1. トップ
  2. エピソード
  3. 彼女を「お前」と呼んでいた俺→ある日からメッセージが「あなた」で始まるように。1週間後に届いたメッセージとは?

彼女を「お前」と呼んでいた俺→ある日からメッセージが「あなた」で始まるように。1週間後に届いたメッセージとは?

  • 2026.10.12
ハウコレ

彼女から届いた返信には、俺の言い分がそのまま返ってきました。読み終えたとき、頭に浮かんだのは、子どもの頃から見てきた実家の食卓でした。

吊り革につかまりながら、片手で彼女へのメッセージを打っていました。書き出しは、いつものように「お前」です。付き合って4か月、その呼び方が彼女にどう届いていたのか、俺は考えたこともありませんでした。

父の口癖だった呼び方

俺の父は、母のことを「お前」としか呼ばない人でした。「お前、お茶」「お前も座れよ」。ぶっきらぼうな言い方なのに母は笑って返していて、子どもの頃の俺には、それが夫婦の仲のよさに見えていました。

付き合い始めの頃は、彼女を名前で呼んでいました。ただ、打つたびに妙に照れくさくて、気づけば実家で聞き慣れた「お前」に頼るようになっていたのです。

だから、お前と呼ばれるのが苦手だと彼女から届いたとき、すぐには意味が飲み込めませんでした。しばらく考えて、「お前って呼ぶのは愛情」「ほかのやつには言わないし」と送りました。

ほかの人には使わない、特別な呼び方のつもりでした。「そっか」と返ってきて、分かってもらえたのだと思い込んでいました。

届き始めた「あなた」

その次のメッセージから、彼女の文面が変わりました。何時に着くのかを聞くメッセージが、「あなた」から始まっていたのです。

1通目には「あなたって笑」と返しました。けれど彼女はそれに触れず、「あなた」を使い続けました。名前でもあだ名でもない呼び方は、丁寧なのに、知らない人から話しかけられているようで落ち着きません。

気づけば俺のほうが「お前」と打ちにくくなって、主語を抜いた「何時?」「了解」ばかり送っていました。1週間ほどたった頃、とうとう、いつまで続けるのかと送りました。

伏せたスマホと実家の食卓

返ってきたのは、このメッセージです。

「あなたがお前って呼ぶのと同じ。私なりの愛情だよ」

読んですぐ、スマホを伏せました。彼女の書いた「愛情」は、俺が送ったのとまったく同じ言葉です。それなのに、受け取る側に回ると、こんなにも遠く感じるものなのか。

思い出したのは、実家の食卓でした。父にそう呼ばれていた母がどう感じていたのかは、分かりません。ただ、母が笑っていたからといって、彼女まで同じように受け取ると思い込んでいたのは、俺の勝手でした。

伏せていたスマホを起こして、ようやく送れたのは短い謝罪でした。

「ごめん。もう使わない」

そして...

そのあと、彼女の名前を打ちました。後ろに「今度どこ行きたい?」と続けるだけなのに、送信の手前で消して、また打ち直す。付き合い始めの頃と同じ照れくささが、何度も邪魔をしました。

やっと送ったメッセージに、彼女からは俺の名前で始まる返事が届きました。

今でも、書き出しでつい「お」と打ちかけることがあります。そのたびに消して、彼女の名前を打ち直しています。

(20代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ