1. トップ
  2. エピソード
  3. 「今、君の家の近く」と元カノに送った俺→郵送で済む合鍵を、あの女性と2人で届けに行ったわけ

「今、君の家の近く」と元カノに送った俺→郵送で済む合鍵を、あの女性と2人で届けに行ったわけ

  • 2026.10.31
ハウコレ

「え、どういうこと?」という返事で、自分の送った一行の不用意さにようやく気づいた俺。ジャケットの内ポケットには、手渡しで返すつもりの封筒がありました。

数日前の荷造りの日。段ボールの底から出てきたのは、小さな鈴のついた鍵でした。来月から一緒に暮らす彼女が、それを手のひらにのせてこちらを見ています。元カノの部屋の合鍵を、俺は返さないまま1年を過ごしていました。

荷造りで見つかった合鍵

元カノとは学生時代から3年付き合い、1年前に別れました。最後は駅の改札で手を振って、それきりです。鍵のことは、荷造りで見つけるまで頭から抜け落ちていました。

郵送で済ませようとした俺に、彼女は首を横に振りました。

「ちゃんと返さないとね。私もついていくから」

1人で元カノに会いに行くより、そのほうがお互い気が楽だろうと言うのです。そして、こう付け加えました。

「急に行ったら驚かせるよ。先に連絡しておきなよ」

説明できないまま送った一行

電車の中で、何度もメッセージを打ちました。鍵を返したいこと、長いあいだ持ったままにしていたことへのお詫び。打っては消しているうちに、最寄り駅に着いてしまいました。

元カノの住む建物へ向かう角を曲がったところで、慌てて送ったのは最初の一行だけでした。

「今、君の家の近く」

既読はすぐについたものの、返事はありません。建物の入り口の前で足を止めたとき、ようやく画面が光りました。

「え、どういうこと?」

その文面を見て、やっと気づきました。1年も連絡のなかった元カレから居場所だけを告げられたら、気味が悪いに決まっています。説明を打ち直そうとしても、うまくまとまりません。結局送ったのは、別の一言でした。

「少しだけ、下に来られる?」

手渡しのつもりだった封筒

ジャケットの内ポケットには、鍵を入れた封筒があります。顔を見て謝り、手渡しで返す。それが筋だと思っていました。

「ごめん、今は無理」

元カノからの、当然の返事でした。用件も分からないまま、別れた相手に呼び出されて出てこられるはずがありません。隣の彼女が、俺の腕を軽くたたきました。

「無理って言われたら、それでいいんだよ」

俺は小さくうなずいて、「わかった」とだけ返しました。入り口の集合ポストに、封筒を入れます。中身は鍵と、長く借りたままにしたことを詫びる短い手紙だけ。彼女と暮らし始めることは、書きませんでした。

そして...

駅へ戻る途中で、もう1通だけ送りました。

「ポスト、見ておいて」

既読はつきましたが、返事は今も届いていません。最初の一行を、元カノがどんな気持ちで読んだのか。考えるたびに、送信済みの画面をさかのぼってしまいます。

「返せたんだから、それでいいじゃん」と笑った彼女が、新しい部屋の合鍵を1本、俺の手のひらにのせました。今度の鍵は、返す日のことを考えずに持っていられそうです。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ