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最新刊『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』制作秘話! はやみねかおるが語る誕生の裏側

  • 2026.10.30
cocreco著者近影 撮影:日下部真紀

累計発行部数130万部超える、はやみねかおる「怪盗クイーン」の最新刊『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』(作:はやみねかおる、絵:K2商会/講談社 青い鳥文庫)が、2026年8月12日に発売されました。

今作では、インドで手に入れようとした「アムリタ」が、実はクイーンの養父母や皇帝に関わりがあることが明らかにされます。さらに「アムリタ」を巡り、クイーン、探偵卿、謎の存在がそれぞれ動き出す展開になっています。

そこで作者のはやみねかおるさんに、クイーンの誕生物語や『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』(以下『ヴェネチア・カーニヴァル』)の制作秘話、そして「怪盗クイーン」シリーズの今後について語っていただきました。

\青い鳥文庫の大人気シリーズ「怪盗クイーン」最新作!/

『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』(作:はやみね かおる 絵:K2商会)

《あらすじ》

ゐつと巧之介が生きているという情報をつかんだクイーンは、ジョーカー、RDとともにヴェネチアにやってきた。 「水の都」と呼ばれるこの街では、犯罪組織のボスが時空を移動できる道具--『アムリタ』を狙っていた。 探偵卿も入り乱れ、カーニヴァルの狂騒のなか『アムリタ』争奪戦が勃発する!

夢の中でクイーンがアピール! 「わたしを作品に出してくれ」

──シリーズ第1巻『怪盗クイーンはサーカスがお好き』が2002年3月15日に刊行されてから24年経ち、シリーズは20冊になりました。夢水清志郎と同じく、クイーンも夢に出てきたことで誕生したそうですが、どのような夢だったのでしょうか。

「夢」というと、映像で観るものを思い浮かべるかもしれませんが、私が見る夢は「文章」で、ビジュアルがありません。例えば「京風の石狩鍋」というワケのわからない料理は、「京風の石狩鍋」という文字が出てくるので、そのまま小説に書いています。

クイーンも同じで、「国籍不明」「性別不明」などの情報が書かれた身上書のようなものが出てきて、「わたしはこういう人間だ。わたしを作品に出してくれ」と伝えられる夢でした。そして、文章を書いていくうちに性格や背景がわかってくる。それがクイーンの誕生の瞬間でした。

cocrecoクイーン。性別、年齢、国籍などはすべて不明。 イラスト:K2商会

──情報があるのかないのかわからないところも、クイーンらしいですね。夢水清志郎の場合はどうでしたか?

夢水清志郎の場合は、身長何センチなど、もう少し情報が細かかったです。夢の中で「草刈正雄を栄養失調にしたような顔」という文章が出てきましたので、そのまま作品に採用しています。

その段階で、「午前零時のシンデレラ事件」(※勇嶺薫『午前零時のシンデレラ』に登場する事件。雑誌『メフィスト』2008年9月号の企画「0番目の事件簿」に掲載された、夢水清志郎を主人公にした最初の原稿)、「神隠島(かみかくしま)事件」と、『ディリュージョン社の提供でお送りします』で書いた「山荘殺人事件」というタイトルも浮かんでいました。

──「神隠島」は、夢水清志郎と同時に存在していたんですね。驚きました。

そうなんです。「これだけの事件を解決したぼくが、名探偵なんだよ」という売りこみでした。片目の視力や吸っているタバコの銘柄はハイライトなど、全部データとして出てきたんですね。

cocreco夢水清志郎。とても背が高く、いつも黒いサングラスに黒い背広という出で立ち。 イラスト:村田四郎

──ちなみに真野萌奈美の場合はどうでしたか?

萌奈美の場合は、たった一行で「やっと気がついたね」でした。担当者さんとプロットの打ち合わせをする予定だったのに、当日間際になってもまったくなにも思い浮かばなくて、待ち合わせの喫茶店があるビルの下で考えながら「もうだめだ」と思ったら、やっと出てきたんです。そこで慌ててプロットを書いて、待ち合わせ場所に向かい、OKをもらったんです。喫茶店に、パブロ・ピカソの「ゲルニカ」が飾ってあったことをよく覚えています。

名探偵と怪盗は表裏一体……クイーン誕生の裏話

──クイーンの初登場作は『いつも心に好奇心! 名探偵夢水清志郎VSパソコン通信探偵団』(2000年9月25日発売)ですが、その前に『魔女の隠れ里 名探偵夢水清志郎事件ノート』の犯人役になる予定が、強烈な性格からボツになったと『魔女の隠れ里 名探偵夢水清志郎事件ノート』のあとがきに書かれています。

後書きにそんなことを書いたこと自体を忘れてしまったのですが、ボツの理由はクイーンにミステリーが向いていないからですね。派手なことをやったら、絶対に「私がやったんだよ」と言わずにはいられませんから(笑)。

クイーンが犯人になったかも!?

『魔女の隠れ里 名探偵夢水清志郎事件ノート』

cocreco『魔女の隠れ里 名探偵夢水清志郎事件ノート』(著:はやみね かおる 絵:村田 四郎)

──名探偵と怪盗は対になる存在ですが、夢水清志郎とクイーンも当初から対になるキャラクターだったのですか?

子どもたちに向けて名探偵の話を書くのなら、「怪人二十面相」のような怪盗が必要だとどこかで思っていたから、クイーンが出てきたのかなと思います。クイーンは、本人が「とにかく美しい!」とアピールしてきたので、本人が言っていることを小説に書いて、あとはK2先生の美的センスにお任せでした。本当に美しい挿絵を描いてくださって、感謝しています。

──クイーンの最新刊『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』(以下『ヴェネチア・カーニヴァル』)の舞台はイタリアです。舞台はどんな経緯で決まりましたか?

1冊前の『怪盗クイーン 陽炎村クロニクル』(以下『陽炎村クロニクル』)の舞台がフランスでした。そこで担当の山室さんが「次はイタリアがいいんじゃないですか?」と提案してくれたので、イタリアになりました。お話の舞台が決まると山室さんから資料が送られてくるので、そこから調べて書いています。

\クイーンの出生の秘密と夢水清志郎との因縁がわかると話題!/

『怪盗クイーン 陽炎村クロニクル』(作:はやみね かおる 絵:K2商会)

cocreco『怪盗クイーン 陽炎村クロニクル』(作:はやみね かおる 絵:K2商会)

ヴェネチアを調べると、けっこうおもしろかったんですね。ヴェネチアは、異民族の侵入から逃げたウェネティ人が、アドリア海沿岸の潟(ラグーナ)の浅瀬や湿地に木の杭を打ち込み、その上に耐水性に優れたイストリア石という石灰質の石を積んで土地を造ったこと。道路が狭くて運河が入り組んでいるため、自動車やバイク、自転車などの車両の乗り入れや通行が禁止されていることなど、住民の意識で守られた場所なんだなと。最近は海の水位が上昇して困っているというのも、心に響きました。

──『ヴェネチア・カーニヴァル』の冒頭に登場する新キャラクター、中学校教師ロレンツォ・ビアンキは、どんな経緯で生まれましたか?

「0(ゼロ)」が関わってくるということで、子どもたちが読んだときにイメージする「数学の先生」はどんな感じだろうかと考え始めました。そしてイメージをどんどん突き進めていった結果、キリッとした風貌のロレンツォができあがったのです。

さらに頭の中でロレンツォと会話をしていく中で、年齢や性格など細かい設定がどんどん出てきます。独身なのは、やはり数学に人生を捧げているような独特な性格では結婚できなさそうだと考えたからです。

私がキャラクターを作るときには、最初から決めすぎずに名前と外見だけ出して、話を書いていくうちに「このシーンだったら、こうキャラクターはこう動く」と見えてきて、話に沿って変えていくパターンもあります。でもロレンツォは、最初から全部設定を決めていましたね。

cocreco新キャラクターのロレンツォ・ビアンキ。 イラスト:K2商会

「AIの進化」は「人間の退化」

──本作では、執筆の際に「生成AI」の力を借りたとおうかがいました。どんな風にAIを使いましたか? またAIを使ってよかったところ、もうちょっとこうしてくれたらと思ったところなどを教えてください。

ヴェネチアのカーニヴァルは、イベントが開催される時間などがスケジュールで決まっています。物語の終盤に、ある舟が桟橋に到着しますが、そのときの潮位がどのくらいかをAIにききました。そうしたら、「その時間帯なら、階段の1、2段目あたりまで見えています」と即答で。「すごいな!」と思いましたね。

でも、いろいろ条件を書いて「伏線を張ってくれ」と考えさせましたが、何度やってもうまくできないんですよ。AIのヤツは伏線の意味がわかっていないなと思って、具体的な事例を挙げて伏線の意味を説明したら「勉強になりました」と返ってきたんです。

私の代わりにAIに書いてもらおうと思っていたのに、その前にAIに勉強させなければならないとなって、もうやめました。結局は自分で考えた方が早い。だから、進化中のAIはまだ不得意なところがありますね。

cocreco8月16日に名古屋で行われた「はやみねかおる 赤い夢学園林間学校2026」では、赤い夢学園のRDとはやみねさんが、1400文字の短編ストーリーを書いて評価を競った。

──赤い夢学園RDプロジェクト開始のインタビューで、物語のRDはいずれ「神」のような存在になるとおっしゃっていました。

私は、「AIの進化」は同時に「人間の退化」だと思っています。今回『ヴェネチア・カーニヴァル』を執筆しながら、AIは人間が考えられない精度で「確率」の計算をできるものではないかというのが、自分の中から出てきた答えのひとつ。量子力学に「多世界解釈」という考え方があります。物体の状態が確定するたびに宇宙が枝分かれし、あらゆる可能性の数だけパラレルワールド(並行世界)が同時に存在するとされています。

じゃあその世界を確定したのは誰なのか?

それがAIです。だからAIは神のような存在になると考えています。AIに究極の命令を出したらどうするのかと考えると、「神」を創り出すだろうと思ったからです。人間の上位存在として「神」がいて、今のところ人間の下位存在がAIです。RDのようなAIが次になにをするかといったら、人を創造した「神」を創造していくのではないかと考えたんです。

──改めて「怪盗クイーン」シリーズを通して、書きたかったテーマはなんですか?

クイーンは「あるもの」を盗む存在として書きたかったんです。

私がクイーンに盗んでほしかったのは、戦争です。ですがクイーンはそれでは収まらない。今は、もっと大きな存在と対峙する、それこそ神も運命も全部吹き飛ばせるぐらいの規格外のキャラクターになってほしいと思っています。

他人が決めた選択ではなく、あくまでも自分がすべて選びとっていく。例えそれが神によって選ばされているかもしれなくても、すべてを吹き飛ばせるぐらいのキャラクターとして、最後までかっこよく書きたいなと思っています。

──それは楽しみです! これまでクイーンは、直近の『陽炎村クロニクル』では、遂にクイーンの幼少期と養父母、そして夢水清志郎との縁が明らかになりました。さらに皇帝の謎がひとつ明らかになり、クイーンが次になにをするのかという目的も見えてきました。読み手としては、広げた風呂敷をたたみ始めたのかなと感じたのですが、「怪盗クイーン」の物語は全体のどの程度まで書いたのでしょうか?

計算してみたら、おおよそ82%でした。ブレ幅がありますが、うまくいっていれば86%まで終わっています。でも失敗して直しが入るとマイナス16%になるので、現在地は「66%」でしょうか。

あくまで現時点であって、次の「日本編」でどれだけ数字が狂うのかは、これから書くので私自身もわかりません。神のみそ汁です。ですが私が以前引退を宣言した65歳まであと2年なので、2年で終わらせないといけません(笑)。

cocreco『ヴェネチア・カーニヴァル』の注目キャラクターを教えてくれるはやみねさん。 撮影:日下部真紀

──最後に、『ヴェネチア・カーニヴァル』の楽しみ方を教えてください。

『ヴェネチア・カーニヴァル』のカバーイラストに、皇帝といっしょにいる女の子がいます。実は新キャラクターではなく、これまでに登場しています。いったい誰なのか、いろいろ考えてみてください。

また「0(ゼロ)」や「無限」などややこしいことを書きましたが、作者もよくわかっていないので、フィーリングで楽しんでください(笑)。

そして次の「日本編」の後にもう1つのシリーズを書いて、クイーンの物語は終わる予定です。最後までクイーンをよろしくお願いします。

\青い鳥文庫の新デザインで登場/

『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』(作:はやみね かおる 絵:K2商会)

cocreco『怪盗クイーン ヴェネチア・カーニヴァル』(作:はやみね かおる 絵:K2商会)
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