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「うちの子も愛想笑いしてる?」 中学受験塾講師も推す「心が軽くなる」児童書が話題

  • 2026.10.30
cocreco写真:graphica/イメージマート

中学受験塾で教室長をしているakiraです。物語文にふれる機会の多い仕事柄、中学受験入試問題に取り上げられそうな新刊『放課後死体クラブ(仮)』を読ませていただきました。

実は私、海外ドラマ『ウォーキング・デッド』全11シーズン全177話を完走したほどのゾンビもの好き。今回も読みながら、ついゾンビと戦う妄想をしてしまいました(笑)。

内容は、ホラー映画の“死体役”を本気で目指す、中学2年生の秘密の活動の物語。そのクラブの名前が「死体クラブ」といいます。

死体クラブにはルールが3つあり、

ルールその一 活動は週2回、月曜日と木曜日の放課後。

ルールその二 クラブの存在は、誰にも内緒。

ルールその三 学校では、お互いに口をきかない。

なんだか、ちょっとワクワクしませんか?

さて、どんなお話か、解説していきましょう。

『放課後死体クラブ(仮題)』はどんなあらすじ?

主人公の内海ひよりは、教室ではいつもにこにこしている「ふつうの子」。クラスの人気者グループの一員で、本当はあまり興味のないアイドルの話にも、「見逃したぁ」と大げさに悔しがって合わせています。

そんなひよりが気になっているのが、窓際の席でいつもオカルトの本を読んでいる由木さん。クラスでは周りから距離を置かれている子です。

ある日、由木さんから、思いがけないお願いをされます。「演技を教えてほしい」。実はひよりには、小さいころ児童劇団で、ある“有名な役”を演じた過去がありました。中学では目立ちたくなくて、誰にも話していなかったのに……。

由木さんの目標は、映画の中で「カンペキに死ぬこと」。大好きなホラー映画監督の次回作で、完璧な死体役を演じたいのです。演技を教えてもらうかわりに、死体役のテクニックを教える──。そんな取引から、ふたりだけの秘密のクラブが始まります。

正反対に見えるふたりが共有する秘密の時間

ひよりは、周りの空気を読み、波風を立てないように笑顔で過ごしています。本当はホラーが大好きなのに、教室ではそのことを口にしません。

一方の由木さんは、周囲にどう見られるかより、自分の好きなものを大切にする子。人と群れず、好きなことには一直線。その突拍子もない行動に、ひよりは何度も驚かされます。

みんなに合わせるひよりと、合わせることを選ばない由木さん。正反対に見えるふたりが、死体クラブという“ふたりだけの場所”で、少しずつ近づいていく。それが、この物語の大きな魅力です。

〔死体役の練習が、こんなにおもしろいなんて!〕

「息をしていないように見せるには?」

「まばたきを我慢するには?」

「自然に倒れるには?」

ふたりは大まじめに練習します。真剣にやればやるほどおかしくて、読んでいて何度も吹き出しそうになりました。

秘密のクラブには、なんとハンドサインまであります。棺の中で眠る吸血鬼のようなポーズ。最初は恥ずかしがっていたひよりがどう変わるのかも、ぜひ読んで確かめてください。

章のタイトルも「クラスルーム・オブ・ザ・デッド」「貞子・イン・ザ・パーク」など、ホラー映画を思わせるものばかり。冒頭では、ひよりの妄想によって授業中の教室が突然ホラー映画の舞台に変わり、さっそく引き込まれます。怖さ一辺倒ではなく、思わず笑える場面がたくさんあります。

愛想笑いの裏にある中学生のリアルな葛藤

ところが、笑いながら読み進めるうちに、ふっと胸に刺さる瞬間があります。例えば、ひよりが友達に合わせて愛想笑いをする場面です。

グループの中での立ち位置、SNSの「いいね」、話を合わせるための小さな噓……。ひよりは自分の居場所を守るため、あまり好きではないものも好きなふりをし、誰かがからかわれていても、笑ってやり過ごしてしまいます。

あの「見逃したぁ」というひと言も、最初とは少し違って聞こえてきます。子どもたちにとって、友達との関係は大きなものです。仲良しグループにいても、いつも本音を話せるとは限りません。ひよりの愛想笑いも、簡単に「よくない」と決めつけられるものではないでしょう。

だからこそ、好きなホラーの話を心から楽しめる相手と出会ったときの嬉しさが、読んでいるこちらにも伝わってくるのです。

中学受験の国語対策にも 登場人物の心情の読み解き方

中学受験の国語で大切なのは、「笑っているからうれしい」「黙っているから平気」と、行動だけで気持ちを決めつけないこと。ひよりが興味のないアイドルの話に笑顔で合わせるのも、ただ楽しいからではありません。なぜそう振る舞ったのか、前後の出来事を手がかりに考えると、登場人物の気持ちが見えてきます。

この本には、そんな気持ちの変化を考えたくなる場面がたくさんあります。もちろん、勉強のために読む必要はありません。まずはふたりのやりとりを思い切り楽しんで、読み終わったあとに「あのとき、どんな気持ちだったのかな」と話してみるのもよいでしょう。

〔読んだあとに、話してみたい3つのこと〕

親子で、あるいは友達と。答えを決めずに、こんな話をしてみるのはいかがでしょう。

1.ひよりは、どうして“愛想笑い”をするのでしょう?

2.由木さんにとって、ひとりでいる時間と、ひよりと過ごす時間は、どう違うのでしょう?

3.もしあなたが死体クラブに誘われたら、入りますか?

〔読み終えて─塾講師の感想─〕

みんなと一緒にいるのが好きな子も、ひとりの時間が好きな子も。どちらかが正しいわけではありません。ひよりと由木さんの不思議な友情を追いかけているうちに、そんなことを感じました。

笑えるのに、ときどき胸がきゅっとなる。そして読み終えると、誰かと本音で話したくなる一冊でした。

「死体クラブ」という名前にびっくりするかもしれませんが、読み始めるとぐいぐい引き込まれる物語です。ぜひ手に取ってみてください。ホラー好きはもちろん、友達との関係にちょっと悩んだことがある人にも、きっと気になる場面が見つかると思います。

最後に。胸の前で両手をクロスする、死体クラブのハンドサイン。あれ、好きです。私もやってみようかな。

文/akira

『放課後死体クラブ(仮題)』

作:ひなたきな

第66回(2025年度)講談社児童文学新人賞受賞作

〈あらすじ〉

過去のトラウマから本音を隠して過ごすひよりは、周囲を気にせず堂々と振る舞うクラスメイトの由木(ゆき)に惹かれていく。二人は、共通の趣味であるホラー映画を通じて意気投合。ひよりの過去を知る由木から「死体」の演技指導を頼まれたことで、二人は「放課後死体クラブ」を結成。異なる傷を抱える二人が、支え合いながら唯一無二の絆を築いていく物語。

cocreco『放課後死体クラブ(仮題)』著:ひなた きな/絵:satsuki(講談社)
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