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水瀬いのり「学校内では若干の寂しさや異端さを感じていました」

  • 2026.11.3

「あの人は、子どものころ、どんな子どもだったんだろう」

「この人の親って、どんな人なんだろう」

「この人は、どんなふうに育ってきたんだろう」

今現在、活躍する著名人たちの、自身の幼少期~子ども時代の思い出や、子ども時代に印象に残っていること、そして、幼少期に「育児された側」として親へはどんな思いを持っていたのか、ひとかどの人物の親とは、いったいどんな存在なのか……。

そんな著名人の子ども時代や、親との関わり方、育ち方などを思い出とともにインタビューする連載です。

子どもたちの憧れの職業の一つとして、昨今大注目の「声優」。2026年10月2日より公開の『劇場版ダーウィンが来た!』世界のネコのなかまたちで語りを務める水瀬いのりさんは、幼いころから声優になることを夢に見て、それを叶えた人。今や若手実力派声優として大活躍中の水瀬さんは、どのような子ども時代を過ごし、どのように声優への道を歩んだのでしょう? そこには夢の叶え方のヒントがいっぱい詰まっていました!

“好き”を邪魔されなかったのは一人っ子の特権

私の子ども時代は、常にアニメやキャラクターに囲まれている、という環境でした。家ではいつもアニメ作品が流れていて、「テレビの見過ぎ!」と怒られたこともありません。むしろアニメを見ていると私の機嫌がよくなるので、積極的に見せてくれていたほど(笑)。家族で東京ディズニーランドに行くのも恒例行事で。ディズニーは父も母もみんな大好きだったので、家族に良い“気”をもたらしてくれる存在だったんですよね。

私は一人っ子できょうだいに憧れていたんですけど、一人っ子ゆえに、そうやってマニアックな自分の嗜好にどっぷり浸からせてもらえた、とも思っていて。それは幸せだったなと感じています。

そんな環境だったので、6歳のときにはもう「声優になりたい」と夢が決まっていました。ただ、学校に通い始めると堂々と「好き」とは言えなくなってしまって。当時は今ほどアニメ文化が浸透していなかったので、若干の寂しさや異端さを学校内で感じていました。クラスのみんなが話すドラマや芸能人の流行についていけず、放課後遊びに行きたい場所もカフェではなくアニメショップだったので気づけば自分の趣味をあまり公にしないように過ごしてしまいました。

14歳でオーディションを受けてグランプリに

一方で、その寂しさを補ってあまりあるくらい、親は私の夢を応援してくれていました。声優も「絶対なれるよ! 歌上手いし、才能あるし!」と、親バカ丸出しでした(笑)。そこで私はすっかり勘違いして「そうだよね!」と思ったかというと、それはまったくなくて。自分で言うのも何ですが、もともと甘ったれたところがない性格だったので、「現実はそんなに甘くない」と分かっていた。でも、それだけ親が私の活躍を信じてくれていたので、「いつかはそういう姿を見せたいな」と、本気で声優を目指す気持ちが芽生えたんです。

私は子どものころからグズグズ迷わず決断するところがあって。そして決めたら、悩むより達成するために行動するタイプ。だから「声優を目指す」と決めてからは、学校終わりに母とカラオケに行って歌を聴いてもらう、というのがほぼ毎日のルーティンでした。友達と行くこともありましたが、やはり一番真剣に聴いてくれるのは母。だから何より練習になったんです。

14歳で声優のオーディションを受けたのも、母のアドバイスに迷わず従ってのこと。オーディション雑誌には、そのまま書き込んで事務所に送れるという履歴書キットが付いているんです。声優というと、まずは専門学校などに通って技術を磨くというのが王道のルートですけど、私は勉学というフレーズに対してどうしても腰が重くなる性格でしてそれならオーディションを受けて直接事務所に入ってしまえば良い! という結論へ。それで一か八かでオーディションを受けたら、グランプリを獲得できてしまったんです。

万人にウケるより数人の心に爪痕を残そう、と思った

オーディション参加者の中で、私はまだ幼かったので技術的決め手に欠ける、と分かっていました。だから無難にパフォーマンスするより笑われても良いから全力で好きを伝えよう!と決めたんです。というわけで、他の人たちが美しい弾き語りとかをしている中、私は一人8役を演じたんです。

次々と、ころころテンションが変わっていって、めちゃくちゃヤバい子どもに見えたと思います。実際、「何だこれは!?」という感じで審査員の方たちにはクスクス笑われました。でも、たくさんの人に共感してもらうことより、数人の心に強烈に引っかかるほうが大事だ、と思ったんですよね。もしそれで失敗しても、その勇気は絶対に次につながると思いましたし!

この経験から私が伝えたいのは、目先の結果ではなく、長い目でみて後悔のない選択をしてほしい、ということです。全力を出し切ったけどダメだった、はOK。それは絶対、自分の中に経験として積み重なっていきますから。グランプリは獲ったものの、デビューしてからは私も上手くいかない時間が長かったんです。でも常に「この頑張りが根付いていつか花開く」と信じてやってきました。

子どものころに培ったイマジネーション力が今生きている

今はおかげ様で、声優・アーティストとして忙しい毎日を送らせてもらっています。子どものころを振り返って、じゃあ何が今の状況につながったのかなと考えると、イマジネーション力かな、と思います。

私はもともと一人でいろいろな想像をするのが好きで。子ども時代は団地住まいで、無機質なエレベーターを上り下りするだけの日々だったんですけど、いつのころからか、エレベーターの階数ボタンの数字を見て、人の顔を想像するようになって。たとえば「5」のデザインが、某タレントさんの顔に見えてきたり。これを誰かに言うと、「ちょっと言っている意味がよく分からない」とまったく共感されないんですけど(笑)、そういう自分だけの感性って、声優の仕事を始めると大きな武器になるんです。

声優は、何もない録音ブースの中で、キャラクターの感情を想像して演じなければなりません。たとえば悲しい演技をするとき、“悲しい”にもいろいろあるじゃないですか。静かに悲しんでいるのか、胸が張り裂けそうなのか、とか。実際、演技のオーダーもフワッとしていることが多いんです。「ちょっとトガりある感じで」とか。そんなとき、さっと自分の中で腑に落ちるイメージを生み出せる瞬発力って、すごく大事で。

親に素敵な老人ホームをプレゼントしたい

私は2026年10月2日公開の映画『ダーウィンが来た!世界のネコのなかまたち』で語りを務めさせてもらっていますが、ここでもイマジネーション力はすごく生きたと思います。実際には見たことがない動物たちも、映像を見ていると人間味を感じて、「私たちと似ている」とどんどん親近感を覚えて。そうやって自分たちに重ねて、さまざまな想像をしながら声を吹き込ませてもらいました。

cocreco©劇場版ダーウィンが来た!世界のネコのなかまたち 製作委員会

人から「面白いね」と思われることは大事ですが、全てを理解されなくてもいい。自分だけの感性を育てることも、皆さんには大切にしてほしいと思います。声優を目指す、目指さないに限らず、そういうイマジネーションの引き出しはあるほうが、人生は絶対に楽しくなると思いますから。

こうして今日までを振り返ってみると、夢を叶えられたのはもちろん自分の頑張りもあるけど、やはり親のおかげだなとあらためて感じます。親には本当に感謝だらけで。私は一人っ子なので、これからは私が親を支えたい。目下の夢というか目標は、仕事を頑張って、いつか親に素敵な老人ホームをプレゼントすること。これは使命感というより、鏡写しみたいな感じで、私がしてきてもらったことを返したいという自然な気持ちです。

cocreco水瀬いのり12月2日生まれ。東京都出身。2010年にオーディション『アニストテレス』でグランプリを授賞。同年、声優デビューする。現在、若手声優の中でトップクラスの実力と人気を誇り、声優としてだけでなく、歌手としても大活躍中。代表作は『心が叫びたがってるんだ』(成瀬順役)、『Re:ゼロから始める異世界生活』(レム役)など。

『劇場版ダーウィンが来た!世界のネコのなかまたち』

今回登場するのは世界中のネコのなかまたち! 物語の中心となるのは、8年の歳月をかけて追い続けた5頭のオスのチーターたち。単独で生きることが常識とされるチーターが、なぜ群れをつくり生き抜こうとしたのか……。5頭の目まぐるしく変化する上下関係や、さまざまな試練から目が離せません! さらに、ナミブ砂漠で孤独に生きるメスライオン・チャーリーにも密着。マヌルネコのマヌ子ママ(声:山田孝之)と、相棒のツノミン(声:水瀬いのり)が、世界中を旅しながら野生ネコたちの驚きの能力や魅力を楽しく紹介します!! 2026年10月2日より全国ロードショー。

cocreco『劇場版ダーウィンが来た!世界のネコのなかまたち』2026年10月2日(金)よりユナイテッド・シネマ豊洲他、全国ロードショー/ローソン・ユナイテッドシネマ©劇場版ダーウィンが来た!世界のネコのなかまたち 製作委員会

写真/恩田亮一 取材・文/山本奈緒子 ヘアメイク/山本小百合 スタイリスト/田村理絵

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