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隣に越してきた女性の挨拶に、目をそらし続けた私→管理会社からの電話で決めていたこと

  • 2026.10.28
ハウコレ

隣の部屋のドアに、鈴のついた鍵がささったままになっていました。チャイムを押すべきか、私はしばらく迷いました。隣の人とは、必要なこと以外は話さないと決めていたからです。

1年ほど前、管理会社から電話がありました。当時お隣に住んでいた若い女性が、私に話しかけられるのを負担に感じている、という相談でした。

管理会社からの電話で決めたこと

2階の角部屋に住んで10年以上。隣の住人には、自分から声をかけるのが当たり前だと思っていました。当時の隣の女性にも「荷物、届いてましたよ」「毎日がんばってるね」と、会うたびに話しかけていたのです。

電話を切ってから、自分の言葉を思い返しました。年の離れた男に毎回呼び止められる側の気持ちを、一度も考えたことがありませんでした。

その女性が引っ越していったあと、私は決めました。次に隣に来る人とは、必要なこと以外は話さない。

「どうも」だけで閉めたドア

新しく越してきたのは、20代くらいの女性でした。引っ越してきた日に、タオルの包みを持って挨拶に来てくれたのです。

「こんにちは。隣に越してきた者です。よろしくお願いします」

はきはきとした声でした。こちらこそ、と言いかけて、あの電話を思い出しました。口から出たのは「どうも」だけ。包みを受け取って、ドアを閉めました。

それからも隣の女性は、階段や集合ポストで会うたびに「こんにちは」と頭を下げてくれました。私の返事は、ちらりと目をやるだけ。少し大きな声で挨拶された日も、返事をしないまま部屋に入りました。

ゴミ置き場で振り返ると、袋を提げたまま階段を引き返す隣の女性の背中が見えたこともあります。避けられていると分かっても、これでいいのだと言い聞かせていました。

鈴のついた鍵と、聞けなかった言葉の続き

ある日、仕事から帰ると、隣の部屋のドアに鍵がささったままになっていました。鍵穴の下で、小さな鈴が揺れていました。

放っておくわけにはいかない。けれど、隣の女性の部屋のチャイムを押すのは、あの電話以来、一番避けてきたことでした。ドアの前でしばらく迷ってから鍵を抜き、チャイムを押しました。

ドアが開くと、私は手のひらにのせた鍵を差し出しました。

「鍵、ささったままでしたよ」

「すみません、ありがとうございます」

隣の女性がそう言って鍵を受け取ると、鈴が小さく鳴りました。

「あの、いつも」

何か言いかけた隣の女性を、私は「気をつけて」と遮りました。話し込めば、また同じことになる。そう思って、すぐに部屋へ戻りました。

そして...

翌日、外階段で隣の女性に「こんにちは」と声をかけられました。私はまたちらりと見ただけで、階段を下りてしまいました。

あのとき聞けなかった「あの、いつも」の続きは、たぶん文句ではなかった。そんな気がしていました。

数日後、集合ポストの前で隣の女性と会いました。「こんにちは」と言われて、今度は顔を上げて「こんにちは」と返しました。

隣の女性は一瞬目を丸くしてから、笑って頭を下げました。話しかけないことが気づかいだと思っていましたが、挨拶を返すくらいなら、誰の負担にもならなかったのです。

「あの、いつも」の続きは、まだ聞けていません。それでも、聞く機会はこれからいくらでもあります。お隣なのですから。

(60代男性・設備管理)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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