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彼女に位置情報を見られていると知りながら、俺が花屋の前で5分立ち止まり続けた理由

  • 2026.10.19
ハウコレ

彼女から届いた一行に、俺はすぐには返事ができませんでした。位置情報の共有を止めれば済む話だと分かっていながら、そうしなかったのには理由がありました。

店先のバケツをのぞき込むと、白い花のつぼみが前の日より増えていました。駅から部屋へ帰る途中、この花屋の前で足を止めるのが俺の日課になっていました。その5分を彼女が地図の上で見ていることも、分かっていました。

来月のために通った店

付き合って3年になる来月、彼女に結婚を申し込むつもりでした。指輪はもう引き出しの奥にしまってあり、足りないのは花束だけでした。

付き合い始めたころ、彼女が別の街の花屋の前で「この白いの、好きなんだよね」と言ったことがありました。ラナンキュラスという名前だと、あとでこの店の店主に教わりました。

ただ、この花は入荷の日が決まっておらず、入っても数本ずつだそうでした。「毎日見に来てくれたら、いいのが入った日に取っておくよ」という店主の言葉に甘えて、仕事帰りに寄るようになりました。その日に並んだ分のつぼみの数を確かめ、色の具合を相談する。それだけで、毎回5分ほどかかっていました。

打ちかけて消した返事

ある日、彼女から「最近帰り遅くない?」と届きました。

「花屋に寄ってる」と打ちかけて、消しました。理由を聞かれたら、うまくごまかせる自信がなかったからです。結局送ったのは「そう?いつも通りだよ」でした。

位置情報の共有を止めれば、5分の寄り道は見えなくなります。設定画面を開いたこともありました。けれど急にピンが消えたら、彼女はもっと心配するかもしれない。それなら見られていてもいいと、画面を閉じました。

店先に届いた一行

その日も「駅ついた」と送り、店先でつぼみを見ていた時でした。

「今、花屋さんの前にいるよね」

すぐに既読をつけてしまったものの、何と打てばいいのか決められません。「たまたま」と打っては消し、「寄り道」と打っては消しました。店主が首をかしげてこちらを見ていたのを覚えています。

今頃、彼女は地図を見ながら返事を待っているのだろうか。そう考えると、これ以上ごまかしを重ねる気にはなれませんでした。

「ばれたか」

「来月まで、何も聞かないでくれる?」

少しして、「わかった。聞かない」と返ってきました。店主に頭を下げ、ようやく部屋の方へ歩き出しました。

そして...

あれから、彼女は一度も花屋のことを聞いてきませんでした。部屋に着いて「ついた」と送ると、いつもと同じ短い返事が届きました。

先日、店主から「これなら記念日に間に合うよ」と言われ、白い花束を予約しました。彼女がどんな顔で受け取るのかは、まだ想像がつきませんでした。

予約を済ませたあとも、帰り道には店先をのぞいてから部屋へ向かいました。

(20代男性・メーカー勤務)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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