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「スタッフ同士の挨拶が聞こえてきて、気が散るの」読書中の客からの苦情。だが、店長と常連客の言葉を聞いて黙った

  • 2026.10.22

いつもの挨拶に向けられた苦情

飲食店で働いていたころの話です。

私の勤めていた店には、出勤したスタッフが、先に働いているスタッフ一人ひとりに挨拶して回る決まりがありました。

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

その日の昼前も、エプロン姿の男性スタッフが、奥の通路でほかのスタッフに順番に挨拶をしていました。

私は客席の通路で、空いたお皿を下げていたところです。

窓ぎわの席には、30代くらいの女性客がひとりで座っていました。

食事をしながら本を読んでいたのですが、挨拶が聞こえるたびに奥をにらみ、ため息をついていました。

すると突然、女性客が私を呼び止めたのです。

「ちょっと、店員さん」

「はい、いかがなさいましたか?」

女性客は本を閉じると、不機嫌そうに私を見上げました。

「スタッフ同士の挨拶が聞こえてきて、気が散るの。謝ってよ」

「えっ……挨拶の声、ですか?」

思いがけない苦情に、私は戸惑いました。

「そうよ。こっちはゆっくりしたくて来てるの。お客さんが困ってるんだから、何か言うことないの?」

女性客はテーブルを指でたたきながら、少しずつ声を大きくしていきます。

挨拶の声が気になったという気持ちは分かります。ただ、スタッフが大声で騒いでいたわけではありません。

どう答えるべきか迷っていると、近くの席のお客様もこちらを見始めました。

私は通りかかったスタッフに頼み、店長を呼んでもらうことにしました。

店長が譲らなかったこと

厨房から出てきた店長は、私の隣に立ち、女性客の話を最後まで聞きました。

そして、落ち着いた声で答えました。

「お声が気になったとのことですね。ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」

「でしょう?だったら、もうやめさせてよ」

女性客は当然といった様子で言いました。

しかし、店長は首を横に振りました。

「ただ、スタッフ同士の挨拶は、当店で大切にしていることなんです。挨拶そのものをやめさせることはできません。ただ、声の大きさなどは配慮させていただきます」

「はあ?客が迷惑だって言ってるのよ。それなのに?」

女性客は納得できない様子で身を乗り出しました。

そのときです。

近くの席に座っていた、60代くらいの常連のお客様が口を開きました。

「私は、ここの挨拶って気持ちいいと思うけどね。だから毎週来てるのよ」

穏やかな声でしたが、女性客にもはっきり聞こえたようです。

ほかの席でも、小さくうなずくお客様がいました。

女性客は何か言いかけましたが、言葉が続きません。周囲を見回したあと、視線を落としました。

そして、それ以上は何も言わず、食事を続けたのです。

私は結局、自分から謝罪の言葉を口にすることはありませんでした。

店長はお客様が不快に感じたことには謝りましたが、挨拶自体を悪いことだとはしませんでした。その対応を見て、私も少しほっとしました。

翌日、出勤した私は、いつもどおりスタッフに挨拶して回りました。

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

普段と同じつもりでしたが、その日の声は、いつもより少しだけ大きくなっていた気がします。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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