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渦中にあった人たちの声を正確に残すことの重要さがズドンときた。西川美和監督最新映画『わたしの知らない子どもたち』

  • 2026.10.17

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、ネタバレ上等な私見&本音でおすすめしますよ〜。

よしひろさん、「きのう何観た?」 『わたしの知らない子どもたち』

story 第二次世界大戦直後の東京。孤児となった12歳の琴子(小八重葵美)は、安全な生活のために少年・茂男として生きることを選ぶ。一方、琴子の疎開中の担任教師・曽根(二階堂ふみ)は、彼女を探す旅に出るのだが……。
監督・脚本:西川美和/出演:小八重葵美、二階堂ふみ、坂東龍汰、櫻井海音、吉田羊、竹野内豊、岡田准一、田中裕子、役所広司 ほか/配給:K2 Pictures/公開:現在、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー中
©2026 K2 Pictures・AOI Pro.

ネタバレではなくネタ元? 取材こぼれ話

今年の邦画って、じつは戦争の記憶の再検証をしてる作品がドドンときてるのよね。塚本晋也監督の『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』はベトナム戦争でのPTSD(これ、紹介しそびれたんだけど、とんでもねー傑作ですので、お近くの劇場でやってたら即観て!)、怪獣映画の『ゴジラ-0.0』はじつは裏テーマが戦後日本の混乱、そして『わたしの知らない子どもたち』は第二次世界大戦の戦争孤児。ということで、『わたしの知らない〜』をぜひともご覧いただきたく〜。西川美和監督が前作『すばらしき世界』のリサーチで得たアイデアをもとに、オリジナルで描き下ろした作品です。おかわりしてきました。

孤児たちのお仕事元締め役、岡田准一さん。琴子を演じた小八重さんいわく「すごいイケメンでしたー」(V6時代を知らない女子の意見)。

これ、ネタバレというよりも、裏エピソードがすごかったのよ。まず戦争孤児。主人公の琴子は、音楽一家の比較的恵まれたお育ちの少女。ところが疎開してる間に、両親は音信不通になり、バイオリンが上手なお兄ちゃんは戦地から戻ったものの、PTSDで●●。琴子はひとりぼっちで戦後の東京で生きていくことになっちゃうのね。残酷過ぎる運命……。さて、ここでポイント〜。戦争孤児って知ってました?
 

あたしの世代の幼少期、繁華街にはホームレスの傷痍軍人がいたり、それこそ戦争経験者の両親や祖父母がいたりしたので、実際には観たことがなくても存在は知っていた戦争孤児。大方の方は、もうその記憶どころかリサーチ文献に積極的にアクセスすることが少ないというかほぼ皆無なのよね。そこに着目してこの物語を作った西川監督、マジすごい。
 
『すばらしき世界』には原作のノンフィクション小説『身分帳』があるんだけど、それが今作のアイデアのもととなったのね。役所広司さん演じる正夫は、人生の大半を暴力団と刑務所で過ごして、自立を目指しているキャラなんだけど、このモデルになった人物が、まさに戦争孤児だったんですって(ちなみにこの原作も作者の佐木隆三さんがモデルになった本人から見せられた真っ白な戸籍謄本に驚いたのがきっかけで、執筆を始めたという経緯があります)。
 
西川さんから聞いたお話で、そこからのリサーチがこれまた興味深いのよ。劇中で坂東龍汰さんが演じている諸積記者にも着想したモデルがいて、その記者がとった取材録が大きく役に立ったんですって。劇中では諸積さんが収容施設にいる戦争孤児の暮らしを取材、記事化するっていうくだりになっているんだけど、元になったネタはそんなルポルタージュだったんですって(そんなものが存在したの!? と思うんだけど、本当に出版されて国会図書館に収蔵されているそうです)。戦争孤児たちの生の声を文字で残したモデルの記者、マジえらい。というか、これこそジャーナリズム。

琴子を探す先生役の二階堂ふみさん。この映画が20年前に作られてたとしたら、おそらく琴子役は二階堂さん確定! ってくらい、小八重さんの存在感と似てるの。

この映画、激動の時代に名も無き子どもたちの苦悩を描いた、ってとるのも正解ではあるんだけど、それだけじゃないのよー。人によって引き起こされた事件・事象とその周辺にいた人たちの声は「正確に残すこと」が重要だってこと、ズドンと落としてくれた傑作なのよね。じんわり。

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