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ロビン・ウィリアムズが『アラジン』出演で出した“唯一の条件”とは

  • 2026.11.3

1992年公開のディズニー・アニメ映画『アラジン』で、ランプの魔人ジーニーの声を担当したロビン・ウィリアムズ。変幻自在の声と止まらないアドリブでジーニーを作品の顔に押し上げた彼は、この役を普段の出演料の100分の1にも満たない額で引き受けていた。

その代わりにロビンがディズニーに求めたのは、たったひとつの約束。しかし、その約束が破られたことで、両者の関係は何年にもわたって悪化することになる。名作の裏で起きていた、知られざる確執をひもとく。(フロントロウ編集部)

ジーニーは最初から「ロビンのため」に書かれていた

ジーニーは、企画段階からロビンが演じることを想定して書かれたキャラクターだった。とはいえ、当時ディズニーの映画部門を率いていたジェフリー・カッツェンバーグは、出演料やスケジュールの面でトップスターを声優に起用できるのか半信半疑だった。断られた場合に備え、ジョン・キャンディ、スティーヴ・マーティン、エディ・マーフィ、ジョン・グッドマンらの名前が代役候補として挙がっていたという。

ロビンを口説き落とすため、アニメーターのエリック・ゴールドバーグはひと工夫した。ロビンのスタンダップ・コメディのレコードから一部を選び、その音声に合わせてジーニーを動かすテスト映像を制作したのだ。

決め手になったのは、1人で2役を演じ分けるネタに合わせて、ジーニーの頭がもうひとつ現れ、自分自身と言い争う映像。ゴールドバーグによれば、それを観たロビンは大笑いし、出演を承諾したという。

3分の場面が20分に。止まらなかったアドリブ

当初、ジーニーの出番はそれほど多くない予定だった。ところが、ロビンが収録ブースに入ると、台本のセリフに次々とアドリブが加わり、収録された音声は合計30時間近くにのぼった。

共同監督のロン・クレメンツは、あるシーンではテイクを重ねるたびにロビンが新しいアイデアを加え、25テイク目には約3分だった場面が約20分に膨らんでいたと振り返っている。ジーニーのアニメーションを担当したゴールドバーグは、笑いをこらえきれずに収録を台無しにしてしまうため、途中でスタジオから退出させられたほどだった。

出演料は相場の100分の1以下。その代わりに求めた約束

当時のロビンの出演料は、映画1本あたり800万ドルが相場だったとされる。それが『アラジン』では、俳優組合の最低水準にあたる7万5,000ドル。米Mental Flossによると、ロビン自身は報酬にこだわっておらず、アニメーションの歴史に名を刻めることや、幼い子どもたちのために出演を引き受けたのだという。

代わりに彼が提示した条件は、自分の声を商品の宣伝や販売促進に利用しないこと。ところが『アラジン』が大ヒットすると、ディズニーはこの約束を守らなかった。

1993年、映画『ミセス・ダウト』の宣伝で米テレビ番組『TODAY』に出演したロビンは、次のように怒りをあらわにしている。

「突然、広告が流れたんです。前半は映画の紹介で、後半はその映画を使ってグッズを売る内容でした。僕の声を使っただけでなく、僕が演じたキャラクターに別の声をかぶせて商品を売っていた。それだけはやらないでくれと言っていたのに、一線を越えたんです」

さらに、「ディズニーで働くと、なぜミッキーの指が4本しかないのかがわかりますよ。小切手をつまめないようにするためです」という皮肉まで飛ばした。

ピカソの絵でも埋まらなかった溝

ディズニー側は当初、ロビンが関わるすべての宣伝素材について、本人と妻のマーシャに確認を取っていたと反論。米Colliderによると、カッツェンバーグは関係修復のため、100万ドル相当とされるピカソの絵をロビンに贈った。

しかし、非を認める言葉がないままの贈り物は、謝罪にはならなかった。友人のコメディアン、エリック・アイドルは、絵の複製を制作し、テレビで燃やしてしまえとロビンに提案したという。

確執は続編にも影響した。1994年のビデオ作品『アラジン ジャファーの逆襲』とテレビアニメ版では、『ザ・シンプソンズ』のホーマー役で知られるダン・カステラネタがジーニーの声を代わりに担当している。

新たなトップの謝罪、そしてジーニーの帰還

状況が動いたのは1994年。カッツェンバーグがディズニーを去り、後任の映画部門トップに就任したジョー・ロスが、公の場でロビンに謝罪した。

「ロビンとは、そうしないという明確な取り決めがありました。にもかかわらず、私たちはそれをやってしまった。お詫びします」

この謝罪を受け入れたロビンは、1996年の『アラジン完結編 盗賊王の伝説』でジーニー役に復帰。2009年にはディズニーへの功績をたたえる「ディズニー・レジェンド」にも選ばれ、両者の関係は修復された。

2014年にロビンが亡くなったあとも、ジーニーの声は特別な存在であり続けている。2023年には、ディズニー創立100周年を記念した短編アニメーションに、ロビンの声によるジーニーが再び登場した。

普段の100分の1にも満たない出演料と、たったひとつの約束。その舞台裏を知ると、あの陽気なジーニーの声が少し違って聞こえるかもしれない。

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