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信号のたびに手を離す彼→今日は私から繋がないと決めた帰り道、改札で彼が言った一言

  • 2026.10.19
ハウコレ

スマホのメモに引いた線が30本を超えたころ、次の青信号では自分から手を伸ばさないと決めました。改札の前で彼が口にしたのは、私が予想していたのとは別の、短い言葉でした。

商店街を抜けた先の赤信号で足を止めると、繋いでいた彼の手がするりと離れました。青に変わった瞬間、その手を取りにいくのはいつも私の役目。頭の中で数えていた数字が、また1つ増えました。

スマホのメモに並んだ線

彼とは付き合って8か月になります。デートの帰りは、私の家の最寄り駅まで手を繋いで歩くのが決まりでした。

ただ、信号で立ち止まると、彼の手は決まって離れていきました。青になって繋ぎ直すのは、毎回私のほう。

そのことに気づいた日から、スマホのメモに線を引くようになりました。私から繋いだら1本。彼から繋いだら、下の行に1本。

1か月たっても、下の行は空いたままでした。友達に話せば笑われそうで、メモのことは誰にも言っていません。それでも寝る前には、そのページを開くのが習慣になっていきました。

今日は私から手を伸ばさない

上の行の線が30本を超えたころ、一つ決めました。次の信号では、自分から手を伸ばさない。

数が気持ちの大きさなら、下の行が空いたままなのは、そういうことなのかもしれない。だとしたら、早く確かめてしまいたかったのです。

駅前の大きな交差点で、赤信号につかまりました。いつものように彼の手が離れ、その目は信号のほうへ。私は自分の両手を、カバンの持ち手の上に重ねました。

やがて信号が青に変わり、周りの人たちが一斉に歩き出しました。手を下ろしたまま、彼が動くのを待つことにしたのです。

改札の前で聞いた言葉

彼は2、3歩進んだところで、こちらを振り返りました。

「行かないの?」

「行くよ」

並んで渡った横断歩道が、いつもより長く感じられました。駅までの道も、手は離れたまま。途中で一度、彼の右手がこちらへ動きかけた気がしましたが、すぐに元の位置へ戻っていきました。

改札の前で、彼が足を止めました。

「いつも、ありがとう」

「何が?」

「なんでもない。またね」

彼はICカードをかざして、ホームへ続く階段を上っていきました。

そして...

家に帰って、スマホのメモを開きました。上の行にも、下の行にも、その日は足す線がありませんでした。

画面を見ながら、改札の前で聞いた言葉を何度もなぞりました。引くつもりだった線は、結局どこにも引かないまま。数えるのをやめたのは、あの日からです。

まだ、彼に聞けていないことがあります。手を離すのはいつも彼のほうなのに、どうして「ありがとう」だったのでしょうか。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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