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【60代映画】二階堂ふみ×12歳の新星・小八重葵美W主演。戦後を生きる少女の過酷な運命と、作中に登場する「食」の記憶『わたしの知らない子どもたち』

  • 2026.10.16

西川美和監督が原案・脚本・監督を務めたオリジナル映画『わたしの知らない子どもたち』が10月16日(金)より全国公開。トロント国際映画祭のコンペティション部門でオープニング上映された、世界が注目する作品です。 戦後の東京を舞台に、家族を失い戦災孤児になった少女と、彼女を探す元教師の“生きざま”を描いたヒューマンドラマ。昨年デビューしたばかりの小八重葵美(こやえ あみ)が少女役に大抜擢され、二階堂ふみとW主演を果たしました。共演は、坂東龍汰、櫻井海音、北村有起哉、吉田羊、竹野内豊、岡田准一、田中裕子、役所広司ら。子どもたちのまっすぐな瞳と、周囲の大人たちの重厚な演技が胸に迫ります。見どころを紹介するとともに、映画ごはん研究家の視点から、作中に登場する『食』にも注目しました。

【ストーリー】戦後の焼け跡で孤児となった少女―性別を偽り生き抜く過酷な運命

1945年。音楽家の父(竹野内豊)のもとで育ち、音楽を愛し、ごく普通の暮らしを送っていた12歳の少女・茅野琴子(小八重葵美)は、疎開先で終戦を迎える。東京に戻るとそこは焼け野原で、家も家族も失った琴子。自らの身を守るため少女であることを隠し、少年として生きることを決意する。やがて同じような境遇の少年たちと行動を共にし、闇市を束ねる菊沢組の親分・菊沢徹(岡田准一)から仕事をもらうようになる。

一方、琴子の担任教師だった曽根文美子(二階堂ふみ)もまた、敗戦によって婚約者を失い、教師という立場も、生きる意味も失っていた。ある日、琴子の父の友人から「琴子を探している」という知らせを受け、焼け跡の東京を歩いてかつての教え子を探し始める。だが、その頃琴子は孤島にある戦災孤児の矯正施設に送られていた。

【見どころ1】戦争の悲惨さと、懸命につながれた「命のバトン」の重み

戦後の日本で家族を失い、社会からもこぼれ落ちてしまった子どもたちを真正面から描いた意欲作。頼れる親や親戚もなく、生きていくのに必死な戦災孤児をテーマにすることで、戦争そのものを描くより一層、戦争の悲惨さが伝わってきます。 女性、子ども、心身が傷ついた戦地経験者、在日朝鮮人……残された多くの人がどれだけ大変な思いをして生き延びたか(あるいは生き延びることができなかったか)を改めて知り、懸命につながれた「命」のバトンあってこそ、現代に生きる自分たちがいる。観終わると、そんな感謝の気持ちでいっぱいになるような作品です。

【見どころ2】昨年デビュー・12歳の新星、小八重葵美の圧倒的な目力に息をのむ

12歳の少女・琴子を演じたのは、撮影当時まさに小学6年生だった小八重葵美さん。2025年公開の映画『#真相をお話しします』でデビューしたばかりの新星が、500人超のオーディションを勝ち抜き主演をつかみました。 戦争によって家族も家も失い、荷物を奪われ、食べるものもなく、見よう見まねで靴磨きを始める琴子。戦後の混沌の中では自分が「女の子」であることが危険だと察知し、自ら髪を切って少年として生きることを決めます。そんな難役を演じながら、目に宿る強い光や透明感は失われることなく、スクリーン越しにこちらが見透かされているような気持ちになります。

【見どころ3】二階堂ふみ、田中裕子、役所広司ら日本映画界を背負う名優たちの重厚な競演

ダブル主演として、琴子の疎開先にも同行していた担任教師を演じたのは、二階堂ふみさん。戦時中は教師として「お国のために」と教えてきた立場なのに、戦争で愛する人を亡くし、教師の職を失い、生まれたばかりの子どもを抱えて生きていくために重い決断をする、矛盾と苦悩を抱えています。複雑な役柄を、奥深い演技で表現されていました。

ある場面で琴子が出会うことになる海苔漁師の夫妻を演じているのが、役所広司さんと田中裕子さん。この2人もまた、戦争による悲しみを抱えているのが垣間見え、わずかな登場シーンでそれを表現しているのがさすが。口調はぶっきらぼうですが、「子どもはよく食わせて、よく寝かせないとバチが当たるんだよ」と言いながら、大きな愛情で琴子を包んでくれる場面は、じんわりと胸が熱くなります。

【映画とごはん】過酷な時代だからこそ胸に刺さる、生きるための「残飯シチュー」

劇中には戦後の食事情がわかるシーンが何度も出てきます。闇市でたくましく商売を始めた人たちが、ふかしいも、焼き鳥、蒸しパン、肉まん、ラーメン、かつ丼などを売っていて、お金があればラムネやアイスキャンデーも買えるし、さらにはうな重や肝吸いだってあるところにはあるわけです。 でもいちばん印象的だったのは、琴子が闇市で食べるシチュー。看板には「栄養シチウ」と書いてありますが、これは別名「残飯シチュー」と揶揄されていて、進駐軍(GHQ)の残飯を集めて鍋で煮込んだ安価な食べ物だったようです。貴重なたんぱく源ではあったそうですが、何が入っているかわからない闇鍋のようで口にするのが怖いような……。とはいえ、生き延びるためにはそんなことは言っていられませんよね。このシチューを一緒に食べるのが、琴子と仕事や寝る場所をともにする少年仲間。年齢や育ってきた背景もばらばらの少年たちのリーダー格・将吉(羽山由一郎)は、「吉田茂男」と名乗るひとりぼっちの琴子を仲間に引き入れてくれました。彼の度胸とやさしさに、琴子は何度も救われます。 厳しい時代を懸命に生き抜き、現代の私たちへ命を繋いでくれた人々の力強い眼差しを感じる作品。物語の後半では、田中裕子さん演じる漁師の妻が握ってくれる、未来ある子どもたちへの思いがたっぷり詰まった大きなおにぎりに心震えること間違いなし。ぜひ細部までご注目ください。

作品情報

『わたしの知らない子どもたち』
2026年10月16日(金)全国公開
 
原案・脚本・監督:西川美和
出演:小八重葵美 二階堂ふみ
坂東龍汰 櫻井海音 北村有起哉 吉田羊 竹野内豊
岡田准一/田中裕子 役所広司
配給:K2 Pictures
コピーライト:©2026 K2 Pictures・AOI Pro.
 

映画『わたしの知らない子どもたち』本予告映像はこちらから

この記事を書いた人 富田夏子

雑誌ライター歴21年。得意分野はエンタメ、フード、ライフスタイル。映画ライター/映画ごはん研究家として、「映画とごはんをつなぐメディア」をSNSで展開し、映画と食に関連する情報や体験をシェアしている。日本映画ペンクラブ会員。 雑誌やWEBへの映画レビュー連載歴は14年で、俳優や映画監督のインタビューも手がける。料理取材の試食は残さず食べる食いしん坊。

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