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妻が帰ってきたのも、牛乳を頼まれたのも知っていた→「ねえ、見てる?」にも俺が返さなかったわけ

  • 2026.11.1
ハウコレ

机の上で鳴り出したスマホを、俺は握ったまま鳴り止むのを待ちました。ドアを開けて顔を出した妻にとっさに返したのは、本当のことではありませんでした。

その少し前、玄関のドアが開く音に続いて、レジ袋のこすれる音がしました。ヘッドホンの片耳を外していたので、妻が帰ってきたことはすぐに分かりました。それでも、自分の部屋のドアを開ける気にはなれませんでした。

ジムを早めに切り上げた日

その日は、ジムを30分で切り上げて帰ってきていました。発売されたばかりのゲームを、早く進めたかったからです。

帰り道、ロック画面に妻からの通知が浮かびました。

「来月の連休、久しぶりに2人でどこか行かない?行きたいとこ考えといて」

連休の予定なんて、あとで考えればいい。家に着くと妻は出かけていたので、そのまま自分の部屋に入り、パソコンでゲームを始めました。スマホは、通知が見えるよう画面を上にして机に置きました。

ロック画面で読んでいた文面

妻が帰ってきてしばらくすると、机の上で続けてスマホが震えました。

「まだジム?」

「帰りに牛乳買ってきてほしい」

妻は、俺がまだ外にいると思っている。ロック画面の文面で、それが分かりました。

ゲームはちょうど、負けたら最初からやり直しになるボス戦の途中です。ここで家にいると返せば、今すぐ買いに行かされます。黙っていれば、そのうち妻が自分で行くだろう。そう考えて、チャットは開かずにおきました。

2分後に届いた通知はこうです。

「ねえ、見てる?」

見てはいました。文面は、ロック画面で1つ残らず読んでいたのですから。壁の向こうからは、ベランダの戸を開け閉めする音も聞こえていました。

しばらくして、机の上のスマホから着信音が鳴り出しました。メッセージの通知は振動だけにしていたのに、着信音を切るのを忘れていたのです。

ヘッドホンを首まで下ろしてスマホをつかみましたが、ここで切れば、拒否したことが妻に伝わる気がしました。画面に出た妻の名前を見ながら、鳴り止むのを待つことにしました。

とっさに出た言葉

着信音が止まってすぐ、背中のほうでドアが開き、妻の声がしました。

「いるなら言ってよ」

何も知らない顔を作って振り向き、とっさに口から出たのはこれでした。

「あ、おかえり。ごめん、気づかなかった」

モニターでは、ボス戦が止まらずに続いたまま。妻の目が、俺の肩越しにその画面へ向き、こう言いました。

「ゲームしてたんだね」

ここまで来たら、行くしかありません。画面と妻の顔を見比べてから、椅子を立ちました。

「ごめん、牛乳今から買ってくる」

上着をつかんで妻の横をすり抜け、家を出ました。

そして...

コンビニへ向かいながら開いたチャットでは、並んでいた4件に一斉に既読がつきました。「ちょうどボス戦だったから」と打ちかけて、消しました。今さら何を送っても言い訳にしかならない気がして、画面を閉じたのです。

牛乳と、自分のエナジードリンクを買って家に戻りました。冷蔵庫に牛乳をしまっても、リビングにいた妻は、こちらを見ずにテレビをつけたままでした。

部屋に戻ると、ボス戦は負けて、最初からやり直しになっていました。それでも、そこまで怒ることだろうかと、まだ少し思っています。

連休の誘いには、まだ返事をしていません。

(30代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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