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「すみません、アイスクリームを1つください」初めて専門店に入った母。15分迷い、最後に選んだ味に家族が吹き出した

  • 2026.10.13

初めてのアイス専門店で、母が口にした注文

十年以上前の、暑い夏の昼過ぎのことです。家族4人で買い物をした帰り、兄の提案で、通りに面したアイスクリームの専門店に寄ることになりました。

私と兄は何度か来たことがありましたが、母にとっては初めてのお店です。

平日のためか、ほかにお客さんはいませんでした。

店の奥には、色とりどりのアイスが並ぶ大きなガラスのショーケースがあります。

自動ドアが開くと、母はショーケースを見ずに、その向こう側にいる若い女性の店員さんに近づきました。

財布を出しながら、はっきりした声で注文します。

「すみません、アイスクリームを1つください」

店員さんは笑顔で母を見ました。後ろにいた父と私は顔を見合わせ、母のすぐ後ろにいた兄が、そっと声をかけました。

「お母さん、ここは味を選ぶお店なんだよ」

「えっ、味?」

母は驚いたようにショーケースをのぞき込みました。

いちごに抹茶、チョコレート。聞いたことのない名前も含めて、30種類ほどのアイスが並んでいます。

「うわあ、こんなにあるの?」

「ゆっくり選んでいただいて大丈夫ですよ」

店員さんにそう言われると、母はいったん財布をしまい、真剣な顔でアイスを見始めました。

15分も迷った母が、最後に選んだ味

母はショーケースの端から順番に、味の名前を小さな声で読んでいきます。

気になるものを見つけると、少しかがんで確かめたり、店員さんに質問したりしていました。

「これは、何が入っているんですか?」

「木の実を練り込んだアイスです」

「へえ、そんな味もあるのね」

最後まで見終わったかと思えば、また最初に戻ります。

父も兄も私も、自分の食べたい味はすぐに決まっていました。でも、母はなかなか決められません。

あまりに真剣なので、兄は壁のほうを向き、父は腕を組んで天井を見上げていました。私もつられて笑いそうになり、口を結んで待ちました。

そうして店に入ってから15分がたったころ。母がようやく顔を上げました。

「バニラで」

その一言で、父と兄と私は思わず吹き出しました。あれほどいろいろな味を見比べていたのに、選んだのは一番なじみのあるバニラだったのです。

店員さんも口元を押さえて笑っています。母は一瞬きょとんとしていましたが、私たちの顔を見ると、笑いながら言いました。

「だって、やっぱりアイスクリームはバニラがいいのよ」

店の前のベンチで、母は誰よりもおいしそうにバニラを食べていました。その顔を見ていると、あんなに迷ったのも、初めてのお店が楽しかったからなのかなと思いました。

十年以上たった今でも、家族でアイスを買うときには、誰かが母に聞きます。

「お母さんは、バニラでいいよね」

すると、あの日のことを思い出して、みんなで笑ってしまうのです。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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