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【インタビュー】「まったく楽しくなかった」早乙女太一さんが明かす、4歳からの葛藤と転機

  • 2026.10.17

劇団☆新感線の舞台『髑髏城の七人 LAST STAND』で、〈捨之介〉役に挑む早乙女太一さん。4歳から舞台に立ち続けて30余年。幼少期の葛藤から、劇団☆新感線との出会い、そして35歳を迎えた今、どのように人生を楽しんでいるのか。過去を抱きしめ、未来へ進む言葉を伺いました。

原点は「楽しくはなかった」幼少期の旅回り

4歳から大衆演劇の舞台に立ち続けてきた早乙女太一さん。華やかな芸能人生を想像しがちですが、幼少期を振り返る言葉は意外なものでした。

「毎日必ず公演があり、月末の休演日には自分たちで荷物をトラックに積み、次の土地へ移動します。照明や音響も自分たちで組み、翌月にはまた公演が始まる。その繰り返しでした。学校も1日2〜3時間しか行けず、友達はできませんでしたね」

それでも舞台は楽しかったかと尋ねると、「まったく楽しくなかったです」と苦笑い。

「楽しいという感覚はまったくなくて、何度も辞めたいと思いました。でも、その世界しか知らなかったし、ほかに生きる道がないと思っていたんですよね。20歳になったら役者を辞めて、バンドをやりたいと父に直談判したこともありました」

そんな過酷な日常のなかで転機となったのが、13歳の時に大衆演劇以外の外の舞台を観客として初めて目にした「劇団☆新感線」の舞台。演目は『髑髏城の七人〈アオドクロ〉』。雷に打たれたような衝撃だったと言います。

「それまで自分の劇団しか知らなかった僕にとって、新感線の舞台は衝撃的でした。時代劇でありながらロックでかっこよく、映像や漫画のようでもあり、腹から笑えるおもしろさもある。老若男女どんな人が見ても楽しめるエンターテインメントを届けている姿に圧倒されました」

その4年後、17歳で初めて新感線の舞台を踏みます。新感線に出演後、本格的に殺陣の練習を開始。新感線で学んだ見せ方や技を自分の劇団に持ち帰り、仲間に共有することで表現を磨いていきました。
今や圧倒的な美しさと迫力を誇るその殺陣は、過酷な葛藤を乗り越え、自らの手で掴み取った努力の証でもあります。

「外の世界に出たことで自分のいた場所を引きで見られるようになりました。自分が育った大衆演劇とも向き合って、今までやってきたことを活かし、変えていきたいと思うようになったんです」

苦しかった時間を否定せず、自分の糧にして表現する。その真摯な姿勢が、早乙女さんのお芝居を深みあるものにしているようです。

最後の『髑髏城の七人』で演じる〈捨之介〉。傷を抱えながら泥臭く生きる美しさ

劇団☆新感線の代表作であり、今回ついに“最後の上演”として打ち出される舞台『髑髏城の七人 LAST STAND』。過去には、同作で、〈無界屋蘭兵衛〉や〈天魔王〉を演じてきた早乙女さんが、満を持して主人公〈捨之介〉に挑みます。

「捨之介は、かつて仕えた織田信長の夢を果たす過程で多大な犠牲を生み出してしまった過去を持っています。自分のなかにある罪の意識や後悔を抱えながら、表面的にはひょうひょうと生きようとしている。でも目の前に助けを求める人が現れた時、過去の自分に向き合うように刀を抜くんです。単なる格好いいヒーローではなく、変えられない過去や後悔に向き合っていく泥臭さがあります」

本作には、完璧な人間ではなく「ダメなところや弱いところを抱えた人たち」が懸命に生きる姿が描かれていると早乙女さんは語ります。

「誰もが持っている思い出や傷、泥臭くとも純粋に生きることの美しさが作品に散りばめられています。登場人物たちの背景や葛藤には、世代を問わず共感していただけるはずです。生きることは複雑ではなく、実はすごくシンプルなことなんだと感じてもらえる作品だと思います」

劇場に足を運ぶこと自体の価値が問われる現代だからこそ、生の舞台でしか味わえない熱量を肌で感じてほしいと訴えます。

「今は家で手軽に映像を楽しめる時代ですが、生身の人間が今まさに命を懸けて劇場で生きている熱気は、そこでしか体感できません。『観に来て損はさせない』と胸を張って言える舞台ですので、ぜひ実際に劇場でそのエネルギーを感じてほしいですね」

好きな人とともに在るために、自分を磨き、舞台に立つ

30代半ばを迎え、俳優として、そしてひとりの大人として成熟した魅力を放つ早乙女さん。10代・20代の苦悩の時期を乗り越えた今、仕事や人生に対するマインドには大きな変化が訪れています。

「20代までは、誰かが作ってくれたレールを走ってきた感覚がありました。でも20代後半からは『自分で道を作っていかなければならない』と強く思うようになって。苦しかった場所を自分の手で楽しい場所に変えたいという思いで、劇団や仕事に向き合ってきました。以前は過去の経験を浄化するためのエネルギーで動いていましたが、30代になった今は未来に向けたエネルギーで動けている感覚がすごく明確です」

大人世代の読者に向けて、理想とする未来像やこれからの生き方について尋ねると、返ってきたのは、飾らない自然体な答え。

「僕の理想はすごくシンプルで、『自分が好きだなと思う人たちと一緒にいられたらいい』ということなんです。素晴らしい人たちに出会い、ともに生きるための手段として演劇をやっている感覚に近いですね。すごいと思う人と一緒にいるには、自分もそこへ行かないといけない。大切な人と空間を共有できるなら、どんな方法でもいいのかもしれないなと思っています(笑)」

芝居じゃなくてもいい。そう言いながらも、やはり舞台は人生の核です。劇団朱雀においては、大衆演劇の原点である「旅役者」として、全国各地に直接エンターテインメントと「お祭り」の高揚感を届けに行きたいという構想も語ってくれました。

「大切なのは、自分が心から好きだと思える人や環境を自分で選んでいくこと。今をシンプルに楽しむことが、これからの人生を豊かにしてくれると感じています」

過酷な環境で自らを鍛え、人生を切り拓いてきた早乙女さん。その力強い生き方は、人生の後半戦を自分らしく輝かせたいと願う私たちにも勇気を与えてくれます。

PROFILE
早乙女太一(さおとめ・たいち)

1991年9月24日生まれ。俳優。1997年に大衆演劇「劇団朱雀」の二代目として4歳で初舞台を踏む。2003年、映画『座頭市』で銀幕デビュー。2019年より「劇団朱雀」二代目座長を務める。近年の主な出演作に、舞台『TOKYO INSIDE CLUB “The Last Dance”』 『OTOGI』 (’26)、『劇団朱雀OMIAKASHI』、2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵〜桜吹雪THUNDERSTRUCK』(ともに’25)、映画『まる』、『帰ってきた あぶない刑事』(ともに’24)、配信ドラマ『イクサガミ』(’25)、【ドラマ】『BLOOD & SWEAT』(’26)、『怪物』(’25)ほか。

早乙女太一さん出演舞台 2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演 いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』

天正十年に、織田信長が討たれてから8年後。豊臣秀吉に対し、関東髑髏党を率いる天魔王が叛旗を翻す。その拠点・髑髏城の絵図面を持って逃げた少女・沙霧を救った捨之介は、色里・無界の里へ。そこで再会した無界屋蘭兵衛、そして天魔王と捨之介の間には、信長をめぐる深き因縁があった。男たちが明日を懸けて立ち向かう、劇団☆新感線の代表作にして最後の『髑髏城の七人』。

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:早乙女太一 塩野瑛久・藤岡真威人(Wキャスト) 早乙女友貴 / 柚香 光 /
片岡千之助 桜井日奈子 近藤頌利 河野まさと / 木村 了 浜中文一 粟根まこと / 山口馬木也 ほか

東京公演:2026年11月14日(土)〜12月25日(金)/新橋演舞場
長野公演:2027年1月21日(木)〜24日(日)/ホクト文化ホール
金沢公演:2027年2月8日(月)〜14日(日)/金沢歌劇座
大阪公演:2027年2月25日(木)〜3月11日(木)/フェスティバルホール

衣装協力/ジャケット ¥207,900、パンツ ¥119,900 /ともにDRESSEDUNDRESSED(DRESSEDUNDRESSED 03-6379-1214)、
その他/スタイリスト私物

撮影/天日恵美子 スタイリスト/Motoki Ogata ヘアメイク/奥山信次[barrel] 取材・文/みよしみか

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