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「急がなくて大丈夫です」と伝えた私。山あいの町で乗ったタクシーの運転手が、突然慌て始めた理由

  • 2026.10.15

博物館の帰りに乗ったタクシー

大学院生だったころ、研究に使う古い資料を見せてもらうため、山あいの町にある小さな博物館を訪ねました。

新幹線の止まる大きな駅からローカル線で数駅。

そこからさらにタクシーで20分あまりかかる場所です。

都会で暮らしていた私にとっては、ずいぶん遠くまで来たように感じられました。

資料を見終えたころには、すっかり夕方になっていました。

博物館の近くでタクシーを拾い、後部座席に乗り込みます。

ローカル線の駅までお願いすると、60代くらいの運転手さんが穏やかに返事をしてくれました。

研究に必要な資料を確認できた満足感もあり、私はすっかり気が緩んでいました。

窓の外には、夕日に照らされた田んぼが広がっています。

そんな景色を眺めながら、私は運転手さんに声をかけました。

「あ、急がなくて大丈夫です。一本逃しても、次がすぐ来ると思うので」

普段使っている電車の感覚で、少し待てば次が来るものだと思い込んでいたのです。

すると、運転手さんがバックミラー越しにこちらを見ました。

「ちなみに、お客さんはどちら方面へ?」

「新幹線の駅までです。今日中に帰るつもりで」

運転手さんが時計を見て顔色を変えた理由

その言葉を聞いた途端、運転手さんの表情が変わりました。

ちらりと時計を見ると、少し慌てた様子で言いました。

「えっ、それなら急がないと。次の電車、あと15分で出ちゃいますよ!」

「えっ、15分ですか?」

「そうです。それを逃したら、次は2時間後なんですよ」

「に、2時間!?」

思わず声が裏返りました。

ここまで来るのに、駅からタクシーで20分以上かかっています。普通に戻っていては、とても間に合いそうにありません。

「すみません、そんなに本数が少ないなんて知らなくて…」

私が謝ると、運転手さんは前を向き直りました。

「大丈夫です。近道がありますから。ちょっと急ぎますね!」

タクシーはすばやく走り出し、私は思わず窓の上の取っ手をつかみました。

運転手さんは大通りを外れ、田んぼの間を通る細い道へと曲がっていきます。

無理にスピードを出すわけではありません。それでも曲がり角で迷うことなく、慣れた様子で車を走らせていました。

私は後部座席で時計を気にしながら、ただただ間に合うことを祈っていました。

そして、ようやく駅が見えてきました。

駅前に着いたのは、電車が来る直前のことです。

「よかった、間に合いそうです!ほら、急いで!」

「本当にありがとうございます!」

お礼を言ってタクシーを降り、慌ててホームへ向かいました。

すると、遠くから電車のライトが近づいてくるのが見えました。

どうにか乗り込むことができ、空いている座席に腰を下ろします。

ほっとした途端、先ほど自分が口にした言葉を思い出しました。

「一本逃しても、次がすぐ来ると思うので」

事情を知っている運転手さんからすれば、相当のんきな発言だったはずです。

そう考えたら、思わず笑いがこぼれてしまいました。向かいに座っていた女性に不思議そうな顔をされ、慌てて口元を押さえました。

その後、帰りの新幹線には余裕を持って乗ることができました。

あの日以来、知らない土地で電車に乗るときは、まず時刻を気にするようになりました。

そして旅先では、もう気軽に「次がすぐ来るから大丈夫」とは言わないようにしています。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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