1. トップ
  2. エピソード
  3. 「洗濯物を干さないでくれ。見栄えが悪いから」ベランダに口を出してきた大家さん。だが、不動産会社が告げた事実

「洗濯物を干さないでくれ。見栄えが悪いから」ベランダに口を出してきた大家さん。だが、不動産会社が告げた事実

  • 2026.11.1
「洗濯物を干さないでくれ。見栄えが悪いから」ベランダに口を出してきた大家さん。だが、不動産会社が告げた事実

玄関先で言われた、思いもよらない注文

今のアパートに引っ越して、1年ほどがたった頃のことです。

アパートの近くには、大家さんの家が建っていました。

ある日の昼、玄関のチャイムが鳴りました。ドアを開けると、年配の大家さんが立っていました。

「ちょっといいかね。ベランダのことなんだけど」

何か問題でもあったのかと思い、話を聞くと、思いがけないことを言われました。

「洗濯物を干さないでくれ。見栄えが悪いから」

「え、洗濯物、ですか?」

「そう。柵に毛布を掛けるのもやめてほしいんだよ。うちの窓から見えると、どうしても気になってね」

どうやら、大家さんは自宅から見えるアパートの外観を気にしているようでした。

「でも、外に干せないと、ちょっと困るんですが…」

「まあ、とにかく気をつけてくれると助かるよ」

そう言われ、私はそれ以上何も言えませんでした。大家さんが帰ったあと、とりあえずベランダに干していた洗濯物を取りこみました。

ところが、それからというもの、大家さんはアパートの前に立ち、各部屋のベランダを順番に見上げて回るようになったのです。

ある日、部屋干しでは乾ききらなかったタオルをベランダの内側に掛けていると、下から声が聞こえてきました。

「そこのタオルも見えてるよ。言ったよね」

見下ろすと、大家さんがこちらを見上げていました。

「すみません。でも、部屋の中だけだとなかなか乾かなくて……」

「だから、見えるところには干さないでほしいんだよ」

「ベランダの内側でもだめなんですか?」

「大家としてはやめてほしいんだ。どうしても嫌なら、ほかを探してもらうしかないね」

そう言われてしまい、私は返す言葉がありませんでした。

部屋に戻った私は、入居時の契約書を引っぱり出して確認しました。

しかし、ベランダに洗濯物を干してはいけないという決まりは、どこにも書かれていませんでした。

契約書を確認した担当者の説明

このままでは生活に支障が出ると思い、私は部屋を紹介してくれた不動産会社に相談しました。

後日の昼、担当者が契約書を持ってアパートを訪ねてきました。

ちょうど大家さんが、いつものようにアパートの前でベランダを見上げていました。私は少し離れたところから、二人の話を聞いていました。

「洗濯物の件で、入居者の方からご相談がありまして」

担当者が切り出すと、大家さんは少し不満そうな顔をしました。

「ああ、あの部屋の人が相談したのか。私は見栄えが気になるから、やめてほしいと言っただけなんだけどね」

「そうだったんですね。ただ、契約書を確認したところ、ベランダで洗濯物を干してはいけないという決まりはありませんでした」

担当者は契約書を開きながら、落ち着いた口調で説明しました。

「でも、私のアパートなんだよ。見た目が気になるのは仕方ないだろう」

「お気持ちは分かります。ただ、今の契約内容では、普段の洗濯物まで干さないようにお願いするのは難しいんです」

大家さんは少し考え込むような表情をしました。

すると担当者は、もう一つ気になっていたことを伝えてくれました。

「それと、ベランダを見て回られていることで、入居者の方が不安に感じているようです。そちらも控えていただけませんか」

「いや、別に監視してるつもりじゃないんだけどね…」

大家さんはそう言って、口をつぐみました。

そのとき、上の階の窓から、ほかの部屋の住人がこちらをのぞいていました。大家さんもその姿に気づいたようで、一度そちらに目を向けると、それ以上は何も言わず、自分の家へ戻っていきました。

それ以来、大家さんがアパートのベランダを見回る姿は見かけなくなりました。

晴れた日の朝、私は久しぶりにベランダの柵に布団を広げました。

日差しを浴びてふくらんでいく布団を眺めながら、これまで当たり前にしていたことを、また気兼ねなくできるようになったのだと、ほっとしました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ