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横断歩道の旗振りおじさんを「暇な人」と思っていた私→娘の帰り道で知った、立ち続けるわけ

  • 2026.10.13
ハウコレ

娘が初めて1人で帰ってくる日、私はコンビニの前で待っていました。お礼を伝えた私に、おじさんは短く答えます。その言葉には、聞き覚えがありました。

スーパーへ向かう途中の交差点には、いつも黄色い旗を持ったおじさんが立っていました。雨の日も、子どもが1人も通らない時間も、同じ電柱の横にいます。そこに立つ理由を、深く考えたことはありませんでした。

雨の日も同じ場所にいる人

娘が小学校に上がる前から、その姿は見かけていました。腕章もなく、誰かに頼まれた様子もありません。子どもがいない間は折りたたみ椅子に座り、宅配の車の運転手と笑いながら話していることもありました。

平日の昼間にずっとここにいるなんて、暇な人なんだろう。そう決めつけていました。

春休みに、娘と通学路を歩く練習をした日のことです。信号を待つ間、娘がおじさんを見上げて「あのおじさん、だれ?」と聞きました。

「暇なのかな」

おじさんはすぐ横にいましたが、何も言わず、青になると旗を横に出しただけ。聞こえていたかどうかも、その時は気にしていませんでした。

初めて1人で歩く帰り道

入学して2週間がたち、娘が1人で帰ってくる初めての日が来ました。「もう1人で帰れるもん」と言い張る娘には内緒で、交差点の向かいにあるコンビニの前で待っていました。

横断歩道の向こうに、黄色いカバーをつけたランドセルが見えます。信号が青に変わった瞬間、娘は電柱の陰から走り出しました。そこへ、軽トラックが曲がってきたのです。

「止まって!」

おじさんが娘の前に出て、旗を突き出しました。娘は歩道の端で止まり、軽トラックもその手前で止まります。運転手が片手を上げて曲がっていくまで、エコバッグが足元に落ちていたことに気づきませんでした。

おじさんは娘の目の高さまでしゃがみ、電柱を指さして何か話していました。車の音で、こちらまでは聞こえません。次の青で、私は横断歩道を走って渡りました。

「暇ですから」と笑ったおじさん

「ありがとうございました」と頭を下げると、おじさんは立ち上がり、隣の電柱に手を置きました。

「運転席からだと、この電柱の陰は見えないんですよ」

娘と並んで見上げた電柱は、娘の背丈なら、すっぽり陰に入ってしまう太さでした。ハンドルを握る側から、ここにいる子どもは見えない。毎日通っていた道なのに、一度も考えたことがありませんでした。

「毎日、ここに立ってらっしゃるんですか」

「暇ですから」

おじさんは笑ってそう答え、旗の柄を持ち直しました。春休みに娘へ返した私の言葉と、同じ響きに聞こえたのです。

そして...

帰り道、娘は「電柱のとこで1回止まって、車の人の顔を見るんだって」と教えてくれました。家に着くと、玄関でその止まり方を2回もやって見せてくれます。

それからは交差点を通るたび、おじさんに「こんにちは」と頭を下げるようになりました。おじさんも旗を少し上げて応えてくれます。

ただ、あの「暇ですから」が私の言葉を覚えていたからなのかどうかは、まだ聞けていません。

(30代女性・パート)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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