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彼女を遠ざけたのは、1週間かけて書き直した俺の長い謝罪文でした

  • 2026.10.20
ハウコレ

おじぎをしているスタンプは、何を送っても同じものが返ってきました。1週間かけて書きためた文面を送ったあと、彼女の返事を読んで気づいたことがあります。

会議室を出てスマホを裏返すと、彼女からの通知が7件たまっていました。エレベーターを待ちながら、上から順に目を通しました。最後の1件を読み終える前に、指はもう入力欄に文字を打っていました。

会議室で言われた言葉を、そのまま

その日は、提案資料の直しに1日追われていました。会議の終わりに、上司は資料をめくりながら「お前の資料、長いし重いんだよ」と言いました。机の上では、伏せたスマホが何度も震えていました。

読み進めた彼女の文面は、いつもと変わらないものでした。パスタの写真、「今度の映画、何時の回がいい?」、上着の心配。どれにも返せていない自分が、画面の下に積み重なっていくように思えたのです。

「お前のメッセージ、重いんだけど」

送ってから、「お前」と打ったことに気づきました。彼女をそう呼んだことは一度もありません。上司の口調が、そのまま指に残っていたのだと思います。

同じスタンプしか返ってこない1週間

駅へ歩いている間に届いたのは、おじぎをしているスタンプでした。その後には何も続きません。

次の日、何もなかったように「おつかれ」と送れば、いつもの返事が来る気がしていました。届いたのは、同じスタンプです。「今日も会議だった」にも、同じスタンプが返ってきました。

謝ろうとするたびに、書くことが増えていきました。忙しかったという説明は何度も書いて、何度も短くしています。映画の時間も一度は書いたものの、答えたら何もなかったことにするようで、最後に消しました。そうしているうちに、彼女とのトークにはおじぎのスタンプだけが並んでいきました。

さかのぼったトークの一番下に

1週間がたって、書きためた文面を一晩かけて直し、窓の外が白みはじめたころに送信ボタンを押しました。書き出しには「ずっと謝れなくてごめん。長くなるけど読んでほしい」と打ち、途中には「重いって書いたけど、その重さに助けられてたのは俺のほうだった」とも書いています。

少しうとうとしてスマホを見ると、返事が届いていました。

「ちゃんと読んだよ。少し時間ちょうだい」

読み返すうちに、トークを上へさかのぼっていました。おじぎのスタンプが並ぶ1週間の前には、数行ずつの彼女の吹き出しと、「了解」「おつかれ」ばかりの俺の吹き出し。そしてスタンプの列の一番下に、画面を埋めるほどの長文がありました。

重いと言った相手に、一番長いものを送っていたのは俺でした。謝りたい気持ちを全部読ませることで、自分だけが楽になろうとしていたのかもしれません。

そして...

「わかった。待ってる」

それだけ打って、送信しました。付け足したかった言葉は、送信ボタンの手前で全部消してしまいました。

それから、送る前に自分の文面を一度だけ読み返すようにしています。彼女とのトークは、まだ俺の送ったメッセージで止まったままです。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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