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「うん、そのうちね」付き合って1か月の彼の誕生日に焼いたケーキが、箱も開けずに冷蔵庫の奥へ

  • 2026.10.27
ハウコレ

「今、開けないの?」と聞いた私に、彼は短く答えただけでした。甘いものが好きだと聞いていたのに、本当はケーキが苦手だったのかもしれない。眠る彼の隣で、私はスマホの検索画面を開いていました。

翌朝、冷蔵庫を開けると、紺のリボンをかけた白い箱が、渡したときの形のまま奥に置かれていました。彼の誕生日に、私が渡したガトーショコラです。ひと晩たっても、その箱は一度も開けられないままでした。

3回焼き直したガトーショコラ

彼と付き合い始めて1か月。初めて迎える彼の誕生日に何を渡すか、散々迷いました。甘いものが好きだと聞いていたので、選んだのは手作りのガトーショコラです。

1回目は真ん中が沈み、2回目は焦げた匂いが台所に残りました。3回目でようやく形になったものを白い箱に入れ、紺のリボンをかけたのは誕生日の前日のことです。

当日は外で食事をしてから彼の部屋へ行き、箱を差し出しました。

「誕生日おめでとう。ガトーショコラ、作ってみたの」

「え、俺に?」

彼は箱を両手で受け取り、リボンの結び目をしばらく眺めていました。

開けられないまま冷蔵庫の奥へ

「ありがとう。ちょっと冷やしとくね」

彼はキッチンへ行き、冷蔵庫を開けました。麦茶のポットを端に寄せて、箱をそのまま奥へ。

「今、開けないの?」

「うん、あとでゆっくり」

冷蔵庫の扉が閉まる音を聞きながら、私は空になった両手をコートのポケットに入れました。

そのあとは2人で映画を見ました。ケーキの話は、彼の口から一度も出てきません。途中で彼が一度だけ冷蔵庫のほうを見ましたが、すぐに画面へ視線を戻しました。

甘いものが好きだと聞いたのは、私の思い違いだったのかもしれない。本当はケーキが苦手で、受け取った手前、言い出せなかったのかもしれない。隣から寝息が聞こえ始めてからも、スマホで「彼氏ケーキ苦手」と検索しては画面を閉じていました。

手つかずの箱と短い返事

翌朝、目を覚ますと、キッチンからパンの焼ける匂いがしていました。「お茶もらうね」と声をかけて冷蔵庫を開けると、箱は同じ場所に入ったまま。

リボンの結び目が私の結んだ形のままなのを見て、思わず聞いていました。

「あのケーキ、食べないの?」

「うん、そのうちね」

彼はトーストにバターを塗る手元から、目を離さないまま答えました。

グラスに麦茶を注ぎ、それ以上は聞かずに冷蔵庫を閉めました。駅までの道では、箱を入れてきた紙袋を小さくたたんで鞄の底へ。

そして...

家に着いてしばらくすると、彼からメッセージが届きました。

写真が1枚。お皿の上に、ガトーショコラが1切れだけ載っていました。

「少しずつ食べることにした」

少なくとも、食べてはくれたのです。それでも、「そのうちね」の短い返事と結んだままのリボンが、頭から離れませんでした。

「おいしかった?」と打ちかけて消し、「食べてくれてありがとう」とだけ返しました。

検索画面は、もう開きませんでした。ただ、どうして彼はすぐに食べようとしなかったのか。次に会ったら、それを聞いてみようと決めました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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