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彼女から届いた手帳の写真に、俺が言えずにいた話の答えが書いてあった

  • 2026.10.23
ハウコレ

1枚の写真が届いたのは、既読がついてしばらく経ってからでした。拡大した画面のいちばん下に、小さな字で書かれた言葉を見つけました。

上司から手渡された紙には、行ったこともない県の支店名が書かれていました。転勤の内示でした。その帰り道、内示の紙を鞄に入れたまま、俺は彼女に送る言葉を選び間違えました。

同僚の質問に笑ってごまかした日

内示の出た日、部署の同僚たちが飲みに誘ってくれました。「彼女はついてくるの?」と聞かれ、グラスを持ったまま笑ってごまかしました。

3年付き合ってきたのに、彼女の口から将来の話を聞いたことはほとんどありませんでした。こちらから聞いても「そのうちね」と流されてきたのです。仕事を辞めてまでついてきてほしいとは、とても言い出せませんでした。

断られるのが怖かったのだと思います。

確かめるつもりで送った言葉

駅までの道で、「この先どうしたいとか、考えてる?」と送りました。

返ってきたのは「うーん、まあなんとかなるでしょ」。

その返事を読んだとたん、鞄の中の内示の紙が頭に浮かびました。気づけば「お前とは将来が見えない」と打ち、送信していました。普段は使わない呼び方でした。

本当に将来が見えていなかったのは、俺のほうでした。転勤先での暮らしも、そこに彼女がいるかどうかも、何も思い描けていませんでした。自分の迷いを、彼女の返事のせいにしたのです。

既読がついてから、しばらく返事はありませんでした。取り消す言葉を探しているうちに、1枚の写真が届きました。

写真のいちばん下にあったもの

手帳の見開きでした。左側には「Webデザイン講座」の見出しと月ごとの勉強時間が並び、右側には「2年後:どこにいても働ける状態に」とありました。添えられていたのは「これ、1年前から続けてる」。

彼女が講座を受けていたことを、俺は何も知りませんでした。

画面を拡大すると、ページのいちばん下に、小さな字で「形になったら、話す」と書かれていました。

どこにいても働ける状態に。その行を繰り返し読みました。転勤の話を切り出せなかったいちばんの理由に、彼女のほうから別の答えが書かれている気がしたのです。

返事を打っては消し、ようやく送れたのは「え、これ全部ひとりでやってたの?」でした。続けて、「ごめん、さっきのは取り消させて。今度会ったとき、俺の話も聞いてほしい」と送りました。

そして...

「うん、聞く。私もちゃんと話すね」と返ってきたのは、それから少しあとでした。

次に会う日は決まりました。けれど、転勤のことをどう切り出すか、答えは出せずにいました。内示の紙は、折り目がついて鞄の内ポケットに入っていました。

スマホのメモに残る、「一緒に来てほしい」と打ちかけたままの文。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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