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原稿を読み終えるころには「本の完成形ができていた」ほどの面白さだった。いま明かされる名作絵本「あらしのよるに」誕生の驚きの瞬間。

  • 2026.10.31
cocreco左:あべ弘士さん 右:きむらゆういちさん

2026年4月25日、テンションあがる「街ナカ」ホテル「OMO7旭川 by 星野リゾート」で、世界的なベストセラー絵本「あらしのよるに」の著者、きむらゆういち氏とあべ弘士氏によるトークイベントが開催されました。

新シーズンもスタートし、ますます目が離せない展開になっていますが、制作秘話や著者それぞれの思いなど熱く語り合いました。

司会(OMO7旭川広報担当者):

「あらしのよるに」は、講談社出版文化賞や産経児童出版文化賞など数々の賞を受賞し、その後映画や舞台さらには歌舞伎など、さまざまな表現へと広がり続けてきました。

子どもたちのための物語としてはもちろんですが、大人になってから読み返し、言葉の奥にある深いテーマに改めて気づかされたという方も多いのではないでしょうか。

きむらさんが綴る言葉とあべさんが描く力強い絵、このお二人の出会いから、どのようにして唯一無二の世界が生まれたのか、本日はその舞台裏や作品に込められた思いなど、ここでしか聞けない話をじっくりと伺っていきたいと思います。

物語世界がとりもつ同世代作家の縁

──あべさん、きむらさん、お二人の出会いは?

きむらさん(以下敬称略):

まず僕の原稿があり、絵をどうしようと初代の編集者と考えていました。そこであべさんの『ゴリラはごりら』(作 工藤直子、絵 あべ弘士 童話屋)という本を見つけて、「あ、この人いいんじゃない」ってことで頼むことになったのです。ところが次に編集者と打ち合わせしたら、「あべさんに断られました」という話でした。

cocreco「あらしのよるに」シリーズ

あべさん(以下敬称略):

飼育係として働いていた旭山動物園でお昼ご飯を食べていたら編集者から電話があり「きむらゆういちさんという方が文を書いたんですが、絵を描いてくれませんか」って。でもね、原稿がきてないんだもの、判断できない。きむらゆういちという人も知らなかったし。

「原稿読んでから描くか描かないか決めます」といいました。だから断ったんじゃないよ。それで原稿が来たんですね。きむらさんの手書きの原稿用紙で。第一印象は、「下手な字だな~」(笑)。2番目の印象は「こっれは、面白いな~!」です。

繰り返し読んでいるうちに、どんどん頭の中でラフを描いていたの。読み終えるころには完成形ができていた。そのくらい面白かった。

きむら:

原稿用紙の裏に絵ができていて、それが本チャンの絵本の絵とほとんど変わってなかったんです。これには驚いたけど、こんなに楽な仕事はないよね(笑)。

──本当に、お互い知らなかったのですね

きむら:

以前に旭川に遊びに来たとき子どもの具合が悪くなり、書店の「こども冨貴堂」の2階で休ませてもらったことがあるんです。そのときお店の方に、あべさんの最初の作品『旭山動物園日誌』(出版工房ミル)という本をいただいて「おもしろいなあ」と思いました。でも絵は下手だなあって(笑)。

また、小学館の「おひさま」という雑誌に、ゾウの話を書いてほしいという依頼があり、編集者がゾウの絵のすごい上手い人がいるっていうので、見てみたら「わっ、すげえな」って思って、名前を見たらあべさんという人で──。

そして『あらしのよるに』のあべさん。当時はその3人とも別の人だと思って仕事していたんです。僕は名前覚えないから(笑)。同じ人だっていうのはだいぶ後になってわかるんです。『あらしのよるに』の画稿ができてみて、あべさんの第一印象は、「めっちゃ頭の良い人」。だって、絵描きがデザイナーのするようなことまでやってのけて。

機転を効かせた技法で描かれた「暗闇の中のガブとメイ」

cocreco『大型版 あらしのよるにシリーズ(1) あらしのよるに』より 絵:あべ弘士

あべ:

技法は簡単なんですよ。この話はヤギとオオカミ2人のお芝居。上手からヤギ、下手からオオカミがきて、真っ暗闇の中、2人で会話をする。舞台で言えば一幕一場暗転。それどうやって描こうかなと考えたんですね。普通に線画したものをコピー機で白黒反転にする。

そしたら線で書いたところが白で出てくるんですよ。その上にマーカーで色をつける。真ん中をカッターで切って真ん中を白地にして、そこに文章を入れるようにしました。

ほとんどの人は、まずクレヨンで色を塗ってその上に黒いクレヨンで全体を塗りつぶしてペン先でスクラッチしたと思っていますね。それじゃあ何色が出てくるかわからないし、大変すぎるよ!

種を越えた友情は永遠のテーマ

──なぜオオカミ(ガブ)とヤギ(メイ)にしようと思ったのでしょう?

cocreco『新あらしのよるにシリーズ(2) あたらしいかぞく』より 絵:あべ弘士

きむら:

食う、食われるというテーマでは、僕の中で食べるほうはみんなオオカミ。オオカミが出てくる本を何冊も出しています。

『あらしのよるに』は暗闇の話とはいっても、稲光があったり、シルエットが出たり、触ったりすると相手がばれて話がすぐに終わってしまうので、何にしようか考えました。ウサギじゃ小さい、ヒツジじゃ毛深い、ブタじゃ丸いし──で、ヤギが一番バレない。

──今回、あべさんと打ち合わせしたときに、どの動物にしたってお互い気づくだろうってご指摘がありました。

あべ:

動物園関係者からは考えられないんだな。そこは素人と言わせてもらおう(笑)。

だから物語(フィクション)であるわけだけど。本来、ヤギもオオカミも目はいいし、鼻も利きますからね。鼻風邪ひいたくらいで相手がわからなくなることはないよ。

──あべさんの描くオオカミはオオカミらしさがあるというか。ちゃんと描いていますね。最初に文章を読んで、どういう見た目にしようか構想はありましたか?

あべ:

ずっと動物園で見てきたし、野生も見ていますから、ちゃんと描かなきゃいけないと思いがあって、あんまり噓では描けません。いわゆる人間のような2本足の擬人化ではなく、生態はきちんと描くようにしています。最初の『あらしのよるに』シリーズの3巻目までは軽い話です。だから絵のタッチも軽い。

で、話が進むにつれ、どんどん重い話になってくるのね。こうだから筆使いに勢いが出て絵も重厚化しています。1巻から7巻まで読み比べたら、絵の進化というか変遷が面白いから、ぜひその変化を見てほしいな。

中でも私が一番好きな巻は『ふぶきのあした』。これはやっぱり北海道を知っている作家でないと描けないですよね。

cocreco『大型版 あらしのよるにシリーズ(6) ふぶきのあした』

きむら:

旭川空港からこのホテルに来る途中、山が見えてね、まだ雪をかぶっていて「あれは『あらしのよるに』に出てくる山だな」って見ていました。

記憶喪失のオオカミを描いたのはあべ弘士だけ

あべ:

『ふぶきのあした』では、吹雪の中、ガブとメイはあの山(大雪山)をスキーも履かずに越えるんですよ! しかも雪崩が起きてその下敷きになるんです。生還できないですよ、絶対に生き還れない。きむらゆういちは雪崩を知らないんだな(笑)。

大雪山でも人間が雪崩に巻き込まれるケースがあるけど、ビーコンやGPSがあって助かることはありますね。でも、ヤギもオオカミも、ビーコンもGPSも持ってないしね(笑)。そして本には「完結編」って書いてある。だからもうこれで終わりだと思っていました。

*ビーコンとは

携帯型無線機。雪崩にあった人の位置を、電波で仲間に知らせることができる。

cocreco『大型版 あらしのよるにシリーズ(6) ふぶきのあした』より 絵:あべ弘士

きむら:

もう本当に終わらせるつもりで書いたんです。

でも、読者の方から「完結編の続きはいつ出るんですか」と聞かれて、それでも完結したんだから、書かないぞ! と思ったんですが、たまたま小学校4年生の子どもから「あの雪山からガブが這い出してくる。と信じています」というメールがあって、最初はそれでもふたりの関係は書き切ったから、もう書かないと思いましたけど、その続きが頭に浮かんじゃって。

実はまだ書いてないことがひとつあった。あのふたりは力を合わせて困難を乗り越えてきたんでしょ。でも気持ちが変わるっていうこと。生きてれば気持ちが成長するっていうのもあるし、一緒に成長していけばいい。

でも、片方だけ成長しちゃうこともあるし、ふたりの気持ちにズレがあることもある。それを次の巻で「記憶喪失」というテーマで書こうと思い立ちました。

あべ:

物語を作る人は勝手に書けていいよ。でもさ、記憶喪失のオオカミってどうやって描くの? そして後には記憶喪失を治さなくちゃいけないんですよ。後で治るよね、記憶喪失。ほんと、絵描きは大変ですよ~(笑)。

ガブとメイの性別はどちらもオス

cocreco左・メイ 右・ガブ 絵:あべ弘士

あべ:

これはね、多くの人が勘違いしていると思うんだけど、オオカミのガブとヤギのメイはどちらもオスなんですよ。だから友情の話なんです。

きむら:

読者に聞くと半々くらいじゃないかな。

あべ:

まあ結局オスメス関係なく動物だもんね。いやでもね、話がだんだん進んでいくと、どうもね、恋愛ものに思えてくるんだ。だって最後はね、心中ですよ。だから絵もどうやって心中を完結させるかっていうふうに激しくなっていくんです。

──ますます内容が気になりますね。この続きは元編集者・野口満之氏を交えてのトークになります。

文:五十嵐 千恵子

講談社コクリコサイトでは、〈トークショー後半〉の様子も公開中です。ぜひ、記事末尾リンクより続きもお楽しみください。

アニメーションと朗読で心温まる「あらしのよるに」の世界観に浸る

旭川市は行動展示で有名な旭川市旭山動物園や、春夏秋冬で全く異なる表情を見せる豊かな自然が大きな魅力のひとつである地域です。

その魅力をOMO7旭川に宿泊している方にも感じてほしいという思いから、「動物」と「四季」をテーマにしたローカルリズムナイト「月灯りと動物たちの物語」を、2025年11月11日より開催しています。

その中では、旭川出身の絵本作家あべ氏と、きむら氏の世界的ベストセラー絵本「あらしのよるに」を動画にして上映しています(※動画は、OMO7旭川のご宿泊者および、動画上映会場のカフェ&バルのご利用者様にご鑑賞いただけます)。

〈ローカルリズムナイトとは〉

都市ホテルでの夜は夕食を済ませたら寝るだけになりがちです。しかし、OMOは「テンションあがる『街ナカ』ホテル」をコンセプトに、ホテルに戻ってきてから寝るまでの時間も、素敵なひとときを過ごしてほしいと考えています。そこで2024年より、夜のイベント「ローカルリズムナイト」を開催しています。

この名称は「ローカル Local」と「リズム Rhythm」を組み合わせた名称でその街が持つ独自の雰囲気を肌で感じながら楽しめるイベントです。各施設では、街からインスピレーションを受けた空間演出や、その土地ならではの文化体験、飲食提供を通年で行っており、宿泊者は誰でも参加することができます。

〈OMO7旭川(おも) by 星野リゾートとは〉

「OMO」は星野リゾートが全国に展開する「テンションあがる『街ナカ』ホテル」。街をこよなく愛するスタッフが地域の方々と仕掛ける、新感覚のホテル。

思いもよらない魅力に出会い、知らず知らずのうちにその街までお気に入りに。現在18施設を展開。2026年1月に開業した「OMO5横浜馬車道」に続き、4月には「OMO7横浜」が開業しています。

cocrecoOMO7旭川 by 星野リゾート
cocrecoOMOブランドマップ

「新あらしのよるに」シリーズ

ガブとメイの物語は、まだまだ終わりません。「食うもの」と「食われるもの」の壁を超えて友情を育んだ2匹が、新しい仲間とともに「本当の家族」になれるのか。物語のテーマは、友情から家族の物語へと変化しています。前シリーズ同様子どもも大人も笑って泣けるストーリーです。

新あらしのよるにシリーズ3『ちょっとあぶないおともだち』(仮題)は、2026年冬刊行予定、乞うご期待!

「新あらしのよるに」シリーズ 1巻&2巻(3巻は、2026年冬刊行予定)

cocreco新あらしのよるにシリーズ(1) あいことばはあらしのよるに
cocreco新あらしのよるにシリーズ(2) あたらしいかぞく

「大型版 あらしのよるに」シリーズ 全7巻

cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(1) あらしのよるに
cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(2) あるはれたひに
cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(3) くものきれまに
cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(4) きりのなかで
cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(5) どしゃぶりのひに
cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(6) ふぶきのあした
cocreco大型版 あらしのよるにシリーズ(7) まんげつのよるに
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