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お餅だけじゃない…「パン」も同等に危険! 高齢者が“むせる間もなく”窒息する理由を法医学者が解説

  • 2026.10.23
柔らかく食べやすいはずの「パン」が高齢者の窒息事故を引き起こす? 5000体以上を検死・解剖してきた法医学者・高木徹也氏が、パンが餅と同じくらい窒息につながりやすい理由と、食事中に注意したい異変を解説します。(画像出典:PIXTA)
柔らかく食べやすいはずの「パン」が高齢者の窒息事故を引き起こす? 5000体以上を検死・解剖してきた法医学者・高木徹也氏が、パンが餅と同じくらい窒息につながりやすい理由と、食事中に注意したい異変を解説します。(画像出典:PIXTA)

食欲の秋。焼きたてのパンが恋しくなる季節ですが、高齢の家族に「柔らかいから食べやすい」と勧めていませんか? 窒息事故というと餅を思い浮かべがちですが、パンにも命を奪う危険があります。

一見すると食べやすそうなパンには、窒息につながる見落としがちな特徴があります。さらに高齢者の場合、食べ物を詰まらせても、周囲が異変に気付きにくいことがあるといいます。

5000体以上を検死・解剖してきた法医学者・高木徹也さんの著書『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)から一部抜粋し、パンによる窒息の仕組みと、食事中に注意したい異変を紹介します。

高齢者は「むせ」が起こらず、窒息することも

厚生労働省の統計によると、日本で食べ物をのどに詰まらせて亡くなる人の数は、年間3500人以上。そのうち、なんと2500人以上が80歳以上とされています。

そもそも人体の構造上、食べ物を胃に通す「食道」の入り口と、呼吸のために空気を肺に通す「気道」の入り口はお隣同士。

食べ物が気道に向かわない理由は、見た目や匂いから「食べ物である」と脳が認識し、舌やのどの動きで食べ物を食道に運んでくれるからです。さらに、のどの奥にある「喉頭蓋(こうとうがい)」は、食べ物と空気を分ける役割を持っています。

このように、私たちの身体は誤嚥(ごえん)させまいとする対策がバッチリなわけですが、それなら、なぜ人はむせるのでしょうか?

「むせ」は誤嚥を防ぐ正常な反射

実は「むせる」のは、脳の認識不足や咀嚼が不十分なときに、気道に食べ物が侵入するのを防止する正常な反射なのです。医学的には「咳嗽反射(がいそうはんしゃ)」といい、人はむせることによって誤嚥を防いでいます。

ところが、高齢者は「むせ」が起こらず、食べ物をのどに詰まらせて死んでしまうことがあるのです。

歳を重ねると噛む力が低下し、人によっては歯周病などで歯の本数も減ります。そのため、食べ物を小さくしにくくなり、のどに詰まりやすくなります。

また、加齢による動脈の硬化症も問題です。脳血流量の低下によって微細な脳梗塞を起こすことがあり、これは命に関わるほど重篤なものでなくても、咀嚼や飲みこみの機能を悪化させ、咳嗽反射も低下させることがわかっています。

このように、食べ物が気道に向かってしまっても、さまざまな要因で防御反応である「むせ」が起きず、食べ物が気道を塞いで窒息に至ってしまうのです。

パンの柔らかさに、油断するな

日本人がのどに詰まらせる代表的な食べ物と言えば「お餅」です。

お年寄りがお餅をのどに詰まらせて……というニュースを新年早々に見かけることは珍しくありません。なんと、海外では「ニューイヤー・サイレントキラー(新年の静かなる殺し屋)」などと揶揄されています。たしかに、お餅はモチモチしていて、咀嚼によって細かくしにくいですよね。

しかし、実はお餅と同じくらい、窒息しやすい食べ物があります。

それは「パン」です。

一見詰まらせにくいように思えますが、パンは繊維質なので、噛む力が低下した高齢者にとっては細かくしにくい食べ物になります。

また、スポンジ状のため、ひとたび気道のほうに留まるとかなり危険です。水分を吸いこんで膨らみ、気道の入り口を完全に塞いで窒息させます。

食事中に聞こえる「ギュッ」という音に注意

高齢になればなるほど、どんな食べ物でも油断できません。

ちなみに、気道に食べ物が入っていくときには、「ギュッ」という独特の飲みこむ音がします。

一緒に食事をしているときに相手からこのような音が聞こえたら、口の中をすぐに確認して、呼吸が変わっていないかを確かめてください。

◎このような危険を避けるには……
・詰まらせやすい食べ物は、あらかじめ細かく刻んでおく。
・周囲の人が見守っているところで食事をする。
・飲みこむときの「音」に注意する。
著者:高木徹也(法医学者)
1967年、東京都生まれ。杏林大学法医学教室准教授を経て、2016年から東北医科薬科大学教授。高齢者の異状死や浴槽内死亡事例などを研究し、東京都監察医務院非常勤監察医、宮城県警察医会顧問なども務める。これまでに5000体以上を検死・解剖している。
文:高木 徹也

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