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「外食のほうがマシ」と言った彼の帰りが遅くなった数日後、定休日の私の店の厨房にいたのは

  • 2026.11.3
ハウコレ

定休日の店に明かりがついていて、厨房には人影が2つありました。カウンターに置かれた皿の前で、私はスプーンを持ったまま彼の顔を見上げました。

店ののれんを下ろして家に帰ると、その日も台所に立ちました。小さな洋食屋を開いて5年、家で料理をするのも楽しみの1つのつもりでした。フライパンを温め始めたところで、ソファの彼が顔を上げます。

フライパンの前で言われたこと

「外食のほうがマシ」
同棲している彼の声は、いつもより低く聞こえました。
店で出す料理と家の料理は、まったく別のものだと思って作ってきました。
「お店の料理より、家のごはんがいいって言ってたよね」
私がそう返すと、彼は言いました。
「今日は外で食べよう」
彼は立ち上がって、上着を手に取ろうとしています。
家の料理を、外で食べるものと比べられたのが悔しくて仕方ありませんでした。
「じゃあ、1人で行ってきて」
私はそのままフライパンに卵を落としました。
彼は上着をソファに戻し、出かけずに黙って座っていました。
2人分作ったオムライスは、少しも味がしなかったのです。

合鍵を借りたスタッフ

次の日、店で働いてくれている年下のスタッフに呼び止められました。
「閉店後に、厨房を少し使わせてもらえませんか。仕込みの練習がしたくて」
熱心な子なので、喜んで合鍵を渡したのです。
その週、彼の帰りが遅い日が2回ありました。
理由を聞いても「ちょっとね」と言うだけで、目を合わせようとしません。
あの言い合いから、家で料理をする手も重くなっていました。
定休日の朝、スタッフからメッセージが届きます。
「定休日ですけど、お店に来てもらえますか。見てほしいものがあります」
店に着くと、閉めたはずの店内に明かりがついていました。
ガラス戸越しに見える厨房に、人影が2つ並んでいたのです。

厨房から出てきた皿

戸を開けると、スタッフがこちらに気づいて会釈をしました。
その隣で私のエプロンを着けていたのは、彼でした。
彼は厨房から皿を1枚持って出てきて、カウンターの私の前に置きます。
店で一番よく出る、オムライスでした。
卵は少し破れていて、ソースのかけ方も私のものとは違います。
「食べてみて」
スタッフは笑顔のまま、厨房の奥へ下がっていきました。
外食のほうがマシと言った人が、私の店で私の料理を作っている。
状況がうまくのみこめないまま、私は皿を見つめるばかりでした。

そして...

カウンターの向こうで、彼は私のエプロンのひもをいじっていました。
帰りが遅かった2回の理由も、スタッフが合鍵を借りた理由も、まだ誰からも聞いていません。
スプーンを手に取ると、彼が小さく息を吸うのが分かりました。
一口食べると、店の味に近いのに、どこか違います。
「ソースのかけ方が違う」
私の口から出たのは、それだけでした。
家のごはんより外食がいいと言った彼が、なぜこの店の厨房に立っていたのでしょうか。

(30代女性・飲食店経営)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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