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「そのカバン、私の方が似合うから頂戴」とベンチでねだるママ友。笑顔で渡すと、内ポケットの1枚で顔色が変わった

  • 2026.10.16
ハウコレ

欲しいと言われたら、そのまま渡そう。そう決めていた私が笑顔で差し出したのは、前の持ち主のカードを内ポケットに入れたままのカバンでした。

お迎えのあとの公園で、ママ友の目がまた私の肩のカバンに向きました。砂場では子どもたちがスコップを取り合い、ベンチには他のママたちも並んでいます。数日前から続くその視線に、もう気づかないふりはしないと決めていました。

中古のカバンを笑われた日

娘と同じ幼稚園に通う男の子のママは、人の持ち物をよくほめる人でした。ほめたあとに「それ頂戴」と冗談めかして言うことがあり、相手が困った顔をしても笑っている人でした。

数日前、同じベンチで彼女が私のカバンを指さしました。

「そのカバン、どこで買ったの?」

「フリマアプリで見つけたの」

「中古なんだ。誰が使ってたか分からないのに、よく平気だね」

周りのママたちが曖昧に笑う中、私は持ち手を握り直しました。

見覚えのあるクローバー

半年前に同じ市内から届いた茶色の革のカバンは、片方の持ち手だけ縫い目の糸が少し明るい色をしています。内ポケットには、前の持ち主が添えたカードが入ったまま。「大切に使ってもらえたらうれしいです」というメッセージの横に、葉を4枚つけたクローバーが描かれていました。

その夜、娘の机の引き出しから、先月の誕生日に彼女の家からもらったカードを探し出しました。

2枚を並べてみると、クローバーの葉の描き方も、丸みのある文字の癖もよく似ています。「誰が使ってたか分からないのに」と笑った声が、頭の中でもう一度聞こえました。ただの偶然なのかどうか、私には確かめようがありません。

ベンチでの笑い声を思い出しながら、カードを内ポケットに戻しました。自分から言い出すつもりはありません。欲しいと言われたら渡そう、とだけ決めていました。

笑顔で差し出したカバン

そして今日、彼女はベンチの端から身を乗り出しました。

「そのカバン、私の方が似合うから頂戴」

他のママたちの視線が集まります。笑ってうなずき、財布とスマホをエコバッグに移しました。

「いいよ。内ポケットに前の持ち主さんのカードが入ってるから、一緒に大事にしてあげてね」

受け取った彼女は、得意げに内ポケットへ指を入れました。カードを引き出したところで、口元の笑みがゆっくり引いていきます。

「そのクローバー、どこかで見た気がするんだよね」

私が明るい声のままそう言うと、彼女はカードを裏返してポケットに戻し、持ち手の明るい縫い目を親指でなぞりました。顔色が変わっていくのが、隣に座る私にもはっきり分かりました。

「やっぱり、返す」

差し出されたカバンに、手は伸ばしませんでした。

「一度あげたものだから」

娘の手を引いて公園を出るまで、後ろから声がかかることはありませんでした。

そして...

あの日から、彼女が誰かに「それ頂戴」と言うのを聞いていません。私の肩には今、娘が選んだ布のトートが掛かっています。

1つだけ、ずっと引っかかっていることがあります。カードを見た彼女は、真っ先に色の違う縫い目を指でなぞりました。あのクローバーを描いたのが本当に彼女なら、どうしてあんな言い方でねだったのでしょうか。

(30代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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