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【小児科医が警告】うちの子遅い? トイトレの焦りが招くまさかの事態と3つの開始サイン

  • 2026.11.1

「周りの子はもうオムツが外れたのに、うちはまだ……」

「SNSを見ると、早くからトイトレを始めている人が多くて焦る!」

2歳を過ぎると、避けては通れないのが「トイレトレーニング(トイトレ)」。しかし、育児書やネットの情報に振り回され、焦って始めると、親子でボロボロになってしまうことも少なくありません。

そこで、教育系YouTube公式チャンネル「ボンボンアカデミー」のいっちー&なるが、親子が笑顔でステップアップできる「トイトレ」の極意を、武蔵小杉森のこどもクリニック院長・大熊喜彰先生にお伺いしました。

医学的な視点から見た「開始のサイン」や「自己肯定感を高める接し方」、そして意外と見落としがちな「環境設定」まで、今日から実践できるヒントが満載です。

「2歳になったら開始」はもう古い? 年齢ではなく「3つのサイン」で判断しよう

なる……ネットや育児書では「2歳」がひとつの目安として語られがち、と聞きました。実際のところを教えてください!

大熊先生:子どもの発達には大きな個人差がありますので、年齢で区切る必要はまったくありません。

むしろ、「何歳までに」と決めてしまうとその子自身も辛いですし、親御さんにとっても「リミットの決まっている仕事」のように追い詰められてしまいます。

まずは年齢という枠を取り払ってもらうのが、トイトレ成功への第一歩です。

また、季節によって進捗が変わることもありませんので、夏でも冬でも、その子のタイミングでスタートするのが良いでしょう。

では、具体的にいつ始めたら良いのでしょうか。大熊先生が提唱する「これがそろったらGO!」という3つの身体的・精神的なサインをご紹介します。

【サイン①】おむつが濡れていない時間(ドライタイム)が「2時間以上」ある

大熊先生:おしっこの間隔が2時間以上あくということは、膀胱(ぼうこう)がおしっこを溜めておけるくらい成長してきたという証拠です。

「最近、おむつが濡れていない時間が増えたな」と気づいたら、まずは「おしっこが溜められてすごいね!」とお子さんの体の成長をほめてあげましょう。

【サイン②】言葉でのコミュニケーション(意思疎通)ができる

大熊先生:「おしっこ」「うんち」「出た」「スッキリした」など、自分の感覚や要求を言葉や身振りで相手に伝えられることも目安になります。

ただし、言葉の発達が早いか遅いかも人それぞれ。年齢が2歳を過ぎていても、コミュニケーションがまだスムーズでなければ、焦る必要はありません。

【サイン③】自分でズボンやパンツの「上げ下げ」ができる

大熊先生:トイレに行くためには、ある程度自分で身の回りの動作ができる必要があります。衣服の着脱に興味を持ち、自分でやろうとする意欲が見られるかどうかも重要なポイントです。

アメリカでは「2歳半(生後30か月)」が目安。4歳でも全然OK!

大熊先生:上記の3つの条件が揃いはじめるのが、おおよそ2歳半(生後30か月)くらいです。それが日本ではいつの間にか「2歳になったら」と前倒しで言われるようになってしまったようです。

ちなみにアメリカなどでは「生後30か月ころ」が一般的な目安とされていますし、さらにそこから大きな個人差があります。

小児科の現場では、4歳でトイトレ中というお子さんも珍しくありません。

「2歳から遅れているから病気かも?」と不安になって来院される親御さんもいますが、僕ら医師からすれば「全然大丈夫、問題ない!」という感覚です。

いっちー……早く始めるメリットやエビデンス(医学的根拠)って、あるのでしょうか?

大熊先生:早く始めたほうが良いという医学的なエビデンスはありません。むしろ、体の機能が追いついていないのに早くスタートさせられた子どもは、「できないのに怒られる・親が悲しそうな顔をする」という経験を重ね、トイレ自体が嫌いになってしまいます。

また、言葉で「おしっこ」「出た」などと伝えられるようになるには、普段からの保護者の声がけ(インプット)が欠かせません。

無言でおむつを替えるのではなく、「おしっこが出てスッキリしたね」「さっぱりして気持ちがいいね」と、心地よさを言語化して伝えてあげることが、子どもの言葉のレッスンになり、ひいてはトイトレの土台へと繋がっていきます。

その上で、3つのサインが揃うのをゆっくりと待っていただければと思います。

「進まない焦り」を解消するコツ:比べるなら「昨日の我が子」

なる……トイトレが順調に進む子と、なかなか進まない子の違いってあるのでしょうか? 教えてください!

大熊先生:おしっこやうんちをコントロールする能力には、内臓(臓器)の大きさ、神経の発達、そしてホルモンの分泌など、目に見えないさまざまな体内機能が複雑に関わっています。

これらは外側から見えないため、どうしても「やる気」の問題にされがちですが、純粋に体の成熟スピードの差なのです。

それでも多くの子どもたちが小学校に上がるころには自然とできるようになりますので、周りの子と比べる必要はありません。比べることで生まれるのは不幸だけ。もし比べるのであれば、「昨日の我が子」と比べてあげてください。

⚫「昨日まではトイレに誘っても嫌がったのに、今日は行けた」

⚫「座るだけだったけれど、楽しそうにしていた」

そんな「小さな一歩」を喜ぶことが、親の心の安定にも繋がります。

いっちー……トイレトレーニングでは、親のほうが、つい焦ったり、イライラしてしまうことも多いですよね…

大熊先生:親の焦りが子どもに伝わると、子どもの自尊心(自己肯定感)が下がり、かえってトイトレが後退(退行)してしまうというエビデンスがあります。

子どもだって、悪気があって漏らしているわけではありません。それでも「親が悲しそうな顔をしている」「怒っている」と感じると子どもは、「自分が悪いのかな」と罪悪感を抱き、それがストレスになって余計に排泄がうまくいかなくなるという悪循環に陥ります。

しかし、過去に「つい大きな声を出して驚かせてしまった」「失敗したときにネガティブな反応をしてしまった」という経験があっても、落ち込みすぎる必要はありません。

親も人間ですから、完璧にはコントロールできないものです。 時間はかかっても、少しずつポジティブな記憶で上書きしていけばリカバーできます。トイトレは、子どもだけでなく「親のコントロールのトレーニング」でもあるのです。

おしっこはできるのに、うんちはトイレでできない!?

なる……トイトレ「あるある」の筆頭が、「おしっこはトイレでできるのに、うんちはおむつでないとできない」問題。なぜ、うんちの方がハードルが高いのでしょうか?

大熊先生:端的に言うと、うんちを出すという行為は、お腹にぐっと「力を込める(いきむ)」作業でありながら、出口である「肛門は緩める」という、相反する動作を同時に行う高度なテクニックなのです。

言ってみれば、おしっこよりもやや難易度が高い。ですから、僕はうんちが先にできるようになったという話は聞いたことがありません。

また、子どもがうんちに対して恐怖心やネガティブなイメージ(トラウマ)を持ってしまう大きな原因に「便秘」があります。

【うんちができない悪循環】

うんちが硬くて出すのが大変!(お尻が切れることも)

↓

「うんち=痛くて怖いもの」と認識する

↓

トイレに行くのが嫌で、がまんする

↓

さらにうんちが硬くなり、もっと痛くなる(ダークサイドへ…)

一度この恐怖のループ(ダークサイド)に入り込んでしまうと、子どもは「うんちは出ない」と嘘をついてまでがまんするようになってしまいます。

トイトレを始める前に、まずは「便秘の解消」を!

大熊先生:もし1歳前後でお子さんのうんちが硬く、出すのに何十分もかかっていたり、コロコロの状態だったりするようなら、トイトレの前にまずは小児科を受診し、便秘をしっかりと治してあげてください。

大人の便秘は根深いですが、子どもの場合は成長に伴って体が大きくなり、腸が太くなり、運動量が増え、水分摂取や食物繊維の摂取が増えることで、成長とともに治っていく可能性が期待できます。

病院でお薬を処方してもらい、「うんちがスルスルとラクに出る心地よさ」を経験させてあげる。きちんと「土台」を整えることが、結果的にうんちのトイトレの近道になります。

重要なのは「足がつくこと」 おしっこ・うんちが出やすい「正しい姿勢」とは

大熊先生に、トイトレの成功に近づくトイレ環境や正しい姿勢について教えていただきました。

<環境>

⚫補助便座を使う:子どもの小さな体が便座に落ちそうになると、怖くてリラックスできません。

⚫踏み台(ステップ)を設置する:足が宙ぶらりんだと、お腹に力が入りません。しっかり足がつく高さの台を用意しましょう。

<姿勢>

⚫足をしっかり床(踏み台)につける:体が安定し、恐怖心が和らぐ。しっかりといきめる。

⚫「考える人」のような前傾姿勢:直腸から肛門への動線がまっすぐになり、スムーズに出る。

大熊先生:理想的な姿勢は、足がしっかりと床(踏み台)につき、座ったときに少し膝が腰より上に上がっている状態です。いわゆるロダンの「考える人」のような姿勢ですね。

この姿勢になると、直腸と肛門の角度がまっすぐになり、腹圧がしっかりとかかって、うんちが最も出やすくなります。

トイレに行けた、座れただけで100点!

いっちー……トイトレが進まないと、つい親も落ち込んでしまいますよね。親子で前向きに取り組むための工夫を教えてください!

大熊先生:大切なのは結果ではなく「行動」をほめること。トイレに行って、便座に座れたら、それだけで大成功、100点満点です。

トイレの壁にお気に入りのキャラクターを貼ったり、明るい雰囲気にしたりして、まずは「座れたね」「トイレまで来られたね」とほめる。そうやって「できたという自信の貯金」を少しずつ子どもの心に貯めていってあげてください。貯金が貯まれば、ある日突然、自然とできるようになります。

他の子と比較するような「みんなできているよ」という声がけは避け、「パパもママもここでしているよ」「大きくなったらここでスッキリするんだよ」と、ポジティブなイメージを伝えてあげると良いと思います。

「夜のおむつ」は昼のトイトレとは全くの別物!

最後に、多くの親御さんが悩む「夜間のおむつ」について教えてもらいました!

大熊先生:お昼のトイトレと、夜のおむつ外れ(いわゆる夜尿症に関わる部分)は、完全に別次元のものだと思ってください。

お昼のトイトレは、脳で尿意を感じて、意識的に筋肉をコントロールする練習です。しかし夜間は、おしっこを濃くして量を減らす抗利尿ホルモンがしっかり分泌されているか、そして朝まで膀胱という風船を大きく広げて溜めておけるか、睡眠の深さという自律神経やホルモンのコントロール(無意識の領域)の話になります。

本人の努力や親のトレーニングでどうにかできる部分ではないので、夜間にお漏らしをしてしまっても、絶対に怒ったり指摘したりしないであげてください。

昼間はできるのに……と思うかもしれませんが、身体のシステムが違うのです。「朝まで濡れずに過ごせたらラッキー」くらいの気持ちで、夜は安心しておむつに頼りましょう。

【大熊先生から読者の皆さんへメッセージ】

大熊先生:じつはこのお話をいただいてから取材の日まで、私は小さな違和感を感じていました。その正体は、「トレーニング(訓練)」という言葉でした。

「トレーニング」という言葉には、「努力でなんとかなりそう」「積み重ねれば克服できる」というニュアンスがありますよね。しかしトイレとはそのようなものではありません。何度も失敗するのは当たり前。

進捗はあまり気にせず、便秘などのトラブルがあれば気軽に小児科を頼りながら、一歩進んで二歩下がるくらいのゆったりとしたペースで、我が子の成長を見守ってほしいと思います。

【ボンボンアカデミーいっちー&なるが、小児科医・大熊先生に取材する記事の後編では、「トイトレ応援ソング」制作のために、トイトレ難関の「うんち」や外出時の悩みに迫ります。心を軽くする先生の言葉や楽曲誕生の裏側をご紹介。どうぞお楽しみに!】

取材・文/小川聖子

撮影/市谷明美

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