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「一生に一回なんだから」卒園証書の授与をさえぎる両腕。撮影に夢中だった母親が、息子の言葉に気づかされたこと

  • 2026.10.16
「一生に一回なんだから」卒園証書の授与をさえぎる両腕。撮影に夢中だった母親が、息子の言葉に気づかされたこと

二つのカメラに隠れた息子の姿

息子の卒園式の日、私は園児席に座る息子の姿がよく見える位置に席を取ることができました。

ビデオカメラも用意して、息子が卒園証書を受け取る瞬間を楽しみにしていました。

ところが、式が始まって間もなく、斜め前の席に座っていた母親が両腕を大きく広げたのです。

左手には携帯電話、右手にはビデオカメラ。二つを同時に構え、自分の子どもの姿を追いかけながら撮影していました。

困ったことに、その腕が私の視界をふさいでしまいます。

少し体をずらしても、母親が撮影する角度を変えるたびに、また息子が見えなくなってしまうのです。

いよいよ卒園証書の授与が始まりました。このままでは息子の大切な場面を見逃してしまいます。

私は思い切って、小さな声でお願いしました。

「あの、すみません。もう少しだけ、カメラを下げてもらえませんか?」

すると母親は、こちらを振り向くこともなく、ため息交じりに答えました。

「一生に一回だから、ちゃんと撮りたいの」

そのまま両腕をさらに高く上げ、撮影を続けます。

確かに、一生に一度の卒園式です。でも、それは私の息子にとっても同じことでした。

やがて息子の名前が呼ばれ、私は少しでも姿を見ようと身を乗り出しました。

すると、前の母親が肩越しに言いました。

「ちょっと、うしろでごそごそしないでくれる?」

「あ……すみません」

それ以上は何も言えず、私はビデオカメラを膝に下ろしました。

息子が卒園証書を受け取るところを、自分の目でしっかり見たかったのに。残念な気持ちを抱えたまま、式は進んでいきました。

花を持ってきた息子が、母親に言った一言

式の最後には、園児たちが保護者席まで花を届ける時間がありました。

会場に拍手が広がる中、斜め前の母親のところにも、花を持った男の子がやってきました。

ところが母親は、相変わらず両手にカメラを持ったままです。

「そのまま、そのまま。こっち見て」

花を差し出そうとしていた男の子は、母親の両手を見比べました。

そして、不思議そうな顔で言ったのです。

「ママ、手があいてないよ。お花、もてないよ」

その声は、近くに座っていた私にもはっきり聞こえました。

周囲から小さな笑い声が漏れます。

母親は「あっ…」と声を出し、男の子と自分の両手を交互に見ました。

それから慌てて携帯電話とビデオカメラを椅子の上に置き、差し出された花を受け取りました。

椅子に置かれたビデオカメラは、天井を向いたまま撮影を続けています。

母親は少し顔を赤くして、花を手にしたまま視線を落としていました。

そのとき、私の前をふさいでいた腕がなくなり、ようやく息子の姿がはっきり見えました。

花を大事そうに握って、まっすぐ私のほうへ歩いてきます。

「ママ、ありがとう」

「ありがとう。うれしいよ」

私はビデオカメラを置き、両手で花を受け取ると、息子をぎゅっと抱きしめました。

卒園証書を受け取る姿を十分に見られなかったことは、今でも少し心残りです。

それでも、花を渡してくれたときの息子の表情は、はっきり覚えています。

カメラに残すことばかり考えていたら、こんなふうに顔を見つめる時間も逃していたかもしれません。

息子がくれた花を手に、私はそんなことを考えていました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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