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「友達の前では、それ出さないでね」と念を押された時刻表→強風で電車が止まり、俺はリュックを下ろした

  • 2026.10.10
ハウコレ

バスの中で彼女の友人に褒められ、俺はとっさに短い返事で済ませました。けれどあの行き方は、ホームで偶然見つけたものではなかったのです。

リュックの奥に手を入れると、指先に時刻表の硬い表紙が触れました。取り出せば、彼女との約束を破ることになります。すぐ隣では、彼女がスマホの時計と電光掲示板を見比べていました。

笑われた日のページ

子どもの頃から、紙の時刻表を眺めるのが好きでした。数字の列をたどれば、知らない町まで自分の力で行ける気がするのです。

ソファで乗り換えに印をつけていた時、彼女に笑われました。

「その趣味、ダサいよ」

顔を上げて笑い返し、ページに目を戻したものの、赤ペンの印をなぞるばかりで先へは進めませんでした。彼女が俺の趣味を友人に隠そうとしていることは、なんとなく察していました。

前日に書き出した3通りの行き方

彼女の親友の式は、本数の少ない地方の路線の先でした。予報には強風の文字が並んでいます。「あの路線、乗ってみたかったんだ」と言ってついていくことにしましたが、頭にあったのは止まった時の行き方でした。

前日、彼女が式に着ていく服を選んでいる間に、止まった場合の行き方を3通りメモに書き出し、時刻表の最後のページに挟みました。

出発前、彼女に念を押されました。

「友達の前では、それ出さないでね」

「うん、分かった」

メモごと、時刻表をリュックのいちばん下に入れました。

約束より先に選んだこと

運転見合わせのアナウンスが流れた時、ホームには彼女の大学時代の友人2人もいました。タクシー乗り場の列を見て、俺はリュックを下ろしました。

約束を忘れたわけではありません。けれど、受付を任された彼女が間に合わないほうが、ずっと困ることだと思いました。

挟んでおいたメモの2番目を確かめてから、顔を上げました。

「2つ前の駅まで戻って、バスで回れば間に合う」

「本当に大丈夫なの?」

返ってきた声は硬いままでしたが、彼女は友人2人と一緒に後ろをついてきてくれました。

バスの中で、友人の1人に言われました。

「彼氏さん、詳しいんだね」

「たまたま調べてただけだよ」

メモのことは言わずに、時刻表を閉じました。趣味の話が広がれば、また彼女が困る気がしたのです。

そして...

会場近くの喫茶店で待つ間、窓の外の街路樹の揺れがおさまっていくのを眺めていました。

帰りの電車で、彼女のほうから声をかけてきました。

「今度、その時刻表の見方教えて」

少し驚いてから、表紙をめくってすぐのページを彼女に見せました。

それからというものの、彼女が俺の趣味を少し認めてくれているように感じています。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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