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「どうしても欲しいんですよ」月極駐車場に停まるスポーツカーに一目ぼれした男性。管理会社に届いた思いがけない相談

  • 2026.10.17

空き区画の問い合わせだと思った電話

5年ほど前、私は不動産会社で月極駐車場の管理を担当していました。

仕事中にかかってくる電話の多くは、駐車場の空き状況や契約についての問い合わせです。

ある日の昼、事務所で書類を整理していると、外線が鳴りました。

受話器を取ると、聞き覚えのない男性の声がしました。

「お電話ありがとうございます。駐車場のお問い合わせでしょうか?」

「あ、はい。看板を見て電話したんですけど、そちらで管理している駐車場のことで…」

私はいつもの問い合わせだと思い、駐車場の地図と契約ファイルを手元に引き寄せました。

「ありがとうございます。空き区画をお探しですか?」

すると男性は、少し興奮した様子で言いました。

「いや、そうじゃないんです。あの駐車場に停まっているスポーツカー、売ってもらえませんか」

「……えっ?お車、ですか?」

思わず聞き返してしまいました。

駐車場を借りたいのではなく、そこに停まっている車を買いたいというのです。

「そうです。あの車、ずっと気になっていて。どうしても欲しいんですよ」

男性の声からは、その車への強い思いが伝わってきました。

しかし、私たちが管理しているのは駐車場であって、そこに停まっている車ではありません。

「申し訳ありません。お車はご契約者様のものなので、私どもでは販売できないんです」

「そうなんですか…。でも、なんとかなりませんかね?」

「申し訳ありませんが、当社ではお車の売買は扱っておりませんので…」

男性は残念そうでしたが、まだ諦めきれない様子でした。

車への熱い思いを語り始めた男性

「じゃあ、持ち主の方の連絡先だけでも教えてもらえませんか?」

「それも難しいんです。個人情報ですので、お伝えすることはできません」

「ああ、そうですよね…」

ようやく納得してもらえたかと思った、そのときです。

「でも、本当にいい車なんですよ。あの色も形も、なかなか見かけないんです」

男性は、今度はそのスポーツカーがどれほど魅力的かを語り始めました。

光の当たり方で違って見える車体の色、低く流れるような形、以前耳にしたというエンジンの音。

次から次へと話が続き、私は「そうなんですね」「そんなにお好きなんですね」と相づちを打つばかりでした。

向かいの席にいた先輩も、電話が長引いていることに気づいたのか、不思議そうにこちらを見ています。

男性の話がひと息ついたところで、私は改めて伝えました。

「お気持ちはよく分かりました。でも、ご契約者様のお車なので、こちらからお譲りすることはできないんです。本当に申し訳ありません」

すると、受話器の向こうが少し静かになりました。

そして男性は、先ほどまでとは違う落ち着いた声で言いました。

「……そうですよね。大切に乗ってもらっているなら、それが一番ですもんね」

最後は「変なお願いをしてすみません。ありがとうございました」と丁寧にお礼を言い、電話を切りました。

受話器を置くと、向かいの先輩がすぐに声をかけてきました。

「今の電話、ずいぶん長かったね。何かあった?」

「それが……駐車場じゃなくて、停まっている車を売ってほしいっていう電話だったんです」

「えっ、車を?うちに?」

先輩は一瞬きょとんとしたあと、思わず吹き出しました。

私もつられて笑ってしまいましたが、それだけ男性に気に入られた車が、少しうらやましくも感じられました。

それからしばらく、駐車場の見回りに行くたびに、そのスポーツカーを見ると思い出すようになりました。

「あなた、すごく好かれているんですよ」

もちろん、車に向かって口に出すわけではありません。

あの日の男性の熱い声を思い出して、心の中でそっとつぶやいていたのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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