1. トップ
  2. エピソード
  3. すぐに芝居だと気づいた俺が、恋人の友人に帰ってもらった事情→テーブルに置いた紙袋の中身

すぐに芝居だと気づいた俺が、恋人の友人に帰ってもらった事情→テーブルに置いた紙袋の中身

  • 2026.11.6
ハウコレ

ソファの端に座る男の顔を、俺は知っていました。恋人がスマホで何度も見せてくれた、大学のゼミの集合写真に写っていた顔だったのです。

細長い紙袋の持ち手を何度も握り直しながら、インターホンを押しました。付き合って5年になる恋人の部屋に来るのに、こんなに緊張したのは初めてです。袋の中には、花束と小さな箱が入っていました。

ソファの端にいた男

ドアを開けた恋人の後ろに、男が1人座っていました。
その顔には、見覚えがあったのです。今でも相談に乗ってくれるゼミの友人だと、恋人がよく話していた人です。
「紹介するね。新しい彼氏」
恋人の話し方は、いつもより少し早口でした。
恋人の友人は「どうも」と頭を下げました。その下げ方がぎこちなく、俺にはすぐに分かったのです。これは、恋人が頼んだ芝居なのだと。

5年分の返事

芝居だと気づいても、怒りは湧いてきませんでした。思い当たることがあったからです。
付き合って5年、恋人に将来の話をされるたびに、俺は「そのうちね」と流してきました。恋人は、俺の気持ちを確かめたかったのだと思います。
今日、その返事をするつもりでした。紙袋をテーブルに置いたのも、もう先延ばしにしないと決めていたからです。
けれど、その場面に恋人の友人を立ち会わせるわけにはいきません。芝居に付き合ってくれた人に、俺たちの話の続きを見せるのは違うと思ったのです。芝居を頼むほど恋人を追い詰めたのは、俺のほうでした。

ドアを押さえた理由

俺は恋人の友人に向き直りました。
「悪いけど、今すぐ帰ってくれる?」
恋人が「待って、これは」と言いかけましたが、「あとで聞く」とだけ返しました。説明を聞けば、恋人は謝り続けて、今日の話ができなくなる気がしたのです。
ソファのコートを取り、玄関でドアを押さえて差し出しました。恋人の友人が靴をつっかけて出ていくのを見送り、軽く頭を下げてドアを閉めたのです。閉まる直前に見えた恋人の友人の顔は、戸惑ったままでした。

そして...

部屋に戻ると、恋人はスマホを握ったまま立っていました。
俺は紙袋から花束と小さな箱を取り出し、5年分の返事をしたのです。恋人はしばらく箱を見つめてから、うなずいてくれたのです。
後日、恋人を通して、あの日の友人に謝りの連絡を入れました。返ってきたのは「おめでとうございます」という一言だけでした。
あのとき俺が本気で追い出したかったのは恋人の友人ではなく、5年間「そのうちね」と言い続けてきた自分のほうだったのです。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ