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失敗と検索の果てに見つけた絶景が最高過ぎた!【カナダ・ウィスラー】清水みさとの旅エッセイ

  • 2026.10.20

訪れた国は50カ国。サウナと旅をこよなく愛するタレント・モデル・俳優の清水みさとさんの連載エッセイ。今回は、山々とエメラルドグリーンの湖とが生み出す絶景リゾート【カナダ】はウィスラーでのお話。

【連載】清水みさと「旅をせずにはいられない」vol.13 行けなかった、湖のその先で

初めて海外に行ったとき、わたしは一体どんなことを考えていたんだろう。見慣れない街並みや聞き取れない言葉にいちいち驚いて、どこへ行くにも緊張していた気がするけれど、どうやら旅が好きだったらしいわたしは、なんやかんやと旅を重ねて、いつの間にか50カ国目になっていた。
 
これだけ旅をしてきたのだから、さぞ旅上手になっただろうと思いたいところだけど、残念ながらそうでもない。物はなくすし、間違えるし、行きたい気持ちが先走り、大事なことを調べ忘れて予定がパーになることだって普通にある。
 
それでも旅がやめられず、懲りないわたしが50カ国目の目的地に選んだのは、カナダのバンクーバーだった。

お笑い芸人の光浦靖子さんや、作家の西加奈子さんが暮らしていると知ってからずっと気になっていたバンクーバーは、街中を歩き始めてあっという間に好きになった。
 
ビルの向こうに山が見え、立派な緑が生い茂り、少し歩けば海まである。都会の便利さと自然の豊かさを丸ごと抱きしめたようなこの街は、行き交う人までどこかのびのびとしていて、カフェでも街中でも気さくに声をかけてくれる雰囲気も、なんだかすごく心地よかった。

バンクーバーのカフェ兼グローサリーストア「The Federal Store Luncheonette & Grocer」

このままもう少しバンクーバーで、街のぬくもりに身を委ねていたいと思ったけれど、今回の旅の大本命は残念ながらここじゃない。後ろ髪を引かれる思いで、早々にバンクーバーに別れを告げ、レンタカーを借りて北へと車を走らせた。

ついさっきまで街中にいたはずなのに、いつのまにか自然の真っ只中を走っていてびっくりした。カナダのそのスケール感にひたすら圧倒されながら、約2時間。スキーリゾートの聖地として知られるウィスラーに到着した。

9月のウィスラーに雪はなく、ハイキングやマウンテンバイクを楽しむ人たちで賑わうアウトドア天国になっている。だけどわたしのお目当ては、登るでも走るでもなく、さらにその先にある景色だった。

バンクーバー冬季オリンピックのレガシーとしてつくられた「ウィスラー・オリンピック・プラザ」

ジョフリーレイク。氷河を抱く山々のあいだに、鮮やかなエメラルド色の湖が広がるその存在を知ったのは、何気なく眺めていたインスタグラムに、ある日突然その写真が流れてきたからだった。
 
ひと目で心を撃ち抜かれたわたしの好みをすっかり理解したのか、今度はバンクーバーの景色をこれでもかと送り込んでくるアルゴリズム。それがまたいちいち素敵で、そういえばカナダに行ったことないじゃん、と気づいたころには手遅れで、もう完全に「アルゴリズムの犬じゃん」(ヤバイTシャツ屋さん)と思いながら、まんまとバンクーバー行きを決めたのだった。

「% Arabica(アラビカ)」のウィスラー店

ウィスラーにもアラビカコーヒーがあることに驚き、コーヒー片手に、ようやく明日に迫ったジョフリーレイクへの行き方を調べていたら、急に不運。なんと滞在中はずっと閉鎖されていることが発覚した。しかも昨日今日の話ではなく、そもそも9月は丸っと一ヶ月閉鎖するのはすいぶん前から決まり切ってることだった。
 
がーん、だった。ここまできて、まさかの立ち入り禁止。誰が悪いって確実に調べていないわたしが悪いけど、あの湖に誘われるがまま2週間前に決めたカナダ旅。仕事をずらし、海を越え、車を走らせ、はるばるここまでやってきたのだから、さすがに一瞬落ち込んだ。
 
とはいえ、落ち込んだところで湖が開くわけでもなく、わたしの旅はまだ続く。せっかくここまできたのだから、悔やんでなんていられないので、AIに聞き、Instagramを漁り、Googleで検索し、あらゆる手段で次なる絶景を探し求めた。でも、どうしてもジョフリーレイクと比べてしまって何を見てもいまいちピンときてくれない。

それでもあきらめの悪いわたしは、Googleマップを開き、車で片道3時間以内の湖を片っ端からあたっていくことにした。そうやって、マップを開いて閉じてを繰り返していると、ウィスラーから約2時間半のところにSeton Lake(セトン湖)という湖があり、その近くに「Seton Lake Lookout」という場所を見つけた。
 
「Lookout」、つまり展望台。なにげなくクリックすると、口コミは少ないものの、そこには山と湖の間をモナコのF1コースさながらに美しいカーブを描く一本の道が写っていた。
 
 
こんな景色、見たことない。写真通りの景色が待っているかはわからないけど、もう十分行ってみたいと思えたので、急遽明日の行き先をここに決めた。
 
翌朝、さっそくセトン湖へと車を走らせていると、突然、視界の端にひときわ鮮やかな青が飛び込んできた。湖だった。

思わず車を停めて駆け寄ると、青とも緑ともつかない色の湖で、太陽の光を浴びた水面には、ティンカーベルが飛び回った後みたいなキラキラが一面に散らばっている。
 
この日は雲ひとつないフルスクリーンの青空で、ちょうど太陽が高いお昼どき。色も輝きも絶好調で、まるでこの瞬間に出くわすためにここまで来たみたいだった。

思わぬ寄り道をしつつも、その後セトン湖にも無事到着。
 
駐車場に車を停め、道路を渡って湖とは反対方向の小さな森の中へ進んだ。ネットの片隅で見つけた、あまり読まれていなさそうな数年前のブログの情報を頼りに、山道を登ること20分。
 
木々の間を抜けると、ほんとうに、あの写真の景色が現れた。

岩山に囲まれたセトン湖と、深い緑の木々の隙間を縫うように大胆なカーブを描く一本の道。自然が作った壮大な景色に、人間が作ったコンクリートの曲線があまりに美しく溶け込んでいるもんだから、ときどき走る車がおもちゃに見えた。
 
もしもわたしが広告代理店で働いていたら、絶対ここで車のCMを撮りたい。そんな勝手な企画まで思いついてしまうほど、見れば見るほどおもしろくて、美しくて、感動と邪念が入り乱れながら、一生忘れない景色になることだけはわかった。

偶然に身を任せる旅が好きだけど、50カ国目にして気がついたのは、わたしはただ幸運を待ってるわけでもないらしい、ということだった。
 
今回出会えた美しい景色だって、諦めきれずに地図上で探し回り、何時間も車を走らせたから出会えたわけで、偶然を愛するなんて美しい言葉だけでは片付かない、自分の旅も人生も、絶対おもしろいものにしたい、というちょっとした執念がわたしにはあるんだと思う。
 
ちなみに帰国してから知ったことだけど、ジョフリーレイクは、開いている時期でも事前の入山パスが必要で、人気が高く、ほとんどパスが取れないらしい。つまり閉鎖してなかったとしても、そもそも行けなかったという始末! これに関しては、やらかした、偶然だなんて言ってる場合でもなんでもなく、わたしの不注意である(反省)。

帰りの飛行機で窓の外を眺めると、名前も知らない山々がどこまでも折り重なり、その向こうで沈みかけた太陽が、空も海も金色に染めていた。
 
なんて地球は美しいんだろう。次は地球のどこへ行こう。そんなことを考えているうちに、帰国もしていないのにもう次の旅が始まりそうになっていた。
 
遠足は帰るまでが遠足です、というけれど、わたしはどうやら、ずっと旅の途中にいるみたい。

photograph & text:MISATO SHIMIZU

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