1. トップ
  2. エピソード
  3. 後輩をかばった10年前の私には、言えずに消した続きがありました

後輩をかばった10年前の私には、言えずに消した続きがありました

  • 2026.10.25
ハウコレ

「先輩、あの発注を入力したのは私です」。後輩から届いた個別のメッセージに、本当は続けて送るつもりの言葉がありました。打っては消して、手元に残ったのは短い返事だけです。

誰もいなくなったフロアで、パソコンの通知音が鳴りました。グループチャットに届いたのは、新人の後輩が入力した発注についての課長のメッセージです。返信を打つ前に、私は別の画面を開いていました。

承認画面に残っていた私の名前

教育係として、後輩の入力はすべて私が確認してから送る決まりでした。開いたのは、その発注の承認画面です。確認者の欄には、私の名前が入っていました。

その日は承認待ちが何件も重なっていて、前回と同じ品目だからと、数量の列を見ないまま確定を押していたのです。課長の「入力したのはどなたですか?」を読み、後輩がまだ名乗っていないのを確かめてから、返信を打ちました。

「私がやりました。先方には明日すぐに連絡して訂正します。申し訳ありません。」

本当は、続けるつもりだった言葉

後輩から個別のメッセージが届いたのは、それから少しあとです。

「先輩、あの発注を入力したのは私です。私から課長に言います」

本当は、確認を飛ばしたのは私だと続けるつもりでした。教育係が見ていなかったと知れば、後輩はこの先、私の確認を当てにできなくなる。そう考えたのか、ただ格好がつかなかっただけなのか。打っては消して、残ったのは短い返事だけです。

「いいの。明日、少し早めに来られる?電話、隣で聞いてて」

翌日、先方への電話を終えて、後輩に「数量は、送る前にもう1回見てね」と伝えました。自分の分は、一言も足せないまま。課長にだけは、そのあと確認を飛ばした経緯を話しました。

後輩から届いた、あの日と同じ文

後輩が新人の教育係を任されたことは、3年前に別の支店へ移る前に聞いていました。それからのやりとりは年に数回。久しぶりの通知を開くと、こう書かれていました。

「今日、後輩のミスで、先輩と同じ文を打ちました。私がやりました、って」

後輩が教育係なら、新人の登録を確認して通したのもきっと後輩です。同じ文を打ったのなら、理由も半分は私と同じなのだろうと思いました。

そして...

最初に打ったのは、10年前の承認画面のことでした。確認者の欄に私の名前があったこと。数量を見ずに確定を押したこと。読み返すと言い訳のように見えて、送信欄からは消しました。

「そっか。確認したのは、あなただったんだね」

送ったのは、それだけです。消した文はメモ帳に移して、まだ後輩には送っていません。

(40代女性・営業事務)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ