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「最近、返事短くてごめんね」電波の届かないキャンプ場で、母に宛てて打ち続けた60件のメッセージ

  • 2026.10.24
ハウコレ

すぐには届かないと分かっているからこそ、普段は打てない言葉がすらすら出てきました。山を下りて電波が戻ったとき、画面に並んでいたのは母からのメッセージでした。

「うん」しか返さなくなった理由

春から1人暮らしを始めて、母とのやりとりはどんどん短くなっていきました。「ちゃんと食べてる?」には「うん」。ほかのメッセージにも「了解」「大丈夫」。

友達が親からの連絡を軽く受け流すのを見て、いちいち報告するのは子どもっぽい気がしていたのです。

出発前には、母に予定を知らせるメッセージを打ちました。

「明日から2日間、ゼミのフィールドワークで山奥のキャンプ場に行ってくるね。電波が入らないかもしれないから、返信遅れると思う」

送信したつもりで、届いたかどうかは確かめませんでした。

届かない画面に、打ち続けたメッセージ

キャンプ場では、スマホの電波が入りませんでした。昼間はゼミの仲間と植物を調べ、日が暮れるとみんなでカレーを作ります。

誰かの提案で隠し味にチョコレートを入れると、実家で母が作ってくれる味によく似ていました。写真を撮り、母にメッセージを打ちます。

「隠し味にチョコ入れたら、お母さんが作るカレーの味になった!」

画面には送信待ちの表示。それでも、忘れないうちに伝えたかったのです。

星空の写真。調査中に見つけた植物。先輩に教えてもらったこと。普段なら送るほどでもない出来事を、次々にメッセージにしました。

その中には、照れくさくて送れずにいた言葉もありました。

「最近、返事短くてごめんね」

2日間で、送信待ちのメッセージは60件になっていました。

山を下りて鳴りやまなかった通知

山道を下る途中で電波表示が戻ると、送信待ちだった60件が次々に送られていきました。入れ違いに、スマホが何度も振動します。

母からでした。

「ちゃんと食べてる?」から始まり、「お願い、一言だけ返して」。そして、「これ以上連絡がつかなかったら、大学に連絡するね」。

送った60件をさかのぼると、最初にあったのは出発前の予定のメッセージでした。あの連絡は、届いていなかったのです。母は、私がキャンプに行ったことも知らないまま、2日間待っていたのでした。

そして...

慌てて「ごめん、今山を下りて電波戻った。行く前のメッセージ、送れてなかったみたい」と送りました。

すぐに既読がつき、母から返事が届きました。

「よかった。全部ゆっくり読むね」

その言葉で、あの60件をこれから母が読むのだと気づきました。カレーのことも、星空の写真も、「最近、返事短くてごめんね」と書いたことも。母がどんな顔で読むのか想像すると、少し恥ずかしくなりました。

今でも母から「ちゃんと食べてる?」と届けば、「うん」と返すことがほとんどです。でも、たまに写真を添えて、その日の出来事を送るようになりました。

あの60件に何が書いてあったか、母から改めて聞かれたことはありません。それでも、次に実家へ帰ったら、キャンプで食べたカレーの話をしようと思っています。

(20代女性・大学生)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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