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「妻は俺の言うことを聞くんで」と座敷で言った夫→私の一言で先輩と席を立った

  • 2026.10.31
ハウコレ

座敷に残されたのは、私と飲みかけのグラスだけでした。しばらくして戻ってきた夫と先輩は、外で何を話していたのか、一言も触れようとしません。

話は少し前にさかのぼります。ふすまを開けると、夫の職場の先輩が座敷の奥で手を振っていました。夫と3人での食事に誘われたのは、これが初めてです。乾杯のあと、先輩は少しあらたまった様子で夫のほうを向きました。

乾杯のあとに出た大阪の話

先輩は、夫が入社したころから面倒を見てくれている人です。私も結婚式で一度、挨拶をしたことがありました。

「来年の春から、こいつに大阪へ来てもらいたいと思ってるんだ」

先輩はビールのグラスを置いて、そう切り出しました。大阪には、先輩が責任者を務める新しい拠点があるそうです。転勤の話は、私には初耳でした。夫の横顔を見ても、表情は変わりません。

「奥さんはどう?」

先輩に聞かれ、私が口を開く前に夫が答えました。

「妻は俺の言うことを聞くんで」

夫はそう言って、軽く笑ってみせたのです。

思わず口から出た私の返事

結婚して3年、夫が人前でこんな言い方をするのを聞いたのは初めてでした。

先輩は「そうか、それなら話が早い」とうなずき、拠点の場所や住まいの話を続けます。私は箸を置いて、膝の上で手を組みました。住まいの話にまで進んだところで、口を閉じていられなくなりました。

「その話、私はまだ一度も聞いてないけど」

先輩は話を止め、「え、話してないの?」と夫に目を向けたのです。夫は手にしていたグラスを、テーブルにそっと置きました。

ふすまの向こうへ出ていった夫

夫は立ち上がり、「先輩、ちょっといいですか」とだけ言いました。先輩は迷ったような顔をしてから、夫のあとについて座敷を出ていきます。

ふすまが閉まり、座敷には私と飲みかけのグラスが残されました。廊下の向こうから、ほかの客の笑い声が聞こえてきます。夫と先輩の声は、まったく聞こえませんでした。

運ばれてきた焼き鳥が冷めていくのを、私はぼんやりと眺めていました。言うことを聞く妻と言われたばかりなのに、私だけが何も知らされていない。そのことを、皿の上の串を見ながら何度も考えていたのです。

そして...

しばらくして戻ってきた先輩は、私の前で頭を下げました。

「奥さん、今日は本当にごめんね」

夫は席に着くと、何事もなかったように私の取り皿に焼き鳥を取り分けました。会計は先輩が済ませ、大阪の話はそれきり出ないままでした。

帰りのタクシーで、夫は窓の外を見たまま一言も話しません。私の返事を聞いて席を立った夫は、外で先輩と何を話し、何を決めてきたのでしょうか。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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