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ツアーバスに水上飛行機。ドミニク・ファイク、8週間で作った新作

  • 2026.11.2

「Babydoll」のリバイバル・ヒットで日本でも名前が広まったドミニク・ファイクが、3作目のスタジオ・アルバム『HOW TO QUIT SMOKING』を10月30日にリリースした。北米ツアーを回りながら、約8週間で全15曲を作り上げたという異例のアルバムだ。(フロントロウ編集部)

発売日を先に決めて、ツアー中に作る

フロリダ出身のシンガー・ソングライターで、ドラマ『ユーフォリア』シーズン2のエリオット役でも知られるドミニク・ファイク。2018年の楽曲「Babydoll」が今年3月に欧米のSNSで再び火がつき、Spotifyのグローバル・チャートで1位まで上りつめたのは記憶に新しい。

その勢いのまま、彼は今年8月に思い切った手を打った。発売日をわずか2か月後に設定した全15曲のアルバムを、まだ曲ができていない段階で各配信サービスに登録。北米ツアー「Comedy Tragedy Parody」と並行して、リアルタイムで制作を進めると宣言したのだ。テクノロジーで“完璧な”音が簡単に作れる時代に、あえて逆を行き、制作の邪魔になる自分の一面を手放すことが狙いだった。

ドミニク・ファイクのアルバム『HOW TO QUIT SMOKING』のジャケット写真
画像提供:ソニー・ミュージック

スタジオはホテルの一室と『ツイン・ピークス』のダイナー

曲づくりの現場になったのは、ヴァージニア・ビーチのホテルの部屋、アルバカーキからラスベガスへ向かうツアーバス、バンクーバー上空を飛ぶ水上飛行機、そしてシアトル郊外にある『ツイン・ピークス』のダイナー。移動の合間に曲と映像を作り、旅先の景色や出会いを「Wallflower」「Small Town」「Pangea」といった曲に落とし込んでいった。

各地で合流した仲間も作品を支えた。完成間際に飛行機で駆けつけた人もいれば、数週間ツアーに同行した人もいる。クレジットにはGrace Ives、Kevin Abstract、Danny Brownらが並ぶ。

当初は10月上旬に出す予定だったが、ロサンゼルス公演でファイクは、アルバムが「想像していた以上に大きなものになった」と語り、発売を3週間延ばすと発表した。その後テキサス州のソニック・ランチで曲を絞り込み、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオで仕上げ。完成から数日後に世に出たのが今作だ。

最後に収めたのは、刑務所からの電話

アルバムの最後を飾るのは、ラッパーのテイ・Kが刑務所からかけてきた電話の会話。テキサスでの制作の終盤、「White Keys」の制作にも関わったジョン・カニンガムのもとにかかってきたこの電話でテイ・Kと知り合ったファイクは、自分が築いてきた生活や抱えている葛藤を打ち明けた。それに対してテイ・Kが返した言葉は、「自分の中の子どもの心を大切に。すべてが学びになる。すべてが素晴らしいんだ」。“禁煙のしかた”と名づけられたアルバムは、そんなやりとりで幕を閉じる。

発売に先がけて、ファイクは公式サイトに24時間配信のチャンネル「Separate Street Network」も開設し、ツアー中に撮りためた映像をもとにした番組やコンサート・フィルムを流している。来年2月9日のデュッセルドルフ公演からは、観客との距離の近さを意識したヨーロッパと英国の単独公演がスタートし、3月6日のマンチェスターCo-op Liveまで続く。

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