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「その木、切らないでほしいの」庭木の剪定を止める隣人。その後、僕が4万円の請求書を見せた理由

  • 2026.10.12

業者代4万円の請求書

庭の隅に、背の高い木が一本あります。

夏になると枝が大きく伸び、隣との境にある塀を越えるほどでした。

去年、さすがに伸びすぎたと思い、植木屋さんに剪定をお願いしました。後日届いた請求書を見て、僕は思わず金額を二度見しました。

「4万円か……。木一本でも、けっこうかかるんだな」

「毎年お願いするとなると、ちょっと大変だね」

妻とそんな話をして、今年は自分で切ることにしました。春に電動の剪定ばさみを買い、初夏の土曜日、庭に脚立を立てました。

低い枝を何本か切ったところで、塀の向こうから声がしました。隣に住む70代くらいのおばあさんでした。いつも庭で草花の手入れをしている人です。

「その木、切っちゃうの? うちの庭、ちょうど影になって涼しいのよ。できれば切らないでほしいんだけど」

「でも、かなり伸びてきているので、少しだけ切ろうと思っていて……」

「そうなの。でも夏は本当に助かってるのよ」

穏やかに言われると、それ以上は言いづらくなりました。

翌週、続きを切ろうとしたときにも、おばあさんから同じように声をかけられました。

僕はいったん家に戻り、剪定ばさみを置きました。

「また、切らないでほしいって言われたよ」

妻は少し困った顔をしました。

「でも、うちの木なんだよね……」

それからしばらくは、おばあさんが買い物に出たあとなどに、少しずつ枝を落としました。自分の庭の木なのに周りを気にしながら作業するのは、なんとも妙な気分でした。

塀越しに見せた一枚

梅雨の晴れ間の午後、庭で剪定をしていると、門の開く音がしました。帰ってきたおばあさんが塀の向こうから顔を出します。

「あら、また切ってるの。できれば、そのままにしてほしいのよ」

僕は剪定ばさみを脚立に掛けました。

「ちょっと待ってください」

家に入り、引き出しから去年の請求書を持ってきました。

「去年、業者さんにお願いしたときの請求書なんです。伸びすぎると自分では切れなくなって、またお願いしないといけなくて」

塀越しに紙を見せると、おばあさんは老眼鏡を指で押し上げ、金額をのぞき込みました。

「4万円かかってるんです。もし切らずに残してほしいということなら、次に業者さんへお願いするとき、費用を少し一緒に負担してもらうことはできますか?」

できるだけ穏やかに尋ねました。

おばあさんは金額を見たまま、しばらく黙っていました。

「……それは困るねえ」

そして請求書を僕に返しました。

「分かったよ。切っていいよ。あんたの家の木だものね」

「ありがとうございます」

その日の夕方、僕は予定していた枝を最後まで切り終えました。

数日後の朝、雨戸を開けると、隣の庭には日よけのすだれが立っていました。その陰から、おばあさんがこちらに手を振ります。

「これなら、自分でどうにかなるからね」

「いい日陰になってますね」

そう返すと、おばあさんは笑ってうなずき、すだれの位置を少し直しました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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