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「排便時に血が出る…」“いつもの痔のせい”と放置した50代男性→2年後、大腸カメラで検査すると…発覚した“恐ろしい病気”とは

  • 2026.11.5
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。現役消化器内科医の喜田 凛です。

「健診で便潜血陽性と言われたけれど、もともと痔があるからその血だろう」 「2回のうち1回しか陽性じゃなかったし、お腹も痛くないから大丈夫」

外来で大腸の病気が見つかったあと、患者さんからこのような言葉を聞くことは決して少なくありません。しかし、この「いつもの痔だろう」という油断こそが、命に関わる病気の発見を遅らせてしまう最大の落とし穴です。

今回は、2年間にわたって精密検査を先送りにしてしまった50代男性の事例を通して、便潜血検査の本当の意味をお伝えします。

2年連続の「要精密検査」を引き出しにしまい込んだ理由

53歳の男性会社員・Aさん(仮名)が初めて便潜血検査で陽性を指摘されたのは、51歳の春、職場の定期健診でした。

2日分の便を採取したうち、陽性が出たのは1日分のみ。もともと痔の持病があり、排便時に紙に血がつくことが時々あったAさんは、「今回もいつもの痔のせいだろう」と自己判断してしまいました。

健診結果には消化器内科を受診するよう指示があり、精密検査の紹介状も同封されていましたが、腹痛もなく食欲も普段どおり。「わざわざ仕事を休んでまで、つらそうな大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受ける必要はない」と考え、紹介状は引き出しの奥にしまったままにしてしまったのです。

そうして1年が経過し、翌年の健診でも再び便潜血は陽性と判定されました。しかし、この時も自覚症状がなかったため、Aさんは受診を見送ってしまいました。

階段で息切れ、Hb8.4g/dLの重い貧血……ついに異変が表面化

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

最初の健診から2年ほど経った頃、Aさんの体に明らかな異変が現れ始めます。

階段を2階へ上がるだけで息が切れるようになり、朝から全身のだるさが抜けない。休日はぐったりと横になって過ごす時間が増えました。さらに、便が少しずつしか出なくなったり、下痢を繰り返したりと、排便のリズムも乱れていきました。

「さすがにおかしい」と感じたAさんは、近くの内科を受診。血液検査を行ったところ、ヘモグロビン(Hb)値は「8.4g/dL」まで低下していました。成人男性の基準値(およそ13〜17g/dL)を大きく下回る、明らかな「鉄欠乏性貧血」の状態でした。

医師から過去の健診歴を問われ、Aさんが「実は2年前から便潜血が陽性だった」と明かすと、事態は急転。すぐに大きな病院への紹介状が手渡され、5日後に消化器内科で大腸内視鏡検査を受けることになりました。

内視鏡のモニターを見て、医師が「言葉を失った」理由

内視鏡が腸の奥へと進み、病変のある場所に差し掛かった瞬間、私はモニターを見て思わず言葉を失いました。

そこに映し出されていたのは、約5cmにもおよぶ巨大な腫瘍。腸の内側を半周以上も塞ぐように盛り上がり、便の通り道を狭めていたのです。組織を採取して行った病理生検の結果は、やはり「大腸がん」でした。

「なぜ、最初の健診で来てくれなかったのか……」 「2年前のあの時なら、どれほど小さいうちに見つけられただろうか」 医師として、悔しさとやるせなさが込み上げてきた瞬間でした。

検査結果の説明を受けたAさんは、「目に見える出血はなかったのに、痔からの出血じゃなかったんですか……」と力なく肩を落としました。

便潜血検査にまつわる「重大な誤解」

大腸がんやポリープからの出血は、微量であることが多く、肉眼では便の色が変わらないことがほとんどです。そうした「目に見えない微細な出血」を拾い上げるのが便潜血検査の役割です。 痔からの出血があることと、大腸がんがないことは全くの別問題です。「痔があるから」と自己判断で決めつけるのは非常に危険です。

また、「目に見える血便がないから安心」という思い込みも禁物です。肛門に近い場所のがんであれば赤い血が混じりやすいですが、腸の奥深く(盲腸や上行結腸など)にできるがんは、肉眼では出血に全く気づかないまま、じわじわと血が失われて「階段での息切れ」「立ちくらみ」「慢性的な疲労感」といった重い貧血症状で初めて発覚することが珍しくありません。男性や閉経後の女性に原因不明の貧血が見つかった場合、真っ先に大腸がんを疑う必要があります。

もちろん、便潜血陽性がそのまま大腸がんを意味するわけではありません。痔が原因のこともありますし、精密検査で異常が見つからないことも少なくありません。ただ、痔があるからといって、ほかに原因がないとは言い切れません。

「もう一度便潜血検査を受けて、陰性なら大丈夫だろう」と考える方もいますが、日によって出血したりしなかったりするため、再検査で陰性が出てもがんを否定する根拠にはなりません。陽性が出た場合の正しい精密検査は、便の再検査ではなく、大腸内視鏡で腸全体を直接観察することです。

健康診断で「陽性」が出たら速やかに受診して

2年前の時点で、Aさんの病変がポリープだったのか、ごく初期のがんだったのかは今となっては分かりません。しかし、もし最初の通知の段階で大腸カメラを受けていれば、大がかりな手術を避け、内視鏡治療だけで完治できた可能性が十分にありました。

大腸がんは、多くの場合「良性のポリープ(腺腫)」から数年かけて成長します。早期の段階で見つけてポリープの段階で切除してしまえば、将来大腸がんになること自体を未然に防ぐことができるのです。

「大腸カメラは痛そう、つらそう」と不安に感じる方も多いですが、最近では鎮静剤(点滴の麻酔薬)を使って、うとうと眠っているような感覚で楽に受けられる医療機関が広く普及しています。(※鎮静剤を使用する場合、検査当日は車・バイク・自転車の運転が終日禁止となるため、公共交通機関での来院やご家族の送迎が必要です)

なお、腫瘍が大きくなって腸を塞ぎかけると、「お腹が異常に張って激痛が走る」「便だけでなくおなら(ガス)も全く出ない」「吐き気や嘔吐を繰り返す」といった「大腸閉塞(イレウス)」を引き起こし、腸が破裂する命の危険に直結します。このような症状がある場合は、ためらわずに至急医療機関を受診してください。

健康診断の「要精密検査」は、決して病名ではありません。「大きな病気が隠れていないか、一度きちんと確かめましょう」という体からのサインです。

自覚症状がなくても、痔の持病があっても、2回のうち1回でも陽性が出たら放置せず、速やかに消化器内科へ相談してください。


※人物と経過は、医学的に起こり得る状況をもとに構成した架空の事例です。

執筆:喜田 凛(現役消化器内科医。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医)

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