりでしたね。ロングさんはネタをYouTubeにあんまり上げてないから、選ぶの大変でしたけど。

堂前

ニッ社は今も上げてる?

辻

ほんまにたまにですね。だいぶ減りました。僕的には、上げるとちょっとやりづらくなるというか、やっぱり初見で観てほしいから。

堂前

それに比べて曲ってすごいよなあ。知ってれば知ってるほど盛り上がる。

辻

お笑いは「このネタ行くぞ!」で盛り上がることは少ないですもんね。あと、YouTubeに上げちゃうと自分の中で“完成”になっちゃう気がして。最近はもう二度とやらへんやつしか上げんとこかな、と(笑)。

堂前

それで言うと、佐久間一行さんの『お菓子工場見学』ってネタが大好きで。YouTubeに2017年版、2021年版みたいに年代ごとに4つくらい上がってるんです。「あ、こういうやり方もありなんや」と思った。進化したネタをちょっとずつ上げてく、という。

辻

ディレクターズカット版みたいな感じ。それもありですね。

堂前

まあでも、YouTubeに上がってるネタだけがすべてじゃない。記事の最後に「劇場に足を“運べ”」と書いておいてください。

辻

命令形でね。

2人が選ぶ互いの名作ネタ

選者:辻クラシック(ニッポンの社長)

『おばさん』

サッカーボールを拾いに行った少年が、その先で出会ったのは……という導入のコント。「兎さんがおばさん……ギリあり得るんですよね。しかも根がええ格好したい人だから、サッカーの動きやってる時も気持ちよさそうで。兎さんの人間性ありきでネタが書かれていれば、兎さんはそれに乗っかりまくる人。そうなると無敵というか」

『キックマン』

2022年放送の『千鳥のクセがスゴいネタGP』初登場時に披露されたコント。電柱に貼られていた「キックマンに注意」という貼り紙。それを見つけた直後に現れたのは……。「蹴られた後の“痛ってぇ〜”という兎さんの声がかなり効いてる。オチもめっちゃおもろくて、衝撃的でした」(辻)。「思い付きで出来上がった一本。最初は全身タイツ姿のキックマンのフォルムが好きで作りました」(堂前)。FODで視聴可。

選者:堂前透(ロングコートダディ)

『手術』

2023年『キングオブコント』決勝でも披露されたコント。手術台に横たわった患者。医者が腹部にメスを入れていく。「辻のツッコミがうまいんです。この低いトーンのツッコミ、ほかの人には真似できない。間もテンポも、練習して身につくものじゃない。関西人として体に染みついてるものでしょうね。“だし”みたいなツッコミです」

『寒いやろ』

真冬の路上を舞台にしたコント。薄着で歩く男に、コートを着た男が声をかける。「ケツは普通におるだけでも気持ち悪いんですけど、このネタは辻の方もかなり変なやつで。意味のわからないやつ同士が、真剣に会話してる。この状態がだいぶおもろくて。これが現実で、家の下の道とかから聞こえてきたら、もう最高やろうなあって」

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