1. トップ
  2. エピソード
  3. 「えっ!もう作っちゃったの?」いつもの料理を先回りして用意した私。だが、常連客が困ったように笑った理由

「えっ!もう作っちゃったの?」いつもの料理を先回りして用意した私。だが、常連客が困ったように笑った理由

  • 2026.10.27

注文を聞く前に作った「いつもの料理」

以前、私が小さな飲食店で働いていたころの話です。

カウンター席が並ぶその店には、昼どきになると決まってやって来る年配の男性のお客さんがいました。

注文するのは、いつも同じ料理。何度も顔を合わせるうちに、私はすっかりその方の注文を覚えていました。

そして、いつしかこんなことを考えるようになったのです。

「注文を聞く前に料理を出したら、きっと喜んでくれるんじゃないかな」

常連さんの好みを覚え、言われる前に用意する。それが気の利いた接客だと信じていました。

そんなある日の昼どき。店の外を見ると、通りを歩いてくる常連さんの姿が目に入りました。

「あっ、来た!」

私はすぐにフライパンを火にかけ、いつもの料理を作り始めました。

やがて、のれんをくぐって常連さんが入ってきます。

「いらっしゃいませ!」

常連さんがカウンター席に腰を下ろしたころ、料理もちょうどできあがりました。

私は得意げに、お皿を差し出しました。

「お待たせしました!いつものです!」

「おっ!もうできてるの?」

驚いた顔を見て、私は心の中でガッツポーズ。きっと喜んでもらえたと思ったのです。

ところが、次の瞬間でした。

誕生日のひと言に、顔が真っ赤に

常連さんはお皿を見つめたまま、少し困ったように笑いました。

「いやあ、うれしいんだけどね……」

「はい?」

「今日は誕生日だから違うのにしようと思ってたんだけど」

「……えっ!?」

私は思わず固まってしまいました。

よりによって誕生日。せっかく別の料理を楽しみにしていたのに、私が勝手にいつもの料理を作ってしまったのです。

常連さんは私の顔とお皿を見比べ、苦笑いしました。

「まあ……これでいいや」

「す、すみません!先に聞けばよかったです…」

恥ずかしくて、顔が熱くなりました。

それでも常連さんは笑って手を振り、料理を残さず食べてくれました。

帰り際には、こんな言葉までかけてくれたのです。

「覚えていてくれてうれしいよ。また来るね」

その優しさに、私はますます申し訳なくなりました。

そして翌週の昼。再び常連さんが店にやって来ました。

今度こそ注文を聞いてから作ろう。そう思っていたはずなのに、姿を見た途端、いつもの癖でフライパンに手が伸びてしまいました。

すると、私の動きに気づいた常連さんが、席に着く前に片手を上げました。

「ちょっと待って!今日はまだ作らないで。メニュー、見せてね」

「あっ! そうでした!」

フライパンを手にしたまま固まる私を見て、常連さんは大笑い。奥のテーブル席のお客さんたちまで笑い出しました。

私も恥ずかしくなりながら、メニューを差し出しました。

常連さんはしばらくメニューを眺め、「うーん」と迷っています。

そして、ようやく顔を上げて言いました。

「……やっぱり、いつもので!」

「ええっ!結局それなんですね!」

思わず笑ってしまいました。

それからというもの、常連さんは店に入ると、決まって片手を上げて言うようになりました。

「今日はまだ作らないでね!」

「はい!ちゃんと聞いてから作ります!」

それが、私たちのちょっとおかしなあいさつになったのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ