1. トップ
  2. エピソード
  3. 「孫の顔はまだ?」と嫁に聞き続けた私。喫茶店で友人たちに口にした約束

「孫の顔はまだ?」と嫁に聞き続けた私。喫茶店で友人たちに口にした約束

  • 2026.10.31
ハウコレ

喫茶店で友人たちが順番に孫の写真を見せる中、私にだけ番が回ってきません。半年前につい口にした一言が、嫁への催促を強くしていきました。

クローゼットの奥に、ふたをした箱を1つしまっていました。中身を知っているのは私だけです。嫁に言い返されたあの日、息子夫婦を見送って真っ先に開けたのも、その箱でした。

眺めるだけだった友人たちの写真

月に1度、手芸サークルのあとに仲間と寄る喫茶店。席に着くと、決まって誰かがスマホを取り出します。

「見て、もう歩くようになったのよ」

画面には、小さな靴をはいた孫の写真。次の人も、その次の人も、同じように画面を差し出します。6人のうち、見せる番が回ってこないのは私だけでした。

半年前、「あなたのところは?」と聞かれ、つい口がすべりました。

「うちも、来年には見せられるわ」

根拠なんてないのに、帰りにデパートで白いよだれかけとガラガラのセットを買い、箱ごとクローゼットにしまいました。

嫁から来春に新しいチームを任されると聞いたとき、口から出たのはこの一言でした。

「仕事なんて、いつでもできるでしょう」

私は子どもを産んでから、働き口を探したのです。嫁の仕事の話など、本気で聞く気はありませんでした。

息子の言葉をさえぎった食卓

あの日も、玄関の引き戸が開く音を聞くなり、台所から声をかけました。

「孫の顔はまだ?」

サークルの集まりは翌週に迫っていました。食卓でもう一度「孫の顔はまだ?」と繰り返し、取り皿を配りながら嫁の年を数えます。

「32歳でしょう。もうのんびりしていられないわよ」

返事がないので、さらに続けました。

「私が元気なうちに、早く孫を抱っこさせてちょうだい」

「母さん、その話は」

息子が口をはさんだのが気に入らず、顔も向けずに返しました。

「あなたは黙ってて。これは私の楽しみなんだから」

楽しみ、と言ったとき頭にあったのは、喫茶店でようやく自分の番が回ってくる場面です。嫁がどんな顔で聞いていたのか、私は見ていませんでした。

「誰かに見せるため」と言われて

「お義母さん。私たちの子どもは、誰かに見せるために産むものじゃありません」

取り皿をテーブルに置いて、そう言った嫁の顔を見ました。

誰かに見せるため。喫茶店で口にした約束を、見透かされたのかと思いました。

「いつにするかは、夫と2人で決めます」

隣で息子がうなずいて言いました。

「俺も同じ考えだから」

息子まで嫁の肩を持つのかと、腹が立ちました。言い返す言葉を探したのに、浮かぶのは友人たちの画面とクローゼットの箱ばかり。口から出たのは、短い返事だけでした。

「そう」

あとは黙々と料理を取り分けました。隣の席の夫が「この煮物、うまいな」とつぶやいても、返事はしませんでした。見送りの玄関でも、いつもの質問は口にしていません。

そして...

箱の中のよだれかけには、買ったときのタグがついたままでした。

数日後、喫茶店の友人たちのチャットに、また新しい孫の写真が届きました。「お孫さんの予定は?」という一言に「もうすぐよ」と打ちかけて、消しました。代わりに「うちは、息子夫婦に任せてるの」と送りました。

嫁の言い方は失礼だったと、今も思っています。それでも次に息子夫婦が来たら、玄関で最初にかける言葉は「いらっしゃい」にするつもりです。

(60代女性・主婦)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ