1. トップ
  2. エピソード
  3. 「ここに傷があるのよ」目の前で謝罪文を破った男性。だが、セール品の交換を求めて夫婦に示した写真

「ここに傷があるのよ」目の前で謝罪文を破った男性。だが、セール品の交換を求めて夫婦に示した写真

  • 2026.10.23

夏祭りのセールで売った小さなかばん

以前、私は婦人服の店で責任者をしていました。

店では年に1回、夏祭りに出店し、過去の商品を安く販売していました。

セール品は原則として返品・交換不可で、購入時には必ずその点を説明し、了承をいただいていました。

それから半年ほどたった、ある日の昼のことです。

年配の夫婦が来店し、奥さんがレジ台に小さな肩かけのかばんを置きました。

「これ、夏祭りで買ったんだけど、ここに傷があるのよ。新しいのに替えてちょうだい」

確かに、指さされたところには傷がありました。

ただ、かばん全体にも使い込まれた跡があり、その傷がいつ付いたのかまでは分かりません。

私はレジの内側から頭を下げました。

「申し訳ありません。夏祭りの商品は、原則として返品・交換をお受けしていないんです。それに、同じ商品の在庫もございませんので…」

すると、隣にいた旦那さんがレジ台に手をつき、身を乗り出しました。

「傷物を売っておいて、その言い方はないだろう」

「そうよ。こっちは客なのよ。ちゃんと誠意を見せてちょうだい」

私は何度も事情を説明しましたが、夫婦は納得しません。

ほかのお客様が会計に来てもレジの前を譲ろうとせず、対応は一向に終わりませんでした。

目の前で破られた謝罪文と、一枚の写真

やがて旦那さんは、レジ台を指でたたきながら声を荒らげました。

「もういい。謝罪文を書け」

私は戸惑いましたが、これで少しでも話が落ち着くならと思い、便せんを取り出しました。

夫婦の目の前で謝罪文を書き、差し出すと、旦那さんは封筒を示しました。

「封筒に入れろ」

言われたとおりに封筒に入れて渡した、その直後です。

旦那さんは、私の目の前で封筒を音を立てて破りました。

「えっ…」

思わず声が漏れました。奥さんは腕を組んだまま、薄く笑っています。

謝罪文を書いても、話は終わりませんでした。

そのとき私は、事務所に保管してある夏祭り当日の売り場の写真を思い出したのです。

事務所から写真を持って戻ると、私は一枚をレジ台に置きました。

「すみません。こちらを見ていただけますか」

写真には、夏祭りの売り場が写っていました。そして、目立つ場所には「返品・交換不可」の大きな掲示があります。

「こちらが当日の売り場です。このように掲示を出していました。お買い上げの際にも、お一人ずつご説明していたんです」

旦那さんは写真を見つめ、何か言おうと口を開きました。しかし、言葉は続きません。

奥さんも、先ほどまでの勢いがなくなり、黙って写真を見ていました。

私は改めて、落ち着いて伝えました。

「傷がいつ付いたのかは、こちらでは判断できません。ただ、お使いになった跡もありますし、同じ商品の在庫もないため、交換はできないんです。申し訳ありません」

しばらく沈黙が続いたあと、旦那さんはかばんをつかみました。

そして、奥さんと一緒に何も言わず店を出ていきました。

私はレジで待っていたお客様たちに向き直り、深く頭を下げました。

「大変お待たせいたしました」

説明を続けた末に、ようやく終わったやり取り。最後に見せた一枚の写真が、話を終えるきっかけになったように感じました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ