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「飲み会に彼女を呼ぶ男は無理」と言った俺が、座敷に彼女を呼ぶしかなかった事情

  • 2026.11.7
ハウコレ

あの日の座敷で、俺は自分で決めていたことを1つ破りました。そうしてでも、先輩との約束だけは作りたくなかったのです。

職場の飲み会が始まって2時間ほどたった頃、隣の席の先輩がグラスを置いて俺のほうを向きました。先輩には前から、知り合いとの食事会に何度も誘われています。そのたびに、彼女がいるからと断ってきました。

先輩の一言

「本当は彼女なんていないんだろ。いないなら来週の食事会な」
先輩はそう言って、周りの同僚たちと笑いました。悪気がないのは分かっています。ただ、ここで笑って流せば、来週の予定は本当に決まってしまいそうでした。
彼女以外の誰かと、紹介の場で会う約束はしたくない。かといって、職場の先輩との空気を悪くすることもできません。
少し前に、家のソファで「飲み会に彼女を呼ぶ男は無理」と言ったばかり。それでも俺は、トイレに立つふりをして店の外に出ました。

送ったメッセージ

「今から店に来てもらえない?」
続けて店の地図を送ると、彼女からどうしたのかと返ってきました。理由を書こうとして、指が何度も画面の上で迷います。先輩に疑われているなんて、文字にするのは格好悪すぎました。
「来てから話す」
それだけ送って一度席に戻り、彼女が着く頃にまた店を出て、入口の明かりの下で待ちました。電車で来た彼女は、上着を急いで羽織ったような姿でした。
「ごめん、少しだけ顔を出して」

座敷のふすまの前で

ふすまを開ける前に、一度だけ彼女の顔を見ました。巻き込んでしまうことが、申し訳なかったのです。
ふすまを開けると、手前の席の先輩がこちらを見上げ、目を丸くしました。小声で彼女に「先輩」と伝えてから、俺は先輩のほうを向きました。
「彼女です」
「え!」
同僚たちの声が重なるなか、先輩は少し間をおいてから笑い出したのです。
「わざわざありがとうね」
彼女があいさつをすると、座敷はまた笑い声に包まれました。先輩はそのあと、食事会の話を一度もしていません。

そして...

彼女はウーロン茶を1杯だけ飲んで、15分ほどで店を出ました。駅までの道で、俺は「助かった」としか言えませんでした。
疑われていたことも、自分の言葉を曲げたことも、話すにはまだ照れくさかったのです。「今度ちゃんと話す」と言ったきり、その今度はまだ来ていません。帰りの電車で、先輩から「いい子じゃん」とメッセージが届いていました。それも、彼女にはまだ見せていないままです。
飲み会に彼女を呼ぶ男は無理だと言った俺は、あの日、自分から進んでその男になっていました。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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