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「元カノのほうが料理上手だったな」と言った俺が、数日後、彼女に隠れて製氷皿で凍らせていたもの

  • 2026.11.2
ハウコレ

フライパンの中で、野菜炒めが市販のたれの色に染まっていきました。彼女にごはんを作ってもらえなくなった、最初の日のことです。においは昔よく食べていた味にそっくりで、この先、彼女の肉じゃがが恋しくなるとは、まだ思っていませんでした。

軽い気持ちで口にした一言

きっかけは、彼女の肉じゃがを食べていたときの俺の一言でした。

「元カノのほうが料理上手だったな」

深い意味はありませんでした。元カノの料理は味がはっきりしていて、それをふと思い出して口に出しただけ。

でも彼女は自分の器を持って立ち上がり、流しに置いてから言いました。

「じゃあ明日から、自分のごはんは自分で作ってね」

「え、そこまで言う?」

俺はそう返して笑ってごまかそうとし、彼女の顔を見てやめました。冗談で済む雰囲気ではなかったのです。

何を作っても届かない味

次の日から、彼女は自分の分だけを作るようになりました。

俺は市販のたれで野菜炒めを作りました。元カノがよく作ってくれた味に近く、これで十分なはずでした。ところが2日、3日と続けるうちに、どれも同じ味に感じてきます。

食べたくなるのは、あの日の彼女の肉じゃがのほうでした。見よう見まねで作っても、しょうゆと砂糖の味しかしない。何が違うのか分からないまま冷蔵庫を開けて、奥の瓶に目が留まりました。

彼女が週末に昆布とかつお節でとっている出汁。あの肉じゃがの味の土台は、これだったのです。

製氷皿に貼ったメモ

勝手に使ったと知られたら、あの一言がもっと格好悪くなります。正直に頼む勇気が出ず、彼女がお風呂に入っている間に自分の分を作りながら、少しずつすくって製氷皿でこっそり凍らせました。減ったと気づかれない量だけです。氷は保存袋に移し、製氷皿はラップで何重にも包んでメモを貼りました。

「さわらないで」

それから何日かして、彼女が製氷皿を取り出すのがソファから見えました。俺は慌てて声をかけました。

「それ、まだ開けないで」

振り返った彼女が聞きました。

「何が入ってるの?」

「今度ちゃんと言うから」

俺はそれだけ返しました。ちゃんと作れるようになってから話したい。そう思って、ソファに座り直しました。

そして...

凍らせた出汁を溶かして試すうちに、ようやく近い味になりました。次の休みの日、その肉じゃがを彼女の前に置き、頭を下げました。

「元カノのほうが上手なんて、言える立場じゃなかった」

彼女はひと口食べて、少し笑いました。

出汁を勝手に使ったことを打ち明けたのは、その夜です。製氷皿のラップを外して見せると、彼女はもう一度笑いました。

「次は出汁から自分でとってね」

その次の休み、俺は昆布を買ってきました。彼女は今も、自分の分しか作っていません。製氷皿には、また氷が並んでいます。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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