1. トップ
  2. エピソード
  3. 初めての温泉宿、カメラを向けるたび顔の前に手をかざす彼氏→窓ぎわで聞いた私に返ってきた一言

初めての温泉宿、カメラを向けるたび顔の前に手をかざす彼氏→窓ぎわで聞いた私に返ってきた一言

  • 2026.11.1
ハウコレ

料理の写真をどこかに載せるのかと彼に聞かれた瞬間、私と一緒にいるところを見られたら困る誰かの存在が、頭をよぎりました。

その少し前、中庭の足湯でスマホを構えると、隣の彼はまた顔の前に手のひらをかざしました。付き合って4か月、初めて2人で泊まりに来た温泉宿です。この旅行で、その手を見るのはもう3度目でした。

足湯で返ってきた短い言葉

1度目は、駅を出てすぐの看板の前でした。看板と一緒に撮ろうとすると、彼は笑いながら顔の前に手のひらをかざしました。2度目は、宿のロビーの花の横で撮ろうとしたときです。どちらも照れているだけだと思っていました。

「ちょっとこっち向いて」

声をかけると、彼は手のひらをこちらに向けたまま、短く言いました。

「写真だけは、ごめん」

仕方なく、お湯につかった2人分の足だけを撮りました。

料理の写真に向けられた質問

夕食は部屋に運ばれてきました。旅先の料理を撮ってSNSに載せるのは、いつもの楽しみです。スマホを料理に向けたとたん、彼が箸を置いて聞きました。

「それ、どこかに載せたりする?」

「料理だけだよ」

そう答えると、彼は「そっか」とだけ言って、また箸を取りました。

料理なら載ってもいい。でも、自分が写った写真は困る。そう考えたとたん、浮かんだのはほかの女性の存在でした。私と一緒にいるところを、見られたらまずい相手がいるのではないか。

彼が席を外したすきに、彼のSNSを開きました。並んでいたのは空や駅のホームの写真ばかりで、私の気配はどこにもありませんでした。彼の友達に紹介されたことも、思えば一度もないままでした。食事が下げられたら、聞いてみよう。そう決めました。

窓ぎわで途切れた返事

食事が下げられたあと、窓ぎわのイスに向かい合って座り、私から切り出しました。

「私と写ってるの、誰かに見られたら困るの?」

彼は窓の外を見たまま、なかなか答えません。待っているうちに、ずっと聞けずにいたことまで口から出ていたのです。

「それとも、私みたいなのと付き合ってるって、友達に知られたくないとか?」

言いながら、自分で自分を小さくしているようで情けなくなりました。彼は首を横に振りました。

「違う。困るのは、俺じゃなくて」

そこで言葉が途切れ、続きは出てきませんでした。困るのが彼じゃないなら、誰なのか。真っ先に浮かんだのは、私の知らない女性の顔です。彼は膝の上で両手を組み直し、こちらを向きました。

「帰りの電車で、ちゃんと話すから」

問い詰めたい気持ちも残っていましたが、そらされなかった目を信じて、うなずきました。

そして...

帰りの電車で、彼はしばらく前の座席の背もたれを見ていました。やがてスマホに何かを打ち込み、画面をこちらに向けました。

「これ、俺なんだ」

画面にあったのは、お店の隅で眠る、今より若い彼の写真。下には、顔をからかうコメントが並んでいます。彼は続けました。

「大学のとき、友達に撮られた写真を勝手に載せられて、知らない人にまで回ったんだ」

「だから、手を?」

私がそう聞くと、彼は小さくうなずきました。疑っていた自分が恥ずかしくなりました。

ただ、窓ぎわで途切れた言葉の続きは、まだ聞けていません。困るのが彼じゃないなら、あの手は誰のためにかざされていたのでしょうか。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ